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[MOM3283]日本文理大附FW垣内太陽(3年)_フィジカル開花で今大会4戦14発!絶対的エースが“夢実現”まであと1勝

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日本文理大附高FW垣内太陽(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.7 選手権大分県予選準決勝 大分鶴崎高1-2日本文理大附高 大分スポーツ公園サッカー場A]

 才能開花の時を迎えたエースが日本文理大附高を初めての決勝の舞台に導いた。「県南初で全国に出てみたいという夢がある」。地元高校への入学を選んだ3年前、自身をスカウトしてくれた指導陣にそう誓っていたというFW垣内太陽(3年)は夢の実現まであと一歩のところまでやってきた。

 全国6度の出場を誇る大分鶴崎高との準決勝、日本文理大附の攻撃を牽引したのは左ウインガーの垣内だった。左腕にはキャプテンマークを巻き、背中にはエースナンバーの14番。凄まじい跳躍力と、サイドバック経験で培った左足のキック、今季に入って花開いたという得点センスでを活かし、大会初戦から得点を量産し続けてきた文字どおりの大黒柱だ。

 劣勢だった序盤は味方のロングキックを空中戦で受け止め、相手に一方的に主導権を与える展開を阻止。そして前半12分、まず1回目の見せ場が訪れた。

 場面は右からのコーナーキック。「コーナーキックは練習からずっとしていた」という垣内はパターンの一つである大外ファーサイドのポジションを取ると、一気に飛び込んで高いジャンプを見せた。強烈なインパクトで叩きつけられたボールはDF丸山剛(3年)の足元を経由し、DF大友海翔(3年)のもとへ。大友がこれを落ち着いて押し込み、貴重な先制点が入った。

「思いどおりに行ってよかったし、早いうちに取れて良かった。いい流れになった」。

 垣内がそう振り返ったように、流れに乗った日本文理大附は2分後に追加点を奪った。決めたのは垣内。焦ってボールをつないだ相手の縦パスをFW木村玲音(2年)がインターセプトすると、ここから出てきたパスを冷静に決めた。これで今大会14点目。この試合で2度目の大きな見せ場は、得点機で積み重ねてきた成功体験を感じさせる落ち着いたゴールだった。

 そんな絶対的エースだが、これまでは県内で高い注目を集めてきた選手ではなかったという。左サイドバックでプレーしていた中学時代は主力とまでは言えない立ち位置で、160cm弱の身長で当たり負けする日々。「全然目立たない感じで、サブで頑張っていました」と照れ笑いを浮かべながら振り返る。

 しかし、高校3年間で身長が20cmも伸び、先輩から勧められて始めた筋トレでフィジカルが開花。中学時代に駅伝の臨時選手にスカウトされたという持久力、スポーツに励んでいた両親から受け継いだ才能も活きて、いまでは身体能力で戦える選手となった。中学時代を過ごした地元の強豪クラブ、佐伯S-play MINAMIの指導者からは高校入学時に「諦めずに高校でやれば大丈夫だから準備しておけ」と伝えられていたといい、垣内はそうした支えにも感謝した。

 不遇の時もありながらここまで努力を続けてきた垣内にとって、決勝戦は二つの思いが重なる舞台となる。

 一つ目は周囲への恩返しだ。他校も視野に入っていた垣内を同校にスカウトしてきたという保明栄治監督は「やんちゃな子」と愛らしく表現したが、本人によると「サッカーは真剣にしていたけど、地域の方からは問題児と思われていた」と苦笑い。寛大に育ててくれた地元への思いは「県南初の全国に出る」というモチベーションとなり、もっとも身近な両親に向けても「中学でも高校でもずっと親に迷惑をかけてきたので、この大会で恩返ししたい」と意気込んでいる。

 そしてもう一つは、大会を通じて自身のキャリアを切り開いていくことだ。卒業後は附属校の日本文理大に進学する予定となっており、「プロを目指したいし、大学で頑張って誘われるようになりたい」。そうした夢を実現するためには少しでも多く全国レベルの相手と戦えるチャンスを掴み、その舞台でどれだけ通用するかを見極めることが大切になる。

 だからこそ、まずは1週間後に控える県決勝戦に全てをぶつける構えだ。

 会場は昭和電工ドーム大分。2015年3月、ハリルジャパン初陣の日本代表対チュニジア戦でフラッグベアラーの一員としてピッチに立っていた垣内が、今度は自らあの場所でプレーする番となる。「ここが目標だったのでまずは楽しみたい」。自然体のエースは「サイドからの攻撃でガンガン行ってクロスを上げて、得点をたくさん決めて勝利したい」といつもどおりの活躍を誓った。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2020

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