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「やってきたこと」を表現し、MVP級の活躍。“最高のスタートライン”に立った山梨学院GK熊倉匠

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山梨学院高GK熊倉匠主将は仲間の支えも力に日本一の守護神に。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.11 選手権決勝 山梨学院高 2-2(PK4-2)青森山田高 埼玉]

 文字通り、「守護神」の大活躍だった。初戦から毎試合のように好守を続け、6試合中3試合でPK戦勝利のヒーローに。山梨学院高GK熊倉匠主将(3年)は決勝も前後半に至近距離からのシュートを足で止め、青森山田高のクロス、ロングスローを安定したキャッチングで封じ続けた。

 難易度の高いもの、低いもの関わらず一つ一つのプレーを正確にやり続けたことが、シュート数7対24という難しい試合での勝因に。「今までの練習でやってきたことが出ただけだった」という熊倉だが、練習で取り組んできたことを大舞台でブレずに表現したことが思い描いた通りの結果を引き寄せた。

 長谷川大監督は決勝後、ゴールを決めた選手、ビッグセーブを連発した熊倉に対して「自分の力だけじゃないんじゃないか」と問いかけたという。熊倉も「自分も、自分の力だけじゃないと感じていました」。仲間たちやスタッフ、家族の思いが後押しとなり、紙一重のプレーを成功させることができた。

 決勝後、熊倉がチームメートに伝えたのは感謝の思い。「『ありがとう』の言葉を伝えました。今まで支えてくれたのは仲間だし、辛い時も、苦しい時も一緒にやってきたので、本当に素直に『ありがとう』、『やったぞ』というのは伝えました」。自分や、ピッチに立った選手たちの力だけじゃない。オール山梨学院で掴んだ日本一だった。

 OBから学んだこともある。大会前には14年度選手権時の守護神、古屋俊樹さんとともにトレーニング。「(成長のために海外挑戦するなど)サッカーに対してストイックな人とやっていたから、今大会自分がこんなに良い結果が出たと思います」。今冬の選手権でMVP級の活躍を見せ、知名度を大きく上げた守護神は、山梨学院の伝統を作ってきた人たち、自分の成長を後押ししてくれた人たちにも素直に感謝していた。

 一方で、最高の形で日本一に成し遂げた自分自身に対して「素直に自分をちょっと褒めてあげたい」と微笑む。地元の埼玉、FC東京U-15深川でプレーした東京を離れ、新たな土地で3年間続けてきた努力の成果だった。

 大会優秀選手に選出されるなど、高い評価を得た今大会。報道やSNSを通じて話題となり、自身のインスタグラムのフォロワーは大会前の700人ほどから2万人にまで増加した。選手権の活躍によって将来へ向けた“最高のスタートライン”に立つことができたと感じている。この緊張感を持ち続けて成長し、関東大学1部リーグの立正大での活躍、プロを目指す。

「そこ(“最高のスタートライン”)は自分もそう思っているので、やっぱり良い緊張感というか、みんなから注目されているんで調子に乗らずにもっともっと努力しなければいけないと今、改めて思っています。(目標の選手権日本一を達成し)あとは目標としているプロのところを視野に今、実際に見えてきているところだと思うので、そこを目指して頑張っていければと思っています。(現在は身長181cmの高さの部分を指摘されるが)『あと5cmあったらな』と言われてしまうのは、まだまだ自分の実力がないからなのかなと思うので、身長関係ないよねというプレーは今後もっともっと目指していかないといけないんじゃないかと思います」とこれからを見据えた。

 選手権決勝はFC東京U-15深川時代のチームメート、青森山田MF安斎颯馬(3年)との旧友対決がクローズアップされた。やはり複雑な思いもあったというが、「3年前に別れてこうして今また会えることは嬉しいことだし、戦えたことは本当に嬉しいと思っています」とコメント。互いに本気で力を出し合えたことを喜んだ。

 ともに大会優秀選手に選出され、日本高校選抜候補入りすることが濃厚。競争を勝ち抜けば、日本高校選抜のチームメートとして「NEXT GENERATION MATCH」や「静岡県ヤングサッカーフェスティバル」で一緒に戦うことができる。「楽しみですね。(高校選抜のレギュラーは)確定ではないので死ぬ気でやって、アイツともう一回一緒にやれれば良いんじゃないかなと思っています」と熊倉。来月も、2年後、3年後、その先も「あの熊倉がまた活躍している」と言われるように努力を重ね、常にチームを勝利へ導く守護神になる。

主将として山梨学院高を日本一へ導いた。(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 吉田太郎)

(※山梨学院高の協力により、リモート取材をさせて頂いています)
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