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受験でキャプテン欠場の危機乗り越え、仙台育英が聖和学園下し4連覇達成!:宮城

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決勝点を入れ控え選手やスタッフと喜ぶ仙台育英FW佐藤遼(2年)

[11.7 選手権宮城県予選決勝 仙台育英高 2-1 聖和学園高 ユアスタ]

 第99回全国高校サッカー選手権宮城県予選決勝が7日、ユアテックスタジアム仙台で行われ、今大会4連覇を目指す仙台育英高と、4年ぶりの全国大会出場を目指す聖和学園高が対戦。3年連続同一カードとなったが、仙台育英が2-1で勝利し、4年連続全国大会出場を決めた。

 先制したのは聖和学園。前半2分、中盤でボールを奪ったMF狩野遥人(3年)がゴール前まで攻め込み、FW田代健伸(3年)にパス。田代が相手DFをドリブルでかわしながらゴール前に入って行き、右足を振り抜きゴール右隅にシュートを叩き込んだ。

 その後も聖和学園ペースで進むかに見えたが、前半8分に思わぬミスが出る。バックパスを受けた聖和学園GK西川司(3年)が前に蹴ろうとすると、猛然とプレスをかけていた仙台育英FW佐藤遼(2年)がインターセプト。「GKまでプレスに行けと言いました」という城福敬監督の指示を受けていた佐藤は「監督からも聞いていたので、狙っていました」と狙い通りのプレーから無人のゴールにシュートを流し込んだ。その後は仙台育英が昨年の同一カードの時と同様、前からの激しいプレスでペースを握ったが、得点には至らず、前半は1-1と同点で終わった。

 後半に入り、大きな決定機をつくったのは聖和学園。後半10分、狩野からのスルーパスを受けた田代がペナルティエリアに侵入。田代を仙台育英DF大塚俊樹(2年)が倒し、聖和学園がPKを獲得した。PKキッカーは田代。ここで立ちはだかったのが仙台育英GK高橋拓輝(3年)だった。「絶対止めてやろうと思いました。ずっとPK練習をしてきたので自信があり、助走の時から右に蹴ると読んだら当たりました」と、田代のPKを見事にセーブ。高橋が絶体絶命のピンチを救った。

 これで再び仙台育英に流れが傾くと後半17分、この日キャプテンMF豊倉博斗(3年)が大学受験日と重なったため欠場となったことで、キャプテンマークを巻いて出場したMF渡辺弘和(3年)が、途中出場の右サイドハーフMF明石海月(2年)につなぐ。明石が右サイドに開いた佐藤へパスすると、佐藤はクロス性のボールをゴールに送り込む。「クロスとシュート、同時に狙っていました。GKが触れば良いと思い、強いボールを意識しました」と語った通り、クロスかと思われたボールはゴール方向へ曲がり、聖和学園GK西川の手をすり抜け、左ポストを叩き、そのままゴールへ吸い込まれた。佐藤のこの日2得点目で仙台育英は逆転に成功した。聖和学園はその後選手を入れ替え、ドリブルで攻め立てたが、なかなかシュートまでたどり着かず、このまま試合終了。2-1で仙台育英が勝利し、4連覇を達成した。

 仙台育英はキャプテン豊倉が受験で決勝欠場という非常事態を全員で乗り切った。キャプテンマークを託された渡辺は「決勝と豊倉の受験の日が被るという話は前々から聞いていました。豊倉が決めたことなので、残った選手で頑張ろうと思いました。豊倉からは『一番信頼している』と言われていました」と振り返り、「プレッシャーはありましたが、豊倉やメンバー外の選手を全国に連れて行けて良かったです。豊倉からは『ナイス!』とだけLINEが入っていました」と重責を果たせたことで、安堵していた。2ゴールの佐藤は「キャプテンは主力組の選手に1対1で受験に行く思いを話してくれました。自分は『遼を信頼している』と言われました」、GK高橋も「『俺がいなくても大丈夫だ』と言われました」と主力選手に豊倉が託した思いは結実し、持ち味の高い位置からのプレスやサイド攻撃を存分に見せ、4年連続で全国への切符を勝ち取ることに成功した。

 一方の聖和学園は昨年と同じく先制しながらの逆転負け。加見成司監督は「気負いがあり、いつもよりもリズムが遅かったり、急ぎ過ぎたり、ボールロストが多かったです。後半はボールを大事にしたいと思ったのですが、相手の勢いをかいくぐれませんでした」と振り返った。キャプテンのDF高木翔理(3年)も「失点後は相手のリズムで、カウンターでしか攻められませんでした」と悔やんだ。昨年11月の新人大会、今年9月のスーパープリンスリーグ東北では仙台育英に勝利していたが、「プレスの質が変わっていました」と相手の激しいプレスに手こずったことで勝利を引き寄せられなかった。「みんなコロナで大変だった中で、短い期間ではありますがサッカーを頑張りました。もう少し一緒にサッカーしたかったですね」と語る加見監督。ドリブル集団はまたしてもあと一歩で、全国の舞台に届かなかった。

(取材・文 小林健志)
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