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「この景色を当たり前に」甲南大の初全国は“非関東勢”最高の8強終幕…大学初のJリーガーFW木村は課題も胸にJ2岡山へ

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FW木村太哉(4年=札幌大谷高)

 ベスト8のうち7チームを関東勢が占めた『#atarimae CUP』で、8強唯一の“非関東勢”は初出場の甲南大だった。元Jリーガー指揮官の下で変革の時を迎えている伝統校は、初の全国舞台で積み上げた経験と準々決勝で突きつけられた課題を胸に、さらなる飛躍につなげていく構えだ。

 九州王者の日本文理大、北海道第1代表の北海道教育大岩見沢校を連破し、関西勢以外で唯一の8強入りを果たした甲南大。しかし、準々決勝では関東の名門・早稲田大が目の前に立ちはだかった。序盤から激しいプレッシングに圧倒され、なかなかペースを掴めずにいると、前半19分にセットプレーから先制点を献上。その後は徐々に持ち直していったものの、後半にも2点を追加されて0-3の大敗に終わった。

 かつてヴィッセル神戸などで活躍した就任2年目の柳川雅樹監督は「率直に悔しいし、非常に残念な結果になってしまった」と振り返り、「あのプレスの中で正しい判断をしていく、質の高いパスをつないでいくというところが今後自分たちの課題になる」と力の差を指摘。「さらにステップアップし、来季以降全国で勝とうとするならこの中でもやっていかないといけない」と先を見据えた。

 一方、時間帯によってはビルドアップと背後狙いの使い分けが機能し、攻撃を完結させる場面も何度か見られた。大学トップレベルを相手にしても「後半には十分にボールを持てて、プレスをかいくぐれて、2度3度と押し込めた時間もあったので、2020シーズンに取り組んできたスタイルは通用した」(柳川監督)という収穫が得られた。

 そうした課題と収穫は、来季以降の後輩たちが活かしていく形となる。

 柳川監督は「自分たちと大学のトップ、そしてJリーグまでそんなに大きな差はないと常々言ってきた。それがちゃんと実証されてきている」と手応えを述べつつ、「ただここからもう一つ、二つ越えていこうとするならもっとやらないといけない」ときっぱり。「いまの選手たちがサッカーに全てをかけているとはまだまだ思っていない。24時間、365日、サッカーのためにやっていく。それをしないといけないと学べたのは大きかった」と選手たちにさらなる成長を求めた。

 また今大会限りで引退する4年生は、この経験を新たなステージにつなげていくつもりだ。

 同大初のプロ選手として岡山加入が決まっているFW木村太哉(4年=札幌大谷高)は試合後、「シュートまで持ち込んだり、ドリブルで抜き切るところまでできたが、シュートを打つ時に3人くらい飛び込んでくる印象があった。飛び込んできた選手に当たって決めさせてもらえないシーンがたくさんあったので、1点にかける執着心が早稲田さんはすごいなと感じた」と準々決勝の戦いを総括した。

 その上で「大学で結果を残したかったので『良い経験』というだけで終わらせられない」と沈痛な表情を見せつつも、「僕自身もああやってシュートブロックされている中でもシュートコースはあったと思う。そこできちんと見極めて振り抜くところ、冷静にプレーするところが課題。大舞台で経験ができたのは次の段階に向けて良い経験にはなったと思う」とこの悔しさをプロで晴らす構えを見せた。

 また大会を通じて粘り強い守備を見せていたDF小田健聖(4年=東福岡高)は卒業後、金融機関に就職する。第一線でのサッカー人生最後の試合では高校時代の同級生であるMF鍬先祐弥(4年=東福岡高/長崎内定)とも対峙し、さまざまな形で思い出に残る一戦となった。

「僕たちが入ったときは1部と2部を行き来するレベル感で、1部で勝てないから引いたサッカーをしていた。それを監督が変えてくれた。ただ、この景色を当たり前にしないとこういう大会では勝てないと感じたので、後輩たちに期待したい」。チームの未来に希望を語った小田は「サッカーを通じて人とのつながりを感じることができたし、人とのつながりが非常に大事だと感じたから金融系を志望していた。社会人としてもそれを活かしていけたら」と力を込めた。

(取材・文 竹内達也)
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