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「感じる力」持つ市立船橋に託された様々な思い。“2週間”で深まった一体感と思いを持って頂点へ

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市立船橋高は仲間の思いも胸に全国を戦う

 様々な思いを「感じた」名門が、その思いと一体感を持って選手権を戦う。戦後最多タイとなる6度目の選手権優勝を狙う市立船橋高(千葉)は、2週間の臨時休校から今月23日に全体練習を再開。選手たちは選手権に出場できることへの感謝の念や、非常に大きなエネルギーを持って12月31日開幕の初戦に臨もうとしている。

 DF石田侑資主将(3年)は「(新型コロナウイルス感染拡大の影響で全国大会に)出れない部活がある中で、バスケ部の子だったりが『本当に俺たちの分まで頑張ってくれよ』というLINEをくれたり、本当に色々なものを託されていて、色々な人達への恩返しも含めて結果でやっぱり示さないといけないのかなと感じています」。そして、改めて「全国優勝」することを誓った。

 臨時休校期間中の活動は、自宅での個人練習やリモートでのミーティングに限られた。いつ全体練習が再開できるか分からないような状況だったが、各選手が意識高く個人練習。また、全国初戦で対戦する佐賀東高(佐賀)の動画分析でそれぞれの視点で意見を出し合い、新たな気付きを生み出すなど、各選手が全力で今できることに取り組んできた。

 市立船橋のサッカー部員は今春の臨時休校期間中に、自宅でもできるトレーニングメニューと、新型コロナウイルス感染拡大防止への啓蒙も織り交ぜた内容の動画「市船の誇り」を自分たちで作成し、配信。コロナ禍によって思い切りサッカーをすることのできない小中学生へエールを送るような活動も行っている。今回の自粛期間も自分たちで「感じ」、限られた中で自分のためや、仲間のために何ができるか考えてそれぞれが実行した。

 石田は仲間たちに頼もしさを感じたという。それぞれが不安を抱いていたことは間違いない。だが、下級生から絶大なリーダーシップを発揮してきた石田が強い言葉を発しなくても誰一人下を向くことなく、前向きな姿勢でチームのためとなる取り組み。「感じられる選手が多くいる」(石田)という今年の市立船橋は、それぞれが全国大会に出られない仲間の思いや自分たちの全国大会出場のために尽力してくれた人たちの思いを感じ取り、緩めることなくやるべきことを続けてきた。

「(全国大会に)出れるようになったら頑張ろう、と強く思えたのは仲間のお陰です」と石田。活動再開直後の練習試合ではさすがに身体が思うように動かず、ミスもあったという。だが、各選手の努力の成果もあって大きな落ち込みはなく、強豪校相手に勝利。石田は「本当に勝ちたいとか、思いが全面に溢れていて、『今年のチームは大丈夫』だなと凄く自分は感じている」と加える。今年の市立船橋は昨年のFW鈴木唯人(現清水)やDF畑大雅(現湘南)のような抜きん出た選手は不在。だが、この2週間でより深まった結束力や例年以上とも言えるような勝利への執念を力にして、対戦相手を上回る。

 サッカーができなかった2週間をハンデにはしない。不安な思いをし、大会前最後の準備を十分にできなかったことは確かだが、自分たちだけが経験できたことをプラスにする考えだ。中盤の要・MF佐久間賢飛(3年)は「(2週間を)言い訳にせず、自分たちの目標である日本一へ向けて今、結構チームとしても良い状態でできているのかなと思っています」と語り、守護神のGK細江彦太(3年)も「(みんなの意識が高く活動再開後、)練習の内容も、レベルも前よりも上がったと思いました。コンディションが良くなれば相当良いと思います。他の部活とか出れないですし、自分たちは(感謝して)結果で示すしか無いという気持ちがあります」と力を込めた。

 彼らは全国制覇することを目指して高校サッカーを代表する名門校・市立船橋に進学してきた。「市船」は常に勝たなければならないチームだが、今年に関しては、波多秀吾監督をはじめとするスタッフも、選手たちも「何としても勝ちたい」「何としても優勝したい」という思いを強く持っている。まずは市船の3原則である「球際、切り替え、運動量」をどの試合でも対戦相手以上に発揮すること。見ている人に思いが伝わるような戦いを続けて、どんな試合展開でも諦めずに戦い抜いて頂点に立つ。

(※市立船橋高の協力により、リモート形式で取材をさせて頂いています)

(取材・文 吉田太郎)
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