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初出場の大分・日本文理大附は初戦敗退…富山一の警戒集めたエースFW垣内「大学で輝いてプロになりたい」

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日本文理大附高FW垣内太陽(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権2回戦 富山一高 2-1 日本文理大附高 等々力]

 経験の差が勝敗の差となって立ちはだかった。初出場の日本文理大附高(大分)は全国大会初戦で富山一高(富山)と対戦。立ち上がりの20分間で複数失点を喫し、そこから追い上げを見せたものの、最後まであと1点が遠かった。

 通算31回目の出場にして7年前には全国制覇の経験も持つ富山一に挑んだ全国初陣、日本文理大附は序盤から一気に畳み掛けられた。

「相手は全国初戦というのもあって、いつもと違う舞台で自分たちのサッカーができない可能性が高い。ファーストプレーから勢いを持って入って得点しようと話していた」(DF孝井捺希主将)。ゲームプランは明白。FW吉倉昇空(3年)、FW天野碧翔(3年)の2トップを中心にパワフルな攻撃を仕掛けてきた試合巧者に対し、前半17分までになすすべなく2点を与えてしまった。

 こうした展開を「覚悟していた」という保明栄治監督だったが、決定力の高さも含めて「さすが富一さん」と称えるしかなかった。そして「これが全国大会だな、選手権だなと体感した。早く目を覚まして、一生懸命やれる状態になるしかないと感じた」と振り返った。

 ただ、選手たちはその言葉どおりに“目を覚ました”。

 敵将も「思った以上にヘディングが強くて戸惑った」と明かす県予選5試合15試合のFW垣内太陽(3年)にボールを集めてリズムを取り戻すと、FW東健翔(3年)のドリブル突破、MF佐潟堅士(3年)のゲームメークも存在感を発揮。前半29分にはDF大友海翔(3年)のクロス攻撃で相手のハンドを誘ってPKを獲得し、「決める自信しかなかった」という垣内が同校史上初ゴールを沈めた。

 後半も引き続き、優勢に試合を進める時間帯が続いた。指揮官は「富一さんに力を引き上げてもらった」と謙遜したが、髪を刈り上げて全国大会に挑んだ中体連出身のDF丸山剛(3年)は時間を追うごとにボール奪取力に磨きがかかり、不運なハンド判定から立ち直ったDF太田龍成(3年)のロングフィードもますます脅威となっていた。

 だが、勝利につながる1点は許してもらえなかった。

「ボールが自分のところにきたら空中戦は勝てる自信しかなかった」と対人戦では自信も得たという垣内だったが、「左に行くのをわかって誘導したりしてきた」と全国レベルの駆け引きには驚いた様子。そして「プレスとかボール際のところは強いと聞いていたが、想像を超えていた。慣れるまで時間がかかった」と悔やんだ。指揮官も「もっともっと能力を身につけさせてこの場に立たせないといけない。もっともっと上手くしてここに来たかった」と自らに矢印を向け、敗戦の責任を背負った。

 それでも、数々の名門校が経験してきたように、まだ全国での第一歩を踏み出したばかり。貴重な経験を積んだ選手たちにとっても、歴史を切り拓いた学校にとっても、この1試合にはかけがえのない価値があった。

「大分県の県南地域から、自然と海のもの、山のもの、人情味がある街からこういう場所に参加させていただき、貴重な体験ができた」と振り返った保明監督は「ここで得た財産は子供たちに還元していきたい」と先を見据えた。垣内も「自分たちの経験を機に努力して、もう一度この舞台に立ってほしい」と後輩たちに期待を寄せた。

 また「自分の夢はプロになること」という垣内にとっては、ここで経験した“全国レベル”を日々のトレーニングに落とし込んでいく戦いが始まる。卒業後は附属高の日本文理大に進学予定。「ここでいろんなことを経験させてもらったので、今度から練習から足りないところを磨いて行って、大学でまた輝いてプロになりたい」と次なるステージでの飛躍を誓った。

(取材・文 竹内達也)

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