beacon

“物足りない”内容も、「見ていて面白いサッカー」を展開した作陽が快勝で新人戦優勝に王手:岡山

このエントリーをはてなブックマークに追加

作陽高MF西村颯人は力強い突破で、サイドから見せ場を作った

[2.6 岡山県高校新人大会準決勝 作陽高 3-0 岡山龍谷高]

 第13回岡山県高校サッカー新人大会が6日に行われ、作陽高岡山龍谷高が対戦。FW池田陽多(2年)の先制点を皮切りに3点を奪った作陽が3-0で勝利し、決勝へと駒を進めた。

 今年の作陽が目指すスタイルは、「見ていて面白いサッカー」(DF中井陸人、2年)。フィジカルに優れたアタッカー陣を活かすべく縦に速いスタイルを志向した昨年とは違い、小柄な技巧派が多い今年はテンポよくボールを動かしながら、3人目の飛び出しや中央とサイドを上手く使い分けた作陽らしいテクニカルなスタイルが特徴だ。

 岡山龍谷と激突したこの日の試合でも、序盤から原田涼汰(2年)と山本修也(2年)のCBコンビにMF西田達哉(2年)を交えたビルドアップで試合の主導権を掌握。相手が食いつき、空いたサイドのスペースに展開を入れると右のMF西村颯人(2年)が力強い突破を繰り返した。

 前半5分には、MF井芹凌成(2年)のサイドチェンジから、西村が縦への突破を仕掛けてCKを獲得。山本がゴール前に入れたクロスを池田が頭で合わせたが、惜しくもサイドネットに終わった。13分には西村の右クロスを池田がボレーで合わせたが、枠を捕えることができない。以降は相手を押し込みながらも、シュートまで持ち込む場面が少なく、酒井貴政監督は「もっと思い切ってやって欲しかった。動きが硬かった」と振り返った。

 均衡が崩れたのは30分。左サイドで奪ったFKを西田がゴール前に入れると、中央の池田がドンピシャのヘッドで合わせ、先制した。後半10分には、中央からのパスを左で受けた中井が「狙い通り」のクロスをゴール前へ。ファーサイドから中央に飛び込んだ西村がダイレクトで合わせて、突き放した。

 苦しい展開が続いた岡山龍谷もキープ力に長けたMF光成陸翔(2年)のキープ力や、DF白籏永輝也(2年)の攻撃参加から反撃を狙ったが、フィニッシュまで持ち込めない。対して作陽は試合終了間際の35+1分にもMF窪田隆志(2年)とFW大東凌空(2年)の途中出場コンビがダメ押し点を決め、3-0で終えた。

 結果だけ見れば快勝だが、中井は「崩してからの決定力がまだまだ足りない。前半のうちに試合を決めなければいけなかった」とコメント。酒井監督も「セットプレーから点が獲れ、試合の運び方は安心して見れたけど、これからもっと向上していくという意味では物足りなさが残った」と続けた。

 3年ぶりの出場となった昨年度の選手権は、2点ビハインドを追いつき、星稜高にPK戦勝ち。続く2回戦では、先制しながら東福岡高に逆転負けを許したが、「練習でやってきたことや自分たちの良さを出せれば、一人ひとりの能力が上回る相手にも勝つ可能性を上げる経験ができたのは大きい」(酒井監督)。敗戦後は選手権で学んだプレスの速さや球際の強さなど全国基準を意識してトレーニングに励んでいるという。

 また、多くの人に注目された経験も選手のプラスに働いている。「あの舞台を経験できたのが大きい。雰囲気は立たないと分からない。メディアの方に取り上げてもらう機会が増え、色んな人から連絡を貰ったりするのは選手権でないとできない。注目されていることと色んな人から応援されているんだと実感する場だと感じた。それを機に選手が自覚を持った行動をするようになる。人として成長する大きなファクターだと思いました」。酒井監督の言葉通り、注目度に恥じない言動を意識し始めたのは大きな収穫だ。この一年、作陽らしい見る人が楽しいスタイルと心を更に育み、目標とする日本一を掴み取る。

(取材・文 森田将義)

TOP