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[MOM3289]宇都宮短大附GK落合奏太(3年)_“メモ通り”のPKストップ遂行! 武器は弾丸ロングフィード

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PKを止めた宇都宮短大附GK落合奏太(3年)が咆哮

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.7 高校選手権栃木県予選準決勝 文星芸大附0-0(PK3-5)宇都宮短大附 栃木グ]

「PKになったら俺が止めるという気持ちだった」。延長戦にもつれ込んだ100分間の死闘は0-0のまま決着がつかず、PK戦へと突入。勝利への意志をにじませたGK落合奏太(3年)はPKストップの大仕事を遂行し、宇都宮短大附高を4年ぶりの決勝へと導いた。

 PK戦は宇都宮短大附が先攻。ゴールマウスに入った落合は対峙したキッカーに気迫でプレッシャーをかけていたが、互いにキッカー3人目まで全員が成功。すると、4人目の準備に入るところで味方ベンチから「“メモ通り”な!」という声が飛んだ。

 すね当てに忍ばせていた佐藤嶺GKコーチからの“メモ”。そこに記されていたのは相手キッカーの情報ではなく、「お前は止められる」というメッセージだった。

 3人目までは逆に飛んでいた落合が、ここで奮起する。集中力を高めてキッカーとの駆け引きに勝ち、4人目のコースを完全に読み切ると、タイミング良く横っ跳び。両手を伸ばし、左ポストに当てながら見事に弾き出してみせた。咆哮しながら渾身のガッツポーズ。宇都宮短大附は5人目のDF栃木優太主将(3年)がきっちりと沈めて全員が成功し、待望の瞬間を迎えた。

 しかし、勝利を呼び込んだヒーローは歓喜の輪を作ろうとするチームメイトを次々にかわし、必死に逃げ周った。探していたのはGKコーチの姿。“メモ”には続きがあり、「止めたら一番に俺のところに飛び込んでこい」という言葉を忠実に守り、真っ先にGKコーチの胸へと飛び込んだ。

 この日はPKストップが見せ場となったが、足元の技術にキック精度、弾丸ロングフィードが持ち味。GKエデルソン・モラエス(マンチェスター・シティ)を目標に掲げ、「足元がずば抜けていて、アシストができるくらいのキーパーなので目標にしています」。小学生時代にGKとフィールドを兼任した経験を生かしつつ、足元でつなぐ宇都宮短大附の守護神としてさらに技術を磨いてきた。

「身長がほかのキーパーのように高くないので、武器を探そうと思って足元の練習に力を入れました」。177cmの守護神は左右両足で遜色のない正確なキックを蹴り込むが、利き足は右。「後ろからつなぐチームなので、高校に入ってからは左も蹴れるようにしたかった。練習後、両足とも毎日練習してきました」。飛距離のある弾丸フィードを前線まで届け、ビルドアップの起点としても存在感を放つ。

 磨き上げてきたスーパーな武器に準決勝でのPKストップという自信も携え、一週間後の決勝戦へ。全国切符の前には王者・矢板中央という高い壁が立ちはだかるが、覚悟はできている。「厳しい試合になるし、ずっと全国に出場している矢板中央が勝つと周りからは思われるかもしれないけど、そういう中で佐野日大も倒してきた。今まで3年間やってきたことを出すだけだと思います」と闘志を燃やした。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2020

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