beacon

徳島市立は徳島3連覇も多くの改善すべき点。「ここから上がって行くしかない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

徳島市立高は徳島3連覇を達成も、今後の奮起が期待される

[11.14 選手権徳島県予選決勝 徳島市立高 2-0 鳴門渦潮高 徳島市球技場]

 第99回全国高校サッカー選手権徳島県予選は14日に決勝を行い、徳島市立高鳴門渦潮高が対戦。立ち上がりの2得点を守り切った徳島市立が勝利し、3年連続18回目の選手権出場を決めた。

 優勝を決めた直後にも関わらず、徳島市立の選手には喜びの色が見られない。試合後には、普段温厚な河野博幸監督が、「勝っただけで、まったく嬉しくない。みんなの一生懸命さが伝わってこなかった。こんなんじゃ、応援されるチームとは言えない」と雷を落としたように、満足の行く試合展開とは言えなかった。

 原因は、前半のうちに3点を獲りながら後半は締まりのないゲームとなった準決勝同様、後半の失速だ。「前にボールを入れる回数を増やして、ドンドンシュートを打って行こうと話していた」(FW石井嵩也、3年)この日の前半は及第点以上。キックオフと共に、アンカーのMF小林直人(3年)やトップ下の大野龍功(3年)が、積極的にクサビのパスを展開。スペースを狙う石井や、MF前田俊(3年)とMF柴田侑茉(1年)の両ウイングバックがサイドからクロスを入れて、ゴールに迫った。

 4分には、右サイドから前田が入れたロングスローのこぼれを、石井がシュート。DFに当たってCKになると、前田のクロスをDF渡邉浩章(3年)が頭で合わせ、先制に成功する。直後の7分にも、前田の右クロスをファーのDF三倉頼真(3年)が頭で落とし、「折り返しを狙っていた」石井がボレーで合わせて、リードを2点差とした。

 入念にセットプレーを確認した前日練習通りの形で、幸先の良いスタートを切ったものの、「立ち上がりは良かったけど、そこから前にボールが入らず、後ろで回す場面が増えていった」(石井)。主将のMF中田舜貴(3年)は、「中では立ち上がりと変えずに続けようと言っていたけど、カウンターを受けるのが怖かくて横パスばかりになっていた」と振り返る。15分に右サイド抜け出した石井のパスから前田が放った右足シュートもDFに阻まれ、得点には至らなかった。

 エンドが変わった後半は、DF撫養優希(3年)、GK重友諒介(3年)を中心に組織的な守りを見せた鳴門渦潮がリズムを掴んだ。奪ってからはMF井上涼太主将(3年)やFW八木脩斗(3年)を起点にカウンター攻撃を展開する。

 後半16分、2列目からのスルーパスに反応したFW高原希和(2年)がゴールに迫ったが、徳島市立DF渡邉が上手くカバー。20分には、左クロスからFW越久琉輝亜(2年)がゴールを狙ったが、徳島市立のU-16日本代表候補GK藤澤芭琉(1年)に阻まれた。後半の徳島市立は失点こそ回避したものの、前半のように相手ゴールに迫る回数が少なく、CKもゼロ。前半からスコアが動かないまま、タイムアップの瞬間を迎えた。

「今年の悪い所が全部出た試合」と振り返るのは、河野監督。本気で全国の上位を狙うには、緩みがちになっていた学校生活を含めて改善すべき点はたくさんあると厳しい言葉を続ける。特に重要となるのは、守備の強度アップだ。打倒・徳島市立を目指し、守備を固めてくる相手が多かった予選を勝ち抜くため、攻撃の練習だけをしてきたが、立場が入れ替わる全国に向けて、ここから一気に個人として、組織としてのレベルアップしなければいけない。「今が底。ここから上がっていくしかない」。試合後、指揮官が選手に向けた言葉の通り、どこまで這い上がれるが大きな鍵だ。この先、「笑顔なき優勝があって良かった」と言えるような奮闘に期待したい。

(取材・文 森田将義)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2020

TOP