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一生懸命に走り、戦い抜いて大津撃破や熊本制覇「できる」ことを示したルーテル学院、4年ぶりの全国へ

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ルーテル学院高が4年ぶり5回目の全国へ

[11.21 選手権熊本県予選決勝 ルーテル学院高 0-0(PK5-3)熊本国府高 えがおS]

 熊本代表はルーテル! 第99回全国高校サッカー選手権熊本県予選決勝が21日、熊本市東区のえがお健康スタジアムで開催され、ルーテル学院高が4年ぶり5回目の優勝を飾った。2連覇を狙う熊本国府高と対戦したルーテル学院は0-0で突入したPK戦の末、5-3で勝利。すでに全国大会の組み合わせは決まっており、ルーテル学院は12月31日の1回戦で丸岡高(福井)と戦う。

 PK戦5人目、先攻・ルーテル学院はエースFW島崎大河(3年)が右足でゴール。優勝を決めた選手たちはガッツポーズを見せ、喜びを表現した。だが、すぐに各選手が熊本国府を労り、手を差し伸べて声がけ。勝者として驕ることなく、100分間の激闘を終えたライバルたちと健闘を戦う姿があった。

 両校が一生懸命戦い抜いた100分間。ルーテル学院の小野秀二郎監督は、「(今年、)熊本県は最悪に見舞われてね、大変な思いをしているからね。少しでもそういう人たちが感動してくれて、『よし、ルーテルができるんだから、僕も、私も、明日頑張ろう』とね。そういう(大変な状況下で)やっている姿が選手たちに伝わったから……」。コロナ禍、自然災害に屈することなく日常を過ごして大会を開催し、自分たちを支え、応援してくれる人々がいる。その中で、何より互いが一生懸命で、見ている人が感動するような戦いをできたこと、また準決勝の大津高撃破、そして熊本制覇を「ルーテルでも、できる」ことを示せたことを喜んだ。

 熊本国府は今大会無失点。ルーテル学院は初戦で1失点した後は3試合連続無失点で決勝を迎えた。立ち上がりこそルーテル学院がプッシュしてFW荒牧琉偉人(2年)や島崎がミドルシュートを放ったが、両校ともにゴールをしっかりと守ることを意識しながらの戦いとなった。

 後方での組み立てから前線にボールを入れ、FW毎床玲音(3年)とFW大倉梢太郎(3年)が起点を作る熊本国府は20分頃から攻撃時間を増やす。そしてサイドからの崩しを見せたほか、トリッキーな動きが特長の大倉が巧みなターンからシュートを撃ち込んだ。

 だが、主将の左SB福島健琉(3年)が「試合をする中でも一人ひとり成長できたかなと思います。粘り強い守備だったり、最後まで自分のマークに対して付いて行く守備だったり、熊本の中で一番粘り強い守備ができたと思います」と語るルーテル学院は崩れない。

 後半10分、熊本国府は準決勝3得点のFW岩永晴琉(3年)と主将のMF山内秀太(3年)、全国経験者のMF免田青樹(3年)の3選手を同時投入。勝負に出る。だが、ルーテル学院の小野監督は「後半最初の10分間の動きに注目していて、国府さんの方が足が止まり出した気がしたので、これで行けるかなと。このゲームは崩れずに行けそうだなと」と振り返る。

 熊本国府は岩永の推進力ある動きなどで先制点を目指したが、ここでギアが上がらなかった。佐藤光治監督も「あそこから勝負だったけれど、なかなか展開的に上手く行かなかった」と首を振る。中盤、DFラインの押し上げができず、むしろ試合の流れはルーテル学院へ傾いた。セカンドボールを拾い、チーム全体が前に出るルーテル学院は23分に左サイドを抜け出した島崎がシュートまで持ち込み、26分にはMF上田慎明(2年)のスルーパスで島崎が抜け出す。

 だが、シュートは熊本国府GK吉永縁心(3年)が見事な反応でストップ。ルーテル学院はその後もMF田尻将仁(3年)のロングスローや福島の攻撃参加、MF後藤然(2年)、上田の飛び出しからチャンスを作るも、後藤の決定的なヘッドがクロスバーを叩くなど先制することができない。熊本国府も1チャンスを狙い続けていたが、スコアは動かず、試合は延長戦に突入した。

 延長戦になっても運動量を落とさずに戦い続けるルーテル学院はその後半3分、交代出場FW坂口眞汐(3年)と島崎が連続で決定的なシュートを放ったが、熊本国府GK吉永縁が連続ストップ。さらにこぼれ球を田尻が狙ったが、今度は熊本国府DFがシュートブロックする。ルーテル学院はチャンスを作り続けたものの、熊本国府は驚異的な反応を見せるGK吉永縁が延長戦終了間際にもビッグセーブ。一方のルーテル学院もCB坂本光(2年)やCB西原篤史(3年)が最後まで身体を張り続けてコースにシュートを打たせなかった。

 試合は0-0のままPK戦へ突入。後攻・熊本国府の3人目のシュートがポストを叩いたのに対し、ルーテル学院は坂本、後藤、福島、上田が連続で決め、最後は島崎が決着をつけた。

 今年のルーテル学院は、熊本を代表する存在である大津打倒を目標とし、「果てしない差がある」と認めた上でコツコツと努力。練習試合の対戦で大敗していたものの、今大会準決勝の再戦では、我慢強い守りや切らさなかった声で食い下がり、PK戦で勝利して周囲を驚かせた。そして、決勝でも前回王者にPK戦勝利。福島は「チーム全員走って頑張れたと思います」と胸を張った。

 準々決勝以降の3試合連続で0-0からのPK戦勝利。小野監督も認めたように、技術面などの課題があることは確かだ。それは“日本一の練習”で改善するだけ。「賢く 剛く 美しく」をモットーとして掲げ、周囲への感謝を持ちながら戦う熊本王者が全国大会でも最後まで諦めずに戦い続けて「ルーテルでも、できる」ことを示す。

(取材・文 吉田太郎)
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