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“PKキーパー”投入直後にドラマ…東福岡、80+3分の決勝弾で4大会ぶり2回戦突破!!

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東福岡高(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権2回戦 作陽高 1-2 東福岡高 等々力]

 第99回全国高校サッカー選手権は2日、各地で2回戦を行い、等々力陸上競技場の第2試合は東福岡高(福岡)が作陽高(岡山)に2-1で劇的な逆転勝ちを収めた。3日の3回戦では矢板中央高(栃木)と対戦する。

 技術の高い選手を活かしながらボールを握って攻める東福岡に対し、時には6バックに撤退してカウンターの機会をうかがう作陽。好対照なチーム同士の強豪対決はドラマチックな展開となった。

 先手を取ったのは作陽だった。前半9分、左からのコーナーキックをMF西田達哉(2年)がゴール前に送り込むと、高身長の選手居並ぶ混戦で競り勝ったのはFW杉本翔(3年)。1回戦でも2ゴールを挙げていたエースがヘディングでのファーストシュートをネットに流し込み、値千金の先制点を奪った。

 その後は作陽が「早い段階で点が取れたので相手の出方をみようというところでブロックを敷いて粘り強く守る前半にした」(酒井貴政監督)ことで、東福岡が一方的にボールを握る展開。撤退時には6人が最終ラインに並ぶ守備的布陣の作陽を、MF佐藤聡史(3年)、MF上田瑞季主将(3年)を中心としたゲームメークで追い込んでいった。

 すると前半34分、東福岡はDF左座佑眞(3年)からのパスを低い位置で受けた上田が、振り向きざまの浮き球パスを相手の最終ライン裏に送り込むと、MF遠藤貴成(3年)がダイアゴナルなランニングで突破。右足アウトサイドでうまくトラップし、最後は落ち着いた持ち上がりからネットに流し込んで同点に追いついた。

 1-1で迎えた後半は作陽がやや前傾姿勢を取るようになり、試合は再び拮抗した展開となった。「ポテンシャルが高い選手が多いので、引くのではなく、戦おう、成長しようという意味でいでトライした」(酒井監督)。依然として多くの攻撃回数を期待できる流れではなかったが、杉本や途中出場FW大森椋平(3年)にボールが入ればチャンスになっていた。

 そして後半24分、作陽は負傷明けのMF中島理慶(3年)をピッチに送り込み、さらにギアを上げた。すると34分にビッグチャンス。GK徳本乃耶(3年)からのフィードを中島が収め、裏への浮き球に杉本が抜け出すと、バックパスを受けたDF中井陸人(2年)のクロスに中島が反応し、エリア内で倒されてPKを獲得した。

「必ず自分たちの時間が来ると想定していた。1点取りに行って取り切れれば」(酒井監督)という作陽に、待ち望んでいた勝ち越しのチャンスが訪れた。

 ところが後半36分、キッカーの中島が蹴ったボールは左のゴールポストに直撃。試合の均衡は保たれた。命拾いした東福岡はその直後、DF森川英智(3年)に代わってDF竹内良(3年)を投入し、後半アディショナルタイムに入るとGKを原勇輝(3年)から神田翔太朗(3年)に代え、運命のPK戦に備えていた。

 それでも後半アディショナルタイム3分、最後に劇的な展開が待っていた。東福岡はFKのこぼれ球を拾った遠藤が前線に浮き球を送り込むと、途中出場のMF岩井琢朗(3年)が頭でつなぎ、ゴール前で反応したのは竹内。「職人と言われているヘディングの強さ」(上田)というスーパーサブは完璧に頭を振ってボールを捉え、徳本の頭上を越えるヘディングシュートを決めた。

 土壇場で勝ち越された作陽はその後、パワープレーで相手ゴールを攻め立てたが、PK用に投入されていた神田が力強いキャッチで阻んでそのままタイムアップ。東福岡が2016年度以来4大会ぶりの2回戦突破を決めた。

 東福岡の森重潤也監督は試合後、「先取点を奪われたが前半のうちに1点を取り返すことができて、なんとか後半点を取りたいという気持ちの中でメンバー交代をしながら諦めずに戦ってくれた」と選手たちを称賛。「素直に勝てて良かった」とホッとした表情を浮かべた主将の上田は「こういう展開で勝てたことで、課題だったチームの一体感が出てきた。これからの勝ちにつなげていけると思う」と先を見据えた。

(取材・文 竹内達也)

●【特設】高校選手権2020

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