beacon

高かった優勝候補・昌平の壁…初出場・創成館MF岩崎雄永「これが現実」

このエントリーをはてなブックマークに追加

最後まで戦い抜いた創成館高(長崎)MF岩崎雄永(3年)

[1.3 選手権3回戦 昌平高3-0創成館高 浦和駒場]

 初出場対優勝候補。前半は下馬評通りの展開となったのかもしれない。しかし、後半は立て直した。創成館高(長崎)MF岩崎雄永(3年)は「このままでは終われない」と、最後まで戦う姿勢を貫いて一矢を報いようとした。

 プランは狂った。「最初はシンプルに相手の背後を突き、相手がボールを持っているときはドンドン前から行く」(久留貴昭監督)との狙いでゲームに入ったはずだが、自陣に釘付けになった。

「昌平は奪われてもすぐに切り替えられる戦術をとっていると、昨日のミーティングから話していた。奪ったボールは大事にしようとしていたが、切り替えがものすごく早かった。日本の高校で上に行くチームだと感じた」(岩崎)

 個人技とチームプレーを織り交ぜてゴールに迫ってくる昌平の選手をつかまえ切れず。たとえボールを奪っても、素早い攻守の切り替えで、すぐさまプレッシングをかけてくる相手に攻撃権を奪い返された。結果、ハーフラインを越えることにも苦戦し、前半17分、同39分、同アディショナルタイムには失点を喫して、前半だけで3点のリードを奪われてしまった。

 しかし、ハーフタイムに立て直した。指揮官が「やりたいサッカーではない」と喝を入れ、主将も「このままでは終われない。リスクを負って前に出よう」とチームメイトの士気を上げた。

 勇気を持ってラインを上げた。相手最終ライン、時には相手GKまでプレッシャーをかけた。後半16分にはFW新川翔太(3年)が際どいシュートを放つなどゴールを脅かした。後半は昌平に決定機を作らせずにリズムをつかんで試合を進めたものの、創成館にも最後までゴールは生まれなかった。

 終わってみれば0-3の完敗。しかし、後半にアグレッシブな姿勢を示した選手たちを見た久留監督は、「後半は僕らがやらなければならないサッカーをしてくれたので後半は悔いがない」と振り返る。そして、岩崎は「1年間積み上げてきたものが、全国の舞台で発揮できたのは良かった」と語る一方で、昌平との差も実感したという。

「止めて蹴る部分で一番差を感じた。それにプラスして状況に応じたサッカーをしていたし、駆け引きもうまかった。僕たちも自信を持っていたけど、昌平相手にしてみるとすごく差を感じた。これが現実だと思う」

 選手権初出場を果たし、2日の学法石川戦戦で初勝利を収め、新たな歴史を刻んだのは間違いない。「皆が憧れる舞台だと感じられた」という初めての選手権。「悔しさが残ったけど、この経験は大学サッカーに生きてくる。良い経験をさせてもらった」と充実感を滲ませた主将は、「この経験を1、2年生に生かしてもらい、長崎県で毎年全国に出るような高校に、そういう創成館にしていってほしい」と“次の1勝”を目指す後輩たちにエールを送った。

(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2020

TOP