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温情起用ではなかった…"満了3選手”を先発させた大分・片野坂監督「厳しい状況を感じさせない準備をしていた」

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DF星雄次、FW三平和司、MF前田凌佑

[12.9 第27節延期分 柏1-1大分 三協F柏]

 大分トリニータ片野坂知宏監督はこの日、前日に今季限りでの契約満了が発表されたばかりの3選手を先発メンバーに抜擢した。「今季の最後まで『トリニータのために』というものを出してくれているのがありがたい」。指揮官が大胆起用を決断した理由はこれまでのシーズンと変わらず、彼らのトレーニングでの振る舞いだったという。

 大分は8日、今季限りの契約満了選手としてFW三平和司(32)、MF小手川宏基(31)、DF星雄次(28)、MF前田凌佑(26)の4選手を一挙に発表。足掛け8年間にわたって所属した三平を筆頭に、全員が下部カテゴリからJ1にまで導いた躍進の功労者たちだった。

 クラブの発表コメントでは「大分での3年間、本当に幸せでした」(星)、「たくさんの経験をしましたが全てが僕の一生の財産」(前田)と感謝の気持ちがつづられた一方、「正直このチームでもっとプレーし大好きな大分で大好きなみなさんの喜ぶ顔が見たかったです。自分の実力不足でそれができないのが悔しいです」(三平)と沈痛な言葉もつづられた。この発表がもたらした衝撃はサポーターにも広がり、翌日に控えるリーグ戦への影響は少なからず懸念されていた。

 それでも片野坂監督はこの日、今季限りでの退団が決まっている三平、星、前田の3選手を先発に抜擢した。その理由は前節の仙台戦(●0-2)から中2日という過密日程の影響こそあれ、温情起用ではなかったという。試合後、指揮官はオンライン取材でメンバー構成に込めた思いを語った。

「あの発表があり契約満了になった選手もいたが、積み上げてきた自分たちのサッカーをみんな理解している中でトライしてくれてくれた。自分の苦しい立場、メンタル的に厳しい状況の選手がいた。ただ昨日とおとといのトレーニングを見ていると、そういうものを感じさせない準備をしていて、集中したトレーニングの中で『やってやるぞ』というものを見せてくれた。思い切って使おうという気持ちになった」。

 就任から5年間、前の試合で結果を出したエースストライカーであってもコンディションが悪かったり、相手チームとのかみ合わせが悪かったりすると、起用を避けることも辞さなかった片野坂監督。そうした姿勢を貫いた指揮官に導かれるかのように、その他の選手たちも特別な空気感をつくることはしなかったという。

 DF岩田智輝は「いつもどおりというわけじゃないけど、目の前の試合にみんなで勝ちに行く」ことを意識したとのこと。その一方で「少しでも力になりたいと思うし、このゲームの中で勝ちたいという欲がより大きく出てきた」と内心では闘志を燃やし、「やってやろうという気持ち」を果敢なミドルシュートによる同点弾でも体現してみせた。

 そうした雰囲気づくりがあったからこそ、残り少ない出場試合となる選手たちも勝利にフォーカスして戦えたようだ。巧みに相手の逆を突くポジショニングで味方からの縦パスを何度も引き出した三平、身体の大きな相手にもタイミングを見極めながらボールを奪いに行った前田、セットプレーのキックやゴール前への侵入で決定機を演出した星。3選手ともこれまで大分で何度も披露してきた持ち味を随所に見せていた。

 試合後、オンライン会見に出席した星は「発表はあったけど、あと4試合、チームのために戦うということを自分の中で決めていた。今までどおりやると決めていた」と力強い言葉。その上でクロスに飛び込んで決定機につながった場面について、報道陣から問われて「クロスに入るタイミングはずっとやってきたので」と積み上げてきたものへの自負も語った。

 そして、平日ナイトゲームという環境ながらアウェーの地に訪れたサポーターへの感謝も語った。この日、大分のビジターエリアからは「歴史を刻んだ戦士たち」「まだ終わりじゃないぜ19・20・27・32」と4人の背番号を記した横断幕が掲出。星は「ああいう横断幕も出してもらって、すごく応援してもらっているなという気持ちになった。残り試合でもプレーで恩返ししたい」と自ら切り出した。

 4選手が大分で戦えるのもホーム最終戦となる次節の札幌戦と、続くアウェーで迎える湘南戦・鳥栖戦の計3試合。「個人としては残り3試合、チームの力になれるようにしっかり準備して、チャンスがあればしっかり戦いたい」。そう自身の意気込みも語った星は「短い準備期間の中で最後なのでしっかり勝てる試合をしたい」とチームの勝利を誓った。

(取材・文 竹内達也)
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