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大阪には「金光もいるぞ」。我慢の守りとセットプレーで金光大阪が11年ぶりの決勝進出

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後半4分、DF横窪皇太主将のゴールを喜ぶ金光大阪高イレブン

[11.7 選手権大阪府予選準決勝 大阪桐蔭高 0-1 金光大阪高 ヤンマー]

 激戦区・大阪の強豪校に「金光もいる」ことを、示す――。第99回全国高校サッカー選手権大阪府予選準決勝が7日に行われ、金光大阪高が1-0で大阪桐蔭高に勝利。09年度大会以来、11年ぶりとなる決勝進出を決めた。

 準々決勝でJ内定4選手を擁す興國高を撃破した大阪桐蔭と、大阪学院大高や東海大大阪仰星高と続く激戦ブロックを全て1点差で勝ち上がって来た金光大阪とのセミファイナル。ともにスーパープリンスリーグ関西に所属する2チームの戦いは1点勝負となった。

 金光大阪はこの日、大学受験で主力のFW林智史(3年)とMF石川晴也(3年)が不在。それでも「今日受験で2人いなくて、そいつらの分も、応援してくれている人の分もやるしかないと。僕が(ボールを)収めてチームを落ち着かせられればなと」と意気込む10番FW沖本海斗(3年)が前線でボールを収め、カウンターから独力でクロスまで持ち込むなど、チームに推進力をもたらす。

 奪ったボールをすかさず前線に入れて攻める金光大阪は、MF松井雅功(3年)のロングスローやMF武仲勇海(2年)の精度高いプレースキックも交えて相手ゴール前のシーンを作り出していた。対する大阪桐蔭はゴール前で高さを発揮するCB田中柊利主将(3年)やGK板敷洸大(3年)らが決定打を打たせない。そして、相手の状況を見ながら、ゆっくりとビルドアップして先制点を目指した。

 20分には相手GKのミスキックをインターセプトしたFW西優人(3年)が右足シュート。こぼれ球にMF山上新平(3年)が飛び込んだが、金光大阪DFがブロックする。大阪桐蔭は金光大阪FW沖本にサイドを打開されていたものの、徐々にボール支配の時間を増やす。そして、幅を使ってボールを動かし、そこからタイミングよく縦パスを入れて前進。アディショナルタイム突入後の44分には、右CKからファーサイドの田中がクロスバー直撃のヘッドを放った。

 ただし、大阪桐蔭の永野悦次郎監督は「相手陣内からのチームプレーが全くなかった」と残念がる。勝ちにこだわるあまり、大事に攻めすぎてしまう部分も出てしまっていた。主導権を握っていた前半半ば以降に得点をすることができないままハーフタイムへ。逆にDF塩山友弥(3年)、DF横窪皇太主将(3年)、DF峯聡一朗(3年)の3バックを中心とした我慢強い守備で前半を凌いだ金光大阪にとっては、狙い通りの展開となった。

 そして後半4分、金光大阪がセットプレーから先制点を奪う。左サイド後方から武仲が右足でFKを蹴り込む。ボールがゴール前右寄りの位置にこぼれると、金光大阪DF横窪が上手く背中でDFをブロックしながらボールを確保し、そのまま右足一閃。これがゴールを破った。

 岩松哲也監督が「今、ウチのチームは『我慢したらセットプレーで取れるん違う?』という雰囲気が流れてきている」という通り、我慢強い戦いからセットプレーで奪った先制点。大阪桐蔭はすぐさま反撃に移り、10分には左サイドからボールを繋いで最後は右SB深澤壯太(3年)が右足シュートを撃ち込む。

 選手交代で深澤をSHへ押し出した大阪桐蔭は、視野の拾いMF室勇志(2年)やMF緒方章吾(3年)らが厚みのある攻撃を見せるが、金光大阪の守りをこじ開けられない。一方の金光大阪は後半、ボランチの武仲を左WB、左WBの石上澪矢(3年)を右FWへ動かすなどポジションチェンジと選手交代で守りのバランスを向上させた。そして、相手の攻撃を凌ぎながらカウンターの機会を伺い、交代出場FW廣瀬大輝(3年)がスルーパスで決定機も。2点目を奪うことはできなかったが、準々決勝で4失点した後ろの選手たちが意地も見せて1-0で勝利した。

 岩松監督は「今年のチームはシナリオができているのでやりやすいです。我慢してセットプレーで取れる。後半武器がこうあるよ、ロングスローもあるよと。ここだけ踏ん張ってやれば自分たちにも勝機があるよ、というのが子供たちに浸透している」と語る。新型コロナウイルスによって難しいシーズンだったが、スーパープリンスリーグ関西や和倉ユース大会で強豪と対戦。自分たちの戦い方を構築しながら、京都U-18に4-3で打ち勝ち、C大阪U-18とドロ―と結果も残してきた。

 決勝の対戦相手は、湘南内定MF平岡大陽(3年)を擁すなど前評判の高い履正社高。だが、武仲は「結局はここのグラウンドで戦う訳なので、最後は気持ちやと思う。技術で負けていても気持ちで勝てていたら当たりのところでも勝てると思うので、(大事なことは)最後の気持ちだと思います」と力を込め、「金光自体、全然全国に出れていなくて、ここらへんでしっかりと出て『大阪の強豪に金光もいるぞ』というところを全国に見せたいと思っています」と誓った。11年ぶりの決勝は現役選手たちにとって未知の領域。だが、準決勝で不在だった2選手も戻ってくる。決勝でも自分たちの戦いを最後まで貫くだけ。そして、履正社を上回り、18年ぶりに選手権のピッチに立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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