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県予選出場ゼロの192cm長身FWを先発抜擢!「全国舞台」の戦い見せた大手前高松、初出場から2年連続で初戦突破

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大手前高松高の先制シーン(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権1回戦 札幌大谷高 0-1 大手前高松高 味フィ西]

 第99回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、味の素フィールド西が丘の第1試合は大手前高松高(香川)が札幌大谷高(北海道)に1-0で勝利した。来年1月2日の2回戦では丸岡高(福井)と対戦する。

 一発勝負のゲームプランを見事に表現した香川王者が、初出場の昨年度に続き2大会連続での初戦突破を果たした。

 大手前高松の川上暢之監督はこの日、エースストライカーのFW足立大和(3年)をベンチに温存し、香川県予選で出場のなかった192cmの大会最長身FW陶聖太郎(3年)を先発に抜擢。相手のスカウティングを混乱させた上で、「相手のフラッグ前」という安全地帯にボールを集めるための起用だった。

「舞台慣れをしていないまだまだなチームなので、全国の舞台でまず大事にしているのは、背後を取られないこと、相手を押し込んだときにボランチが前向きで冷静にプレーできること、サイドは1対1であることといった原理原則の部分。そうしたところをしっかり徹底して守りながら、相手がどう出てくるかわからない中で相手コートの一番ゴールから遠いところでサッカーをするということ」(川上監督)。

 左サイドで縦関係を構成するMF正木浩輔(3年)とDF冨家仁(2年)、ダブルボランチのMF橋本康(2年)とMF平田涼也(3年)ら技術のある選手も多く、普段はボールポゼッションを主体に戦っている大手前高松だが、ここは一発勝負のトーナメントの1回戦。まずはパスワークに強みを持つ相手の攻撃を消すためにも、正木のロングスローを含めてダイナミックな展開を有効に使う戦術に打って出た。

 そして前半20分の飲水タイム、川上監督は「よりスピードがあり、よりサッカーができる」と評するエースの足立を陶と代えるべく準備。するとその直後、スローインのため交代を一時停止し、陶に最後の競り合いを任せようとしていたところで試合が動いた。

 前半24分、右CKを獲得した大手前高松はニアポスト脇に陶を置き、ゴール前に準備していた布陣をセット。するとキッカーの正木は、ファーサイドに向かって鋭いボールを蹴り出した。インスイングで低く飛んだボールはGK渋井悠和(3年)に弾かれたが、こぼれ球に平田が反応。力強いシュートは相手DFのブロックにも負けず、ゴール左隅に突き刺さった。

「セットプレーはチームとして徹底してきた部分で、予選からずっと練習してきた。予選の準決勝でもあの位置でヘディングを決めていたし、定位置になりつつあった」(平田)。そんな理想的な形で奪った先制点。そして川上監督は直後、すぐさま陶を下げて足立を投入。相手の出方をうかがったところで、前線のスピードを活かしながらボールを保持する普段のスタイルに近づけていった。

 それでも後半に入ると、相手も徐々にストロングポイントを出せるようになり、戦況は札幌大谷に傾いていった。「後半の苦しい時間帯はみんな間延びして、ラインの上げ下げがうまくいかず、統率が取れてなかったりしてオープンスペースを使われた」と振り返ったのは大手前高松のGK三谷幸記(3年)。札幌大谷の中心を担うMF岡本大地(2年)とMF高山大樹(3年)のダブルボランチにボールを握られ、FW佐野宏太(3年)らサイドアタッカーのカットインを許す場面が続いた。

 しかし、最後に立ちはだかったのは守護神の三谷だった。後半26分、岡本のスルーパスに反応したFW伊東涼哉(3年)の決定機ではトラップが長くなったところに飛び込み難を逃れると、同37分には途中出場のFW高橋颯汰(1年)、MF川井駿(3年)を経由して放たれた伊東のシュートを落ち着いてセーブ。後半アディショナルタイムのピンチも的確なポジショニングで相手にプレッシャーをかけ、高橋のシュートが枠を外れていった。

 前回大会で香川県勢7年ぶりの勝利を挙げた大手前高松は、初出場から2年連続での初戦突破。「今回の試合は粘り勝ち。前半の早い時間に得点することができて、その後には苦しい時間が長かったけど、長かった苦しい時間をどれだけ耐えられるか。そこで耐え抜けたことが勝因になった」(三谷)。積み上げてきたスタイルに、選手権仕様の粘り強さとセットプレーを備えた新興校が今大会も好スタートを切った。

(取材・文 竹内達也)
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