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「笑顔・勇気・夢・感動・たくさんの思いを日本中に届けます」。前橋商MF石倉潤征主将が思い込めた選手宣誓

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前橋商高MF石倉潤征主将が思いの込もった選手宣誓

[12.31 選手権1回戦 前橋商高 1-2 神村学園高 ニッパ球]

 2020年、コロナ禍の中で戦ってきた高校3年生による素晴らしい選手宣誓だった。

 12月31日、第99回全国高校サッカー選手権の開会式は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため規模を縮小し、史上初となるリモート開催された。代表48校が事前撮影した行進動画にてVTR参加。8会場の1回戦第1試合に出場する16校のスタメン11名がピッチ上で見守る中、ニッパツ三ツ沢球技場の前橋商高MF石倉潤征主将(3年)が、感謝の思いを込めて2分40秒を越える選手宣誓を行った。

「宣誓、私達は突然訪れたコロナ禍にある活動休止、そして史上初のインターハイ中止という本当に長いトンネルの中でも、その先にある選手権という光を目指し、練習に励み、そしてようやくこの選手権という舞台にたどり着くことができました。

今年は新型コロナウイルスの影響で、私達の生活が制限され、誰もが全く想像していなかった1年となりました。

練習が思うようにできず、私達の試合を見てもらう機会も減ってしまいました。

このような苦しい時間を過ごし、仲間とともにサッカーができない辛さを知り、またサッカーができる喜びを改めて実感しました。

選手権の開催に携わって下さった方々、私達を応援して下さった方々、そして多くの医療従事者の多大なる努力と世界中の一人ひとりの頑張りによって、今、私達はこの舞台に立つことができています。今、この舞台があることに、感謝しても感謝しきれません。

私達の同年代の他競技の選手には、集大成である舞台に立つことができず、涙を飲みながら引退した選手が多くいます。今、私達が同年代の仲間の思いを胸に、暗くなりつつあるこの日本に明るさを取り戻すために、笑顔・勇気・夢・感動・たくさんの思いを日本中に届けます。

今、この時間も苦しい思いをされている方々、決して一人ではありません。今を生きる私達が、一つとなり、この高く険しい壁をともに乗り越えましょう。

私達自身が希望の光となり、たくさんの方々へ、希望を届ける大会にし、また次へとバトンを繋いで行くためにも感謝の気持ちを胸に、精一杯プレーすることをここに誓います。

令和2年12月31日、群馬県立前橋商業高等学校サッカー部主将、石倉潤征」

 石倉はかつて2年連続全国3位になった歴史を持つ伝統校、前橋商を16年ぶりとなる選手権へ導いたボランチだ。開会式直後に開催された神村学園高(鹿児島)との初戦では、ゴール前での身体を張ったシュートブロックやボール奪取を見せたほか、ゲームメーカーとして正確なボールタッチからサイドへ展開する持ち味も発揮した。

 試合は残り11分からの2失点によって逆転負け。「今年はコロナウイルスで本当に苦しい1年だったんですけれども、そういった中でもたくさんの人に支えてもらって自分たちがこの舞台に立つことができているので、本当に感謝しかなかったですし、本当に勝利という形で届けられられなかったのが悔しかったです」と唇を噛んだ。

 それでも、選手宣誓については、「90点くらいですかね、いや100点です」という自己評価。文面については、「まず自分で考えて、国語の先生とサッカー部の顧問の先生に見てもらったり、あと両親にも聞いてもらって直したりしました」。自分の思いや感謝を伝えることを意識して作成。選手宣誓の5分後には自らの試合が始まるという難しい状況の中だったが、思いを伝え切った。

 大役を経験できたことについて、石倉は「(選手宣誓を)これからの将来でやっていくことはないと思うので、(組み合わせ抽選会で)本田望結さんに選んでもらって、(今日)聞いてもらって凄く嬉しかったですし、自分の思いをたくさんの方々に伝えられたかなと思います」と感謝。石倉の言葉にもあったように、高校サッカー部員たちが21年1月11日の決勝まで「笑顔・勇気・夢・感動・たくさんの思い」を日本中に届けるような戦いをする。

(取材・文 吉田太郎)
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