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宮崎日大が7度目の決勝で悲願の初V!「日本一を目指さないと彼らには勝てない」21年間続いた“二強体制”日章&鵬翔を連破

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初優勝を果たした宮崎日大高

[11.8 選手権宮崎県予選決勝 鵬翔高2-3宮崎日大高 ひなた宮崎県総合運動公園サッカー場]

 第99回全国高校サッカー選手権宮崎県予選は8日、決勝戦を行い、宮崎日大高鵬翔高を3-2で破った。宮崎日大は3年連続7回目の決勝進出で悲願の初優勝。過去2年の悔しさを間近で見ていた選手たちが勝負強さを見せ、南光太監督は「これまでの積み重ねが出た。先輩方にも感謝したい」と喜びを語った。

 決勝は見応えあふれるシーソーゲームとなった。序盤に先手を取ったのは、4連覇中の日章学園高を準決勝で破った宮崎日大。前半5分、MF日野昴(3年)の左コーナーキックが低い弾道でニアサイドに送り込まれると、MF下青木翼(3年)がフリック気味のヘディングシュート。うまく当ててボールの軌道を変え、そのままゴールネットを揺らした。

 対する鵬翔もここから反撃スタート。前半14分、右サイドを突破したDF井上翼(3年)のクロスに合わせたFW藤澤正樹(3年)のオーバーヘッドは空振りに終わったが、17分にはFW味元陽明(3年)の華麗なドリブル突破から惜しいクロスが配球された。宮崎日大はこれをなんとかDF岩本廉太朗(3年)がカバーするも、破壊力のある相手攻撃陣に後手の対応となっていた。

 すると鵬翔は前半34分、裏へのフィードに抜け出したMF宮田理央(2年)が完璧な胸トラップから抜け出し、ペナルティエリア内右に侵入すると、折り返しのボールをゴール前に供給。これにワンタッチで合わせた味元が冷静にゴールマウスを打ち抜いた。前半はそのまま動かず、1-1でハーフタイムを迎えた。

 後半開始時には宮崎日大が早くも動いた。先制ゴールを決めた下青木に代わって背番号10のFW櫻田優樹(3年)を入れ、立ち上がりから押せ押せムードに。2分にはさっそくFW永田柚羽(3年)のスルーパスに反応した櫻田が、巧みな切り返しから惜しいシュートを放った。さらに9分、永田に代えてMF岩下天虎(3年)も投入した。

 それでも次にスコアを動かしたのも鵬翔だった。後半15分、右サイドを駆け上がったMF吉川未龍(2年)がサイドチェンジのような長いクロスボールをゴール前に送り込むと、反対サイドから飛び込んできたのはFW佐藤颯之介(2年)。最初のシュートはGK原蓮也(3年)に阻まれたが、跳ね返りのボールを頭で押し込み、勝ち越しに成功した。

 ところが宮崎日大も後半16分、すぐに反撃に成功した。高い精度の左足キックを持つDF石川大翔(1年)が右からのコーナーキックをファーサイドに送り込むと、178cmのDF中川司(3年)が相手より頭一つ高いハイジャンプからヘディングシュート。ふわりと浮いたボールがゴール右ギリギリに吸い込まれ、失点直後に価値ある同点ゴールとなった。

 ここからは宮崎日大が優勢。前線で身体を張るFW鬼束卓弥(3年)の奮闘もあって深さを取り続け、MF野田隼輔(3年)のカットインシュートや櫻田の裏抜けでチャンスを続けざまにつくると、34分には日野と櫻田が絡んだ流れから岩下が右足でシュート。これはGK松山隆成(3年)の冷静なセーブに阻まれたが、3分後に試合を動かした。

 後半37分、宮崎日大は相手のクリアボールを拾った日野がボールの勢いを抑えたパスで前につけ、岩下がトリッキーな右足アウトサイドパスで日野に返す。ここで前を向いた日野は、相手の最終ラインの裏を突く浮き球のスルーパスを選択。これに反応した途中出場のMF和田俊星(2年)が右足を思い切って振り抜き、豪快なボレーシュートでネットに突き刺した。

 終盤に痛い失点を喫した鵬翔はパワープレーを開始。佐藤のロングスローを使いながら相手ゴール前にシンプルな浮き球を配給し続けた。ところが終了間際、味元の強烈なシュートが枠を外れると、左サイドを攻めた攻撃でも佐藤のクロスが味方に合わず。そのでタイムアップのホイッスルが吹かれ、4年ぶりの全国出場を目指した鵬翔イレブンはピッチに崩れ落ちた。

 一方、勝利した宮崎日大はスタンドで応援していたメンバーがピッチ内に雪崩れ込み、全国初出場の喜びを爆発させた。過去21年間続いてきた鵬翔と日章学園の二強体制を破る快挙。表彰式の終了後、選手たちから「南カモンカモンカモン!」の大合唱を受けて胴上げされた南監督は「私にとっては11回目のチャレンジ。ようやく宮崎県を突破することができた」と感慨を語った。

 宮崎日大にとって県大会決勝は3年連続7回目。6度の敗北を経てようやく掴み取った頂点だ。「決勝は独特の雰囲気がある。カメラも回るので。常にそこまで足を運んでいくことで最後に勝つためには大事。いまの3年生は1年生の時から経験していて、櫻田らメンバー入りをしてきた選手もいる。先輩方に感謝したい」(南監督)。指揮官は過去の積み上げを誇った。

 また県王者に輝いた要因の一つとして、南監督は「今季は指導陣でそれぞれ役割を分業して、お互いが責任を持ってやれるようになったことがすごく良かった」とも指摘する。今季は自身が戦術指導、朝倉大志コーチが細かい選手指導、田野矩大GKコーチがセットプレーを担当。実際、この日の試合でも3バックと4バックが自在に切り替わる可変システムが機能し、セットプレーから2ゴールを奪った上、和田が朝倉コーチの指示通りのゴールを決めるなど、専門的に突き詰めてきたものがピッチの上に表れていた。

 さらに今季から着任した早稲田一男総監督の存在も快挙には欠かせなかった。日章学園高を長年にわたって指揮してきた名将が新天地で落とし込んだのは「勝者のメンタリティー」。南監督は「今まで自分たちが積み上げてきたものにプラスして、僕らに足りなかったこと、勝つことのこだわりをもらった。勝利への厳しさをすごく持っていらっしゃるので、子どもたちもすごく感じてくれている」と手応えを口にした。また選手たちからは、自主練に遅くまで付き合ってくれたことへの感謝も口々に聞かれた。

 そうしたさまざまな取り組みが花開き、ようやく届いた全国の舞台。学校にとっては初出場とはいえども、強豪ひしめく宮崎県を背負って戦うからには上を目指していく構えだ。2012年、県予選決勝で宮崎日大をPK戦で制し、そのまま全国の頂点にまで駆け上がっていった鵬翔の例を思い返した指揮官は力強く「日本一」の野望を口にした。

「やっぱり宮崎でも日本一になれるという高い志が大事。日章学園も日本一になることが目標だし、鵬翔も日本一になることが目標。だから子どもたちにも県のチャンピオンになりたいだけじゃ勝てないよ、日本一になろうと思わないと彼らには勝てないよと植えつけてきた。やるからにはてっぺんです」。過去6回にわたって立ちはだかった壁を破った桜色の戦士たちは、ライバルの誇りも胸に堂々と全国に挑む。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2020

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