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3回戦は“命拾いした”帝京長岡、「倍」のプレッシング、奪い返しで市船に挑戦

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帝京長岡高(緑)は3回戦の「倍」のプレッシング、奪い返しで市立船橋高に挑戦する。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.3 選手権3回戦 神戸弘陵高 1-3 帝京長岡高 フクアリ]

 帝京長岡は“今年の色”を出し切って上へ――。3日、第99回全国高校サッカー選手権3回戦が行われ、帝京長岡高(新潟)が3-1で神戸弘陵高(兵庫)に逆転勝ち。3年連続の8強入りを決めた帝京長岡は、5日の準々決勝で市立船橋高(千葉)と戦う。

 前回大会3回戦の再戦。前回0-5のリベンジに燃える神戸弘陵が先制する。前半8分、敵陣でインターセプトすると、FW牧野隼也(3年)のスライディングパスを受けた10番FW徳弘匠(3年)が相手CBと右SBの間を狙ってドリブルし、そのまま左足シュートをゴール左隅に突き刺した。

 谷純一監督は「(帝京長岡は)技術的に高い選手が多いチームなので、まずは守備をしっかりして、背後の処理は弱いところがあるなと分析したので2トップで背後を取りながら中盤はMF松井治輝(3年、今治内定)中心に動かそうという狙いでした」と戦略について説明する。その策がハマり、得点シーンやチャンスにつなげた。

 だが、帝京長岡はすぐに追いつく。14分、右ロングスローの流れから連続シュート。神戸弘陵はPAの8、9人が身体を投げ出して相手の攻撃をブロックしたが、帝京長岡はMF上野一心(3年)の落としを受けたFW葛岡孝大(3年)が右足でゴールを破り、1-1とした。

 この日の帝京長岡は古沢徹監督が「今日は良いところ、どうやって探そうかなと」という内容。28分、38分にもカウンターから決定的なピンチを作られた。GK佐藤安悟(1年)のビッグセーブで失点を阻止し、相手の間を取りながらボールを繋いで攻める時間を増やしていたが、不満の40分間となった。

 それでも後半14分、帝京長岡が華麗なパスワークで勝ち越し点を奪う。敵陣右サイドでボールを奪い返すと、MF佐竹宏太(3年)からのパスを受けたMF川上航立主将(3年)がDF3人を引きつけてPAの葛岡へパス。これを葛岡が角度をつけて1タッチで落とすと、走り込んできたMF廣井蘭人(1年)が1タッチで左前方へはたく。最後は上野が右足ダイレクトでゴールへ流し込んだ。

 さらに16分、帝京長岡は葛岡の右CKを中央でフリーの川上が頭で合わせて3-1。連続得点で一気に試合の流れを傾けた。帝京長岡はピッチサイドの古沢監督も後押しする中、各選手が切り替え速く、身体を張って守備を続ける。その前に、苦戦した神戸弘陵だが、松井の展開やFW松野隼輝(3年)のロングスローなどから追撃ゴールを目指す。

 そして、30分には松井のループパスで徳弘が抜け出すが、シュートは帝京長岡GK佐藤がストップ。34分にも左ロングスロー後の混戦からFW西崎千翔(3年)が押し込もうとしたものの、GK佐藤が反応し、ポストを叩く。シュート数で12-8と上回った神戸弘陵だが、2点目を挙げることができず、今年も帝京長岡が勝利した。

 帝京長岡は去年までに作り上げてきた中央の崩しを発揮してゴールも決めたが、自分たちのやるべきことを出し切ることはできていない。実際、決定的なピンチの数も多かった。それだけに選手たちからは「命拾いした試合だった」(上野)「ボールを上手く動かせなかったですし、ハードワークで上回ることができていなかったと思います」(川上)と反省の弁。もっと自分たちのやるべきことをやらなければ、「(青森)山田倒して日本一」(上野)を果たすことはできないと考えている。

 目標を達成するためには、テクニカルで賢いスタイルによって全国4強入りした昨年からアップデートして来た部分を全力で表現すること。古沢監督は「去年のチームと比べられてここまで来ている子たちなので、どこかで『去年と違うぞ』と吹っ切れる部分が必要なのかなとつくづく感じますし、そこができない限りは次の準決勝には進めないと思うので、終わってから選手には『命拾いしたんだぞ』と話をさせてもらって、新しい“今年の選手たちの色”という部分が、もっともっと出ていかないとダメかなと思います」と“今年の選手たちの色”であるプレッシングと奪い返しの強度の部分をより求めていた。

 古沢監督はこの日発揮した“色”については「50点」と評価し、「この倍やらないと自分たちの良さは出てこない」。日本一を本気で目指す帝京長岡は流動的な崩しと今年の“色”を市立船橋との準々決勝で出し切って、まずは前回大会の成績に並ぶ。

(取材・文 吉田太郎)
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