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「感謝」込めた110分間。決勝で先発復帰の山梨学院CB板倉健太、“仲間のお陰”で掴んだ日本一と優秀選手

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先発復帰した決勝で身体を張った守りを見せた山梨学院高CB板倉健太。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.11 選手権決勝 山梨学院高 2-2(PK4-2)青森山田高 埼玉]

「仲間の存在って凄いなって、高校サッカーで分かりましたね。自分たちは団結力がどの高校よりも一番良いと思うので、多分、それは胸張って言えると思うんですけれども、決勝出させてもらって、今までの恩返しというか、感謝を思いながら戦いました」

 山梨学院高CB板倉健太(3年)は、青森山田高との決勝で負傷退場した初戦(対米子北高)以来となる先発出場。数日前までは右目上が腫れて目が塞がり、まともに見ることができない状況だったという。準決勝前にプレーの許可が下りたものの、復帰戦の舞台は決勝。それも相手は圧倒的な強さを見せつけていた青森山田だった。練習試合出場を1試合挟んでいたとは言え、「試合前、結構心配していて、付いて行けるかなと」という思いを持っていたのは普通の感覚だろう。

 だが、板倉は「少しは付いて行けていたと思います」というパフォーマンス。青森山田はサイドから次々とゴール前にボールを入れてきていたが、それを確実に跳ね返していく。中央でコンビを組んだCB一瀬大寿(3年)も「(板倉は)怪我でやっていなかったけれど、良かったと思います」と認める動き。危ないシーンは幾度もあったものの、決勝まで連れて来てくれた仲間への感謝の思いが、その身体を動かした。

 本人は「最後の方バテちゃって、ヘディングが多くなった時にジャンプができなくて負けたりしたところはあったので悔しいです」と納得していなかったが、それでも必死に身体を投げ出して110分間ゴールを守り続けた。そして、PK戦では2人目として成功。優勝に大きく貢献した。

 2回戦で好セーブを連発したGK熊倉匠主将(3年)は、「板倉が怪我をしてしまったが、『あいつのために勝とう』と全員が一致団結した」と語っている。熊倉は埼玉の強豪街クラブ、レジスタFC時代のチームメート。中学卒業時に進路を相談しあってともに山梨学院へ進学した仲だ。その親友をはじめ、仲間たちの頑張りがあったからこその決勝だった。

 板倉は「(日本一という)凄い経験できたと思うんですけれども、この経験も仲間のお陰だなと自分は思っていて、やっぱり2回戦から自分が出ていないんですけれども、素晴らしい試合を見せてくれて『感謝』しか無いですね」。仲間のお陰で立つことができた舞台。板倉は「感謝」の言葉を繰り返していた。

 板倉はわずか2試合のみの出場ながら、大会優秀選手に選出された。本人は「びっくりしましたね。全然思っても無かったですね」と驚き、「仲間にも言われましたね。『何で、2試合しか出ていないのに選ばれているの?』と」と苦笑する。だが、これも仲間たちのお陰。日本高校選抜候補合宿メンバーに選出されれば、有名選手たちの中で思い切り強みを出すつもりでいる。

 地元・埼玉スタジアム2002で勝ち取った選手権制覇について、改めて「最高ですね。夢見ていたんで。しかも自分の代で取ることができた」と喜んだ。怪我で半年間プレーできなかった時期もある。復帰後にポジションはボランチからCBに変わっていた。タイトルは板倉自身の努力で掴んだものであることも間違いない。同時に、チームメートや山梨で応援してくれていた仲間、家族、恩師への「感謝」の日本一。「3年生の中ではマジメだと思います」というDFは、大学でも大事な仲間たちと切磋琢磨し続ける。

(取材・文 吉田太郎)

(※山梨学院高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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