[11.14 選手権山梨県予選決勝 山梨学院2-1日本航空 中銀スタ]

　第99回全国高校サッカー選手権山梨県予選は14日、決勝を行い、山梨学院高が日本航空高を2-1で下し、3年ぶり7度目の選手権出場を決めた。

　ともに無失点で決勝まで辿り着いた両チームの対戦。立ち上がりに攻勢をかけたのは2年ぶり3度目の出場を目指す日本航空だった。1トップのFW高橋剣士朗(3年)、シャドーに入るFW吉川元輝(3年)が果敢な仕掛けでゴールに迫ると、前半14分には先制に成功。MF祖父江翔(3年)が放り込んだロングスローをニアサイドの吉川がすらし、MF秋庭涼太(3年)、高橋が立て続けに飛び込むと、最後は混戦の中から高橋が右足で蹴り込んでスコアを1-0とした。

　山梨学院にとって今大会初となる失点。そして、早い時間帯での先制点献上となったが焦りはない。「セットプレーの中で失点してしまったのは非常に悔いが残るが、時間が早かったので十分にリセットする時間はあった」(山梨学院・長谷川大監督)。そして、すぐさま試合を振り出しに戻す。前半19分、こちらもロングスローの流れからだった。右サイドからMF新井爽太(3年)がロングスローを放り込むと、こぼれてきたボールをMF広澤灯喜(3年)が鮮やかな右足ボレーで突き刺して同点に追い付いた。

　その後は一進一退の攻防が続き、前半を1-1で折り返す。先制を許しながらも、ひとまず追い付いた山梨学院の長谷川監督は「前半のうちに追い付けたのが、すごく大きかった。自分たちにとって優位な流れになったと思う」と語ったように、後半は“追い付いた”山梨学院が押し込む時間帯が続いた。

　日本航空にとって脅威となったのが、新井のロングスローだ。ボールがサイドラインを割れば、無条件でゴール前までボールを送られてしまう。ロングスローをはね返すために多くの選手が帰陣するため、たとえクリアをしても効果的な攻撃につなげらない。

　日本航空はしのいだ。GK小川颯馬(2年)や3バックのDF植松遼(2年)、DF安部大斗(3年)、DF大湯隆希(3年)を中心に山梨学院の圧力をはね返し、「我慢強く守ろう!!」「今はしのごう!!」と声を掛け合ってゴールを守る。しかし、素早い攻守の切り替えを見せる山梨学院に丹念にセカンドボールを拾われ、二次攻撃を受けて再びロングスロー、もしくはCKを取られて自陣に釘付けとなってしまう。

　押し込み続ける山梨学院にも、なかなか追加点は生まれない。しかし、ここでも焦りはなかった。「ああいう展開になると、焦りは相手の方があると思う。1本のカウンターやセットプレーの怖さは航空の強みだと思うので、そこはケアしながら、僕たちは僕たちのことをひたむきにやった」(長谷川監督)。

　そして、選手交代でアクセントを加えた。後半16分に投入されたMF笹沼航紀(3年)は巧みなボールキープで守備網にズレを生じさせ、同時投入されたFW茂木秀人イファイン(2年)は鋭い攻守の切り替えで高い位置で相手攻撃の勢いを削ぐ。そして、同35分に投入されたMF山口丈善(3年)が勝負を決めるゴールを叩き込んだ。

　後半38分、右サイドから笹沼が送ったクロスに反応した相手選手のクリアが中途半端になり、ゴール前の競り合いからボールがこぼれてくると、山口が反応。右足から放たれたボールはネットを揺らし、勝ち越しゴールが生まれる。その後の日本航空の反撃をGK熊倉匠(3年)、2CBのDF一瀬大寿(3年)、DF板倉健太(3年)が中心となってしのぎ切った山梨学院が、2-1の逆転勝利を収めて全国行きの切符を手に入れた。

「最後はゴールに結び付けたのは交代で入った選手だったけど、起用に十分に応えてくれた。彼(山口)だけでなく、途中から出た選手は十分に持ち味を出してくれたし、それが結果につながっている」。持ち味を発揮してチームに貢献した途中出場の選手を称賛した長谷川監督は、それが今年のチームの強みだと胸を張る。

「プリンスリーグを経て、選手層が厚くなってきた。交代選手という考えではなく、それぞれの強みを発揮する場所、タイミングをこちらが考えないといけない。スタートは11人だけど、15、6人は遜色なく、自分たちの強みを組み合わせることができるのが今年のチーム」

　3年ぶりにたどり着いた選手権の舞台。「自分たちはチャレンジャー」と表現した指揮官は、「この(予選の)優勝も一つの通過点。代表として正月まで残っているので、まずは年を越して、その先に行けるように、そしてプレミアリーグで戦っているようなチームに全国の舞台で打ち勝って頂点を目指したい」と力強く語る。選手権開幕まで約1か月半――。悔いのない時間を過ごし、万全の準備を整えたい。

(取材・文　折戸岳彦)

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