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スーパールーキー2人を加えた神村学園は好チーム・鳳凰に3-1勝利。課題改善し、魅せて連覇へ:鹿児島

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前半35分、神村学園高はMF外原颯が先制ゴール

[11.5 選手権鹿児島県予選準々決勝 神村学園高 3-1 鳳凰高 桷志田サッカー競技場]

 2人のスーパールーキーを擁す注目校・神村学園が連覇へ前進――。第99回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選準々決勝が5日に行われ、4連覇を狙う神村学園高が鳳凰高に3-1で勝利。神村学園は7日の準決勝で鹿児島高と対戦する。

 今年、系列の神村学園中からU-16日本代表の中心選手の一人でもある技巧派レフティーMF大迫塁(1年)と、今年U-16、U-17日本代表に選出されている万能ストライカー・FW福田師王(1年)が加入。また、MF永吉飛翔主将(3年)やGK吉山太陽(3年)ら昨年の全国経験者5人も残す神村学園が、激戦区・鹿児島で「神村時代」を続け、全国で勝ち上がることができるか注目だ。

 この日に関しては、思うようなサッカーを展開することができなかった。鹿児島実高のGKとして選手権などで活躍した元Jリーガー、仁田尾博幸監督率いる鳳凰は中央の守りが堅く、各選手が献身的。加えて、ラストパスや仕掛けの部分で違いを作り出すことのできるMF松元琉磨(3年)を中心としたカウンター攻撃も力があった。

 神村学園は序盤からボールを支配してPA近くまで運ぶと、大迫や永吉、左SB下川床勇斗(3年)が積極的にシュート。だが、有村圭一郎監督が「DFラインと中盤の距離が悪いし……、そこが全て悪い」と指摘したように、中盤とDFラインの距離感が遠かったために攻撃の厚みを作れず、ロストしたボールをすぐに奪い返すことができない。

 鳳凰の松元にロングシュートを打たれたほか、カウンターからクロスまで持ち込まれると、26分には自陣でのミスパスからFW小川航平(2年)に独走を許してしまう。これはカバーしたCB稲田翔真(3年)がシュートブロックしたものの、神村学園の生命線である距離感が定まらなかったことで思うような攻守ができていなかった。

 それでも、神村学園は下川床と右SB吉田尊(3年) がボランチのようなポジション取りをしてサイド攻撃を続けると35分、MF佐藤璃樹(2年)の右クロスから最後はMF外原颯(3年)が右足シュートをゴールに突き刺して先制点を奪う。対する鳳凰も前半17分に投入されたFW宇田健大(2年)の推進力あるドリブルなどを交えて攻め返したが、神村学園は後半7分、MF小林力斗(3年)の左クロスに反応した福田が抜群の高さからヘディングシュートを撃ち込む。

 これは鳳凰GK川原大輝(2年)のビッグセーブに阻止されてしまったが10分、今度は下川床の左クロスから福田が再びヘディングシュート。GKの上から叩きつけるような一撃がゆっくりとゴールラインを越えて2-0となった。

 主将の永吉が「実際この2人(大迫と福田)が入ってきたことによってチーム力が上がりましたし、決定的な仕事をしてくれるので勝つことができますし、2人が輝くためには自分たちがサポートしなければいけない」と語るように、彼らの強みを出すために3年生がサポートする中でスーパールーキーたちが輝く。

 大迫はやや気持ちが空回りしていた感があってシンプルさを欠いた部分もあったが、それでも1タッチのパスやDFを外す技術、判断力で幾度か魅せ、スルーパスやシュートを狙い続けていた。

 また、有村監督絶賛のバネの部分などで違いを見せていた福田は、圧巻ヘッドを決めた後にターンでDFを置き去りにして決定的な左足シュート。大迫は「自分の思いとかを受け止めてくれたりする先輩なので、自分らも過ごしやすいです。プレー中ももっとこうしたら良い、とかいうのを『オーケー、オーケー』と受け止めてくれるのでありがたい」と感謝する。

 1年生の力を素直に認め、勝つための力に。その神村学園は試合終盤、いずれも交代出場のMF若水風飛(2年)とMF篠原駿太(2年)の突破力が相手の脅威となっていた。そして37分、大迫の絡んだ攻撃から若水が右中間を縦に仕掛けてPKを獲得。これを若水が右足で決めて3-0とした。

 だが、好チーム・鳳凰は諦めない。アディショナルタイム、相手のミスからカウンターを発動。ここでも神村学園は守備がハマらず、鳳凰FW宇田がドリブルで中盤を駆け上がる。そのまま左足ミドルをゴール左上に突き刺して執念の1点。涙の宇田を鳳凰イレブンが祝福し、さらにもう1点を狙おうとする。鳳凰の反撃はここまでに終わり、選手たちは泣き崩れたが、思いの強さを感じさせる戦いだった。 

 神村学園の有村監督は1年生たちへさらなる要求をすると同時に、3年生の声や引っ張る姿勢など奮起を求めていた。連動性、距離感を重視する神村学園にとって新型コロナウイルスの影響によって活動が限定されたことは影響がありそうだ。指揮官は「他のチームも同じだと思いますけれど」と前置きした上で、「難しいですよね。(真剣勝負の場が少なかったため)こんなことをしたら負けに繋がるとか、そういうことを学んできてない」と指摘する。

 1日の中日を挟んで7日は準決勝。課題を確認、改善しながら連覇に挑戦する神村学園は、この日よりも内容を向上させることを目指す。永吉は「鳳凰さんだったりが涙するところを見てきて、懸ける思いはどこもあると思う。戦ってきた相手や応援してくれている方の思いをしっかりと受け止めて、残り2試合も攻撃的なサッカーで魅せて、感動させられるような試合運びをしていきたいです」と誓った。自分たちの思いも表現し、もっともっとその力を引き出すこと。そして、神村らしく魅せて勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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