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堀越が後半AT劇的弾で29年ぶりの選手権へ! 大成との接戦制し“古豪”から新たな歴史を

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後半アディショナルタイムに得点を決めた堀越高MF日野翔太(3年)

[11.14 選手権東京B予選決勝 堀越高 2-1 大成高 駒沢陸上競技場]

 始め良ければ終わり良し、終わり良ければすべてよし。試合終盤の苦境を乗り越える劇的な勝ち越しゴールが、チームを救った。第99回全国高校サッカー選手権の東京都大会は14日に駒沢陸上競技場でA、B両ブロックの決勝戦を行い、Bブロックは堀越高が2-1で大成高を破り、29年ぶりの全国大会出場を決めた。

 両者の持ち味が出た、好勝負だった。先に優位に立ったのは、堀越。3バックに両ワイド、中盤4枚が連係してパスを回し、前線でFW尾崎岳人(3年)が積極的に動いてゴールを狙う攻撃は、早い時間で結果を得た。

 前半12分、ポゼッションで押し込んでから最終ラインでボールを回すと、DF市村大基(3年)が右サイドの奥へ鋭い縦パスを送り、一気にチームが連動した。右ウイングバックのMF古澤希竜(2年)がパスを受ける間に、右ボランチのMF宇田川瑛琉(2年)がインナーラップ。その間にシャドーからボランチの位置へ落ちて顔を出したMF日野翔太(3年)が古澤から落としのパスを受け、右を走り抜けた宇田川へ縦パスを送ると、宇田川がクロス。ニアに突っ込んだ尾崎には合わなかったが、ファーサイドに走り込んできた左シャドーのMF山口輝星(2年)が相手と競り合い、こぼれ球を尾崎がゴールへ押し込んで先制に成功した。速いテンポのパス回しに6人が関わった鮮やかな攻撃は、見事。その後も堀越がボールを支配した。

 しかし、堀越のチャンスシーンは、それほど多く続くわけではなかった。佐藤実監督は「相手がよく準備してきたと思うのですが(2シャドーの)日野と山口のスペースがなく、パスを入れる選手も怖がってしまい、パスを刺せませんでした」と振り返った。それでも1-0で折り返して迎えた後半、前線の動きを修正すると、再び攻撃が活性化。後半4分、相手のロングスローを跳ね返すと、カウンター。ボランチのMF東耀也(3年)が右サイドへ展開すると、中央に折り返されたボールで完全に山口が抜け出した。しかし、1対1の場面で大成のGK永田陸(2年)が前に飛び出してビッグセーブ。すると、一気に「試合の潮目が変わった」(堀越高、佐藤監督)。

 前半はロングスローで混戦を生み出すくらいしか攻撃の形を作れず、シュート0本だった大成は、すかさずMF原輝斗(2年)、FW田中ハーディー啓秀(2年)を投入して2人でツートップを組み、後半開始とともに投入されていたMF加藤慶八(3年)とともに攻撃をけん引して反撃開始。大成の豊島裕介監督は「前半は、相手にボールを持たせて、0-0か0-1というゲームプラン。後半に2点を取って来れると考えていた。9番(加藤)、10番(原)はケガとかではない」と後半勝負で主力を温存し、勝負所での交代策を練っていたことを明かした。

 この策が奏功し、後半は、大成がビッグセーブと主力投入で勢いに乗った。後半13分、相手のミスでボールを奪うとFW片原崇也(3年)のパスからDF熊倉拓海(3年)がシュート。後半27分にはMF大関晟太朗(3年)のラストパスからFW田中がゴールネットを揺らしたがオフサイド。攻め続けた結果、後半38分に左CKを競ったこぼれ球を原が押し込み、同点とした。

 試合終盤の同点劇で、流れは追いついた大成にあったが、堀越は冷静だった。特に主将を務める日野が冷静に判断。「残りは3分。まずは連続失点をしないこと。その中でFW若松(隼人=3年)にボールを当てて、チャンスをうかがう」とチームメイトに伝えるとともに、有言実行。試合終了間際、ロングボールを若松に当てると、ポストプレーから山口がパスをつなぎ、最後は日野がインサイドのワンタッチシュートをニアサイドに流し込んでゴール。劇的な再勝ち越しで勝負を物にした。

 堀越のOBでもある佐藤監督は「失点の時は、僕より選手が冷静だった。頼もしい。選手で3年、指導者になって数年、このチームにいて(結果を出す)責任がありますがメディアの方にも家族にも、堀越は“古豪”と呼ばれていました。それでも積み上げていけば、いつか結果は出ると思っていて、それは今年のチームなのだろうという手ごたえはありました」と東京制覇という長年の目標を達成したチームについて誇らしく語った。もちろん、重い扉を開けただけで終わるつもりはない。一つのパスに全員が連動する攻撃は、間違いなく全国でも通用する。積年の思いを果たした今、新しい歴史を作りに行く。

(取材・文 平野貴也)
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