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[MOM3262]龍谷GK又吉春太(3年)_憧れは中学時代に交流を深めた鳥栖GK朴一圭! 最終盤にビッグセーブ!

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決勝進出に貢献した龍谷高GK又吉春太(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.1 選手権佐賀県予選準決勝 龍谷高 1-0 佐賀商高 佐賀サンライズパーク陸上競技場]

 憧れは朴一圭。中学時代に交流を深めた守護神に自分のことを思い出してもらいたい――。そんな想いでピッチに立っていた選手がいる。龍谷高のGK又吉春太(3年)だ。

 準決勝の佐賀商高戦は序盤から劣勢となり、ゴール前で気を抜けない場面が続いた。何度も前線にクロスボールを入れられ、タイミングさえ合えばゴールになっていた場面は一度や二度ではない。しかし、又吉春は苦しい時間帯に動じず、冷静な対応で相手に得点を与えなかった。守備で奮戦を続けると、前半19分に実弟・FW又吉耕太(2年)がこぼれ球を押し込んで先制点を奪う。「ありがたかった」という1つ下の弟の活躍に笑みを浮かべながら、今度は「自分の番だ」と言わんばかりに気を引き締めた。

 後半に入っても相手の攻撃が続く。それでも集中力は途切れず、CB野添永凪(3年)、CB石橋将(2年)とともに味方を鼓舞しながらゴールだけは許さない。そして、時計の針は後半35分を回り、後半アディショナルタイムに差し掛かろうとしていた時だった。ここで最大の見せ場が訪れる。

 相手が残り5分を切ったところでパワープレーを仕掛けてきた。最終ラインは自陣に押し込まれ、絶体絶命のピンチを迎えてしまう。右サイドのMF橋本尚樹(3年)からクロスが入ると、味方に当たったボールが直接ゴールへ。直前でコースが変わる難しい軌道だったが、間一髪で触ってチームの窮地を救った。これには太田恵介監督も称賛。「最後にボールを掻き出してくれたけど、それは(普段から取り組んでいることも含めて)意思があるからできたプレー。だから、又吉がMOM。あのセーブがなければ負けていた」と手放しで褒めちぎった。

 試合後、「ディフェンスラインの4枚と一緒に無失点に抑えれば問題ない。そう割り切ってプレーしていました」と涼しい顔を見せながらも、満面の笑みで仲間と喜びを分かち合った又吉春。そんな又吉春には憧れている選手がいる。先日、横浜F・マリノスからサガン鳥栖に期限付き移籍を果たした朴一圭だ。彼との出会いは中学時代に遡る。Wウイング沖縄FCでプレーしていた又吉春は当時FC琉球の練習場に足繁く通っていた。学校がない日や午後練習の日はほとんど行っていたそうで、兄の熱量に弟の耕太も「付き合いきれなかった(笑)」という。

 何度も通った中で、顔を覚えてもらったのが当時FC琉球で正GKを務めていた朴だった。

「『高校はどこいくの?』とか『頑張れよ』って言ってくれたんです。当時、朴選手はJ3にいたけど、今はJ1でプレーしている。泥臭く下から這い上がってきた感じがすごく好きなんです。プレーだけではなく、練習での振る舞いもすごい。できていない選手にもしっかり声をかけていて、リーダーシップを発揮していた。そこが自分の課題だったけど、当時の朴さんを参考にしながら取り組んで、最上級生になってからは言えるようになってきた」

 朴から直接指導を受けたわけではない。しかし、練習場で見た光景が自身を大きく成長させた。偶然にも朴は10月25日に鳥栖へ加入し、今まで以上に近い距離にいる。「佐賀にいるので会う機会があれば嬉しいし、練習が見学できるようになったら見に行きたい」とは又吉春の言葉。7日の決勝は鳥栖のホームスタジアムである駅前不動産スタジアムで行われる。朴に全国舞台出場の報告をするため--。憧れの人が立つピッチで佐賀東高に勝ち、再会の日を待ち侘びている。

(取材・文 松尾祐希)
●【特設】高校選手権2020

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