明治大サッカー部員の4年生15人のうち、12人のプロ入りが内定したことを発表する合同記者会見が行われた。「ポーズの指定はありますか?」「左手でガッツポーズを作りましょう」。FW岩田寛生(4年=藤枝東高)は会見場の一番後ろの席で、華やかに写真撮影に収まる同期の姿を黙って見つめていた。

「去年も9人がJリーグに行ったけど、これまでは多くて半々だったり、プロの方が少ないのを見てきた。正直、悔しい思いが一番。嬉しい思いもあるけど、やっぱり悔しい。4年間、一緒にやってきた仲間が素晴らしいクラブに行くことは誇らしい。だけど、自分もあそこの一人として加わりたい思いが強いです」

　入学前から話題の世代だった。プレミアリーグと全国高校選手権の2冠を制した青森山田高の主将MF住永翔、日本クラブユース選手権(U-18)大会とJユースカップの2冠へ導いたFC東京U-18の主将DF蓮川壮大、プレミアリーグEAST得点王と日本クラブユース選手権(U-18)大会得点王のFW小柏剛(大宮アルディージャユース)などなど、錚々たるメンバーが並んだ。

「凄いメンツで、有名な選手ばかり。レベルは高いなと思いました」。希望を胸に明大サッカー部の門を叩いた岩田だが、衝撃を受けたことを昨日のことのように思い返す。

　なかなか試合に絡むことができない中で、岩田は裏方の仕事を兼務するようになった。3年生で副主務、そして4年生では主務として、大会への登録など「僕がやらないとチームが回らない業務」をやってきた。「一時期は就活と主務、選手の3つを同時にやっていた。僕しか経験できていないので、シーズンをやってきて、いい経験ができたと思います」。

　一般企業への内定をもらい、一旦は大学でサッカーに区切りをつける決断をした。しかし次々と発表になる同期のJリーグ入り。心の奥底にしまい込んだはずの想いが再燃した。「自分も最後までもがきたい」。栗田大輔監督からは「プロの世界は甘いもんじゃない」と諭されたというが、今は悔いを残したくないという想いが上回っている。

　“15分の3”。現時点ではMF神崎大雅(4年=大阪桐蔭高)のみが一般企業への就職を決めているが、FW時里元樹(4年=浦和ユース)と岩田は、年明けの特例全国大会「#atarimaeni CUP」まで“就活”を続けることになるという。岩田は終盤のリーグ戦でもベンチ入り。11月14日の早稲田大との天王山では、先発に抜擢された。「終盤は調子も上がってきて、手ごたえもあります」。華やかな同期を目の当たりにしたこの日、より決意を固めたようだった。

FW岩田寛生

(取材・文　児玉幸洋)

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