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「兎を追い越す亀となれ」。福岡の新勢力・飯塚が5-0で準々決勝突破し、次は東福岡に挑戦

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後半アディショナルタイム、飯塚高は交代出場のMF堀田晴登が5点目となるヘディングシュート

[11.1 選手権福岡県予選準々決勝 筑紫高 0-5 飯塚高 本城陸]

「兎を追い越す亀になる」。第99回全国高校サッカー選手権福岡県予選は1日、準々決勝2日目を行った。県新人戦準優勝の飯塚高がFW村越琉威(2年)の2ゴールなど5-0で筑紫高に快勝。飯塚は11月7日の準決勝で東福岡高と戦う。

 飯塚は2015年の中辻喜敬監督就任から新たな強化をスタートして6年目。昨年は初のJリーガーとなるFW村越凱光(現松本)を輩出し、今年の新人戦で九州大会初出場、同ベスト8進出を果たした。この世代は、3年前に飯塚初の選手権予選ベスト4を見て入学してきた世代。10番MF 宮川開成(3年)は「3年前の飯塚見て入ろうと。ずっと東福岡高校が強かったので、東福岡高校を倒そうという思いで飯塚高校に入学しました」と振り返る。

 中辻監督も「この学年で初めて(中学年代の)チームの中心選手が来てくれた」と認める世代は、追い求めている「観衆を魅了するサッカー」をこれまでの飯塚の歴史の中で最も表現できているという。その期待の世代が3年前の選手権予選4強に並んだ。

 この日、飯塚は怪我明けのMF野見山楽斗主将(3年)が欠場。だが、立ち上がりから「認知する力はこのチームで一番」(中辻監督)という宮川らがボールを失わずに繋ぎ、オープン攻撃も交えて筑紫を押し込んだ。そして11分にはMF赤間祐稀(3年)の右CKをニアの村越が豪快ヘッドで先制点。さらに17分にも、村越の右クロスのこぼれ球を拾ったMF赤嶺泰地(3年)が左足シュートをゴールに叩き込んだ。

 進学校の筑紫は自陣PAで奪ったあとも蹴り出さず、徹底的にドリブルとショートパスでボールを繋ぐスタイル。CB原田拓味(3年)やCB岡田宗磨(3年)に支えられ、迷うことなく自分たちのサッカーにチャレンジした筑紫は、連続のダイレクトプレーで飯塚のプレッシャーを剥がすシーンもあった。

 だが、中辻監督が「前進は許していない。ビッグスペースを使わせていない」と頷いたように、守備の連動性高い飯塚は1人が剥がされたとしても2人目、3人目の選手が確実にボールを奪い取るなど、ほとんどハーフウェーライン突破を許さない。ボールを奪うと、観衆を唸らせるようなパスワークも披露。巧さでも、守備の部分でも違いを示していた。

 33分には、右サイドから仕掛けた村越のクロスを赤間が右足ダイレクトでゴールネットに突き刺した。筑紫は、自陣からボールを繋ぐ飯塚から幾度か高い位置でインターセプト。そしてMF高木俊太朗(2年)が右足ミドルにチャレンジし、10番MF松元達也(3年)がドリブルで切れ込んだが、飯塚は注目CB川前陽斗(3年)が1対1でストップするなど相手に決定打を打たせない。

 そして、飯塚は前半ラストプレーで追加点。再び赤間の右CKをニアの村越が頭で決めて4-0で前半を折り返した。大量リードを得た飯塚は早々に主軸の川前と赤嶺を交代させ、ゲームコントロールしながらの後半。その中で赤間の左クロスから村越がポスト直撃のボレーシュートを放ち、左オープンスペースを駆け上がるSB吉田龍介(2年)を活用してチャンスを作るなど、余裕のある試合運びを見せた。

 筑紫も自陣で相手を見て、打開する巧さを発揮。だが、なかなか相手ゴール前までボールを運べず、ゴールやシュートに繋げることができなかった。飯塚は後半アディショナルタイム、赤間の左CKを交代出場のMF堀田晴登(2年)が頭で決めて5-0。長い芝と相手のドリブルスタイル、そして気温が20度近くまで上がる中でも各選手が守備の役割を徹底し続けた結果、足を攣らせる選手も増えてしまっていたが、筑紫をシュート2本に封じて準決勝進出を決めた。

 飯塚のチームスローガンは「兎を追い越す亀となれ」だ。福岡県中部、現在は人口13万人ほどの中都市・飯塚で観衆を魅了するサッカーにチャレンジ。中学時代に全く実績の無かった選手たちから強化を始め、年々力と選手層を高めて県内外で認められる存在になってきている。

 次の対戦相手は選手権優勝3回の“赤い彗星”こと東福岡。就任当時、日本一に立っていた東福岡を「日本で一番のチーム」としてターゲットにしてきた中辻監督は「東福岡という赤い兎を追い越したい」と語り、宮川は「(自分たちは)かなり良い状態には来ています。東福岡は中学校の時から倒したかったので、頑張って倒したいです」と宣言した。自分たちのフットボールを大一番でやり遂げて、全国区の名門を追い抜く。

(取材・文 吉田太郎)
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