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48日間で14試合消化…V逸も法政大はコロナ禍のクラスター経験“当たり前に感謝”から学び、急成長

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[1.23 #atarimaeniCUP決勝 法政大0-1東海大 味フィ西]

 戦前の予想通り、法政大(関東7)が序盤からボールを保持してチャンスを作り続けた。敵将の今川正浩監督も「予想を上回るほどだった」と話したほど。しかしスコアレスで折り返した後半に相手の反撃に遭うと、セットプレーが続いた時間帯の後半27分、CKの流れから先制点を決められてしまった。

 長山一也監督は「負けるとすればセットプレーを決められて負けると思っていた」とポツリ。ただ「準備をしていたそれ以上のものがあった」と東海大(関東9)を称えると、「大学サッカーの質、クオリティはゴール前まで運んでいくことは見せられた。法政のサッカーは、結果が出なかったけど、見せれたかなと思います」とイレブンの戦いぶりを称えた。

 コロナ禍による異例のシーズン。試練は法大サッカー部を直撃した。昨年10月末に多摩キャンパス(町田市)に隣接するサッカー部合宿所で生活する学生を含む20人が新型コロナウイルスに感染。クラスターと認定を受けたため、サッカー部は長期の活動休止を余儀なくされた。

 当たり前だったサッカーを奪われた日々。新型コロナウイルスによる影響を現実として再認識する出来事になった。そんな中で選手たちは主将DF関口正大(4年=新潟明訓高/甲府内定)を中心に、「感謝して今やれることをやり続けよう」と全員で声をかけあって、意思統一を図ってきたという。

 すると活動休止期間を終えた法大の選手たちは、まるで水を得た魚のようにピッチで躍動する。活動復帰初戦となったのが12月6日の中央大戦。その試合に4-3で逆転勝ちすると、12月だけで9試合を消化し、6勝2分1敗の好成績を残した。そして全国大会の出場権も確保し、最終的にはリーグ4位と驚異の巻き返しをみせて戦いを終えた。

 ハードな日程は年明けも続き、12月31日に関東リーグの最終戦を行ったあと、年明け1月6日に初戦を迎えた#atarimaeniCUPに突入。中1日の連戦を3試合行い、選手たちにはようやく一息つくことができるオフが与えられた。

 #atarimaeniCUPの準決勝、決勝を戦ったことで、48日間で14試合を消化したことになった。決勝は惜しくも敗れたが、その間の成績は10勝2分2敗。長山監督も「サッカーができることが当たり前じゃないことを、クラスターが起きたことで勉強させていただいた。人生において重要な時間を過ごしたことが、クラスター明けのチームの成長につながった。2敗は大したもの。復帰してからはどの試合でも内容でも圧倒していたので、学生を褒めたいと思います」と納得の表情で話した。

 同期のFW上田綺世(鹿島)がいた今年の4年生は、Jクラブに8人が内定。DF森岡陸(4年=磐田U-18/磐田内定)やDF高木友也(4年=法政二高/横浜FC内定)、MF長谷川元希(4年=大宮ユース/甲府内定)は1年生のころから試合に出場し、古豪復活の原動力になった。事実として、この世代が入学してきた17年から法大は4年連続で全国大会の決勝を経験。総理大臣杯と大学選手権(インカレ)のそれぞれで日本一の座についた。

 長山監督も「法政が強くなっていく段階で、下級生の時からいい形で戦力になってくれた」と4年生世代への感謝を語る。しかし今季急成長をみせたMF松井蓮之(3年=矢板中央高)やMF田部井涼(3年=前橋育英高)、FW飯島陸(3年=前橋育英高)といったタレントが残る来季も楽しみが広がる。「また次の代の特長を生かしながらチーム作りをしていきたい」。負けてなお強しの印象を残した法大が、現大学サッカー界で1、2を争うチームであることに間違いはない。「大学サッカーのすばらしさをみせていきたい」。法大は長山監督が常々言うように、これからも法大は大学サッカーの価値を示すチームのひとつとして戦って行く。

(取材・文 児玉幸洋)
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