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大会直前にもあった壁と葛藤。何度も乗り越えてきたエース、昌平MF須藤直輝が最後の選手権で舞う

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昌平高MF須藤直輝主将が最後の選手権に臨む

 何度も壁を乗り越えてきた注目ドリブラーが、最後の選手権で舞う。昌平高のU-18日本代表候補MF須藤直輝主将(3年)は、選手権の主役候補の一人。元ブラジル代表の名手、FWロナウジーニョに憧れ、ピッチでサッカーの楽しさを表現する須藤は、トリッキーなドリブルで会場を沸かせ、試合を決定づけるようなゴールを幾度も決めてきた。

 2年生エース、ゲームキャプテンの大役も担っていた前回大会は2得点を挙げて8強。今年は大宮ジュニアユースから昌平へ進学した理由でもある選手権制覇の目標に挑戦する最後のチャンスだ。

 だが、開幕の約3週間前、須藤は葛藤の中でプレーしていた。怪我を抱えていたこともあり、不十分なコンディション。紅白戦でも突破の回数を増やすことができず、ブレーキになっていた。12月上旬の取材日は藤島崇之監督も「今年一番悪かったくらい」と振り返るほどのチーム状況。個々の気持ちが空回りしているところもあったか、チームの生命線である連動性もどこか欠けていた。

 昌平は今年、Jクラブ内定4選手や年代別日本代表候補を擁すタレント軍団で、選手権の優勝候補の一角だが、やはり須藤に元気がないとチームに勢いが出てこない。昨年までは先輩たちがいる中でのびのびとプレーすることができた須藤だが、現在はチームのことをより考えながらの毎日。思うようにサッカーを楽しむことができず、自身についても、チームについても焦りがあった。

「やっぱり自分が良いプレーをすればチームに波が来ると思うし、今は自分が上手く行っていないのでチームも元気がなくなってきてしまっているかなという気持ちがあります。この状況で選手権に入ると初戦(対高川学園高)から難しい試合になると思う。修正したいと思っています」。入学前から常に注目を浴びる中でプレーしてきた3年間。あまり下を向いている印象のない須藤だが、これまでも悩み、葛藤したことは何度もあったという。世代を代表するエースは、その度に乗り越えてきたという自負がある。

「ドリブラーって波があって、今までこういう時もたくさんあったので、そういう時に自分で研究して、また成長できると思うのでやるしかないですね。数えていないですけれども(壁に当たったことは)しょっちゅうあります。(その度に乗り越えることが)できていると思います。今は目の前しか見えていないというか、あまり先のことを考えてドリブルできていないというのがあって、ゴールを目指す上でのドリブルが少ないかなと思う。あと縦突破が増えてくればカットインも抜きやすくなっていくのかなと思っています」

 身長は170cm弱と小柄。下級生時はフィジカル負けすることも多かった。その中で肉体を強化したり、当初課題だった左足をより使えるように努力したりするなど壁を乗り越えて成長してきた。他の高校生以上とも言えるプレッシャーの中で悩んで、改善して、また悩んで…。人一倍の探究心を持ち、努力してきた日々が今の須藤を作り上げている。

「自分は選手権に勝ちに行くので自分が昌平を引っ張るくらいの勢いでやらないといけないと思いますし、ここで立ち止まっていてはいけないなと思います。この状況から抜け出して、みんなで一丸となって日本一になるという強い意識を持って物事に取り組まないといけないと思うので、チームのみんなで話し合いながらやっていきたい」。自分のことをまた研究してプレーを改善し、仲間と話し合いを重ねてチーム状況も変えるという考え。その成果が出たか、大会直前、藤島監督は須藤も、チーム状態も本番へ向けて向上してきていることを口にしていた。今回も一つ壁を超えてきた須藤は、より成長した姿で選手権に臨む。
 
 須藤が全国で活躍できたどうかのバロメーターはやはりドリブルだ。「自分の中ではやっぱりドリブルで人を交わして、相手が取れないくらいの選手になりたいと思っていて、それができたら満足かなと思います」。残念ながら、今大会は満員の観衆を沸かせることはできないが、それでも映像を通して見る人にサッカーの楽しさが伝わるようなプレーを。そして、優勝候補の重圧を仲間たちとともに乗り越えて、地元・埼玉スタジアム2002の決勝で舞う。

(取材・文 吉田太郎)
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