beacon

[MOM3396]神戸弘陵DF鳥羽悠生(2年)_公式戦初出場、「チームのために」の想いと行動が結実

このエントリーをはてなブックマークに追加

神戸弘陵高DF鳥羽悠生が優勝トロフィーを掲げる

[2.7 兵庫県高校新人大会決勝 神戸弘陵高 1-0 滝川二高]

 決勝戦で初めて試合に出場したDF鳥羽悠生(2年)。今大会中に成長し、その成長は神戸弘陵高の連覇にも繋がった。

 鳥羽は、小学生の頃から神戸弘陵と連携しているエベイユFCで育ち、中学生の時にはキャプテンも任された選手。実力もあり、同じスタイルのサッカーを積み重ねてきていただけに、神戸弘陵に入学してからも十分戦えるだろうという自負があった。しかし、実際には思い描いていたような機会を勝ち取ることができず、Bチームにいた昨年は、自負があったからこそ現実を受け止められず、その気持ちは次第に“服を汚したくない”ような姿勢に表れるようになってしまった。

 その姿勢が変わったのは、決勝のわずか1日前、準決勝だった。

 神戸弘陵の初戦となった2回戦ではかろうじてベンチ入りしたものの、出場することなく試合を終え、3回戦と準々決勝ではベンチに入ることさえできなかった。再びベンチに入ることができた準決勝でチームは今大会初めて失点し、同点に追いつくまでの30分は苦しい展開を強いられていた。

 そこで初めて「チームのために自分も何かしたい」と素直に思い、試合に出ている選手たちの背中を押せるよう声をかけ続けた。準決勝でも出場はなかったものの、決勝になってもその姿勢は変わらず、これまで大きな声を出すようなタイプではなかった鳥羽はピッチの選手たちを鼓舞し続けた。

 鳥羽の精神面の成長を待っていたかのように、出場機会は巡ってくる。後半15分、スタートから出場していたDF吉村瑠晟(2年)がアクシデントで交代せざるを得ない状況となり、鳥羽が急遽呼ばれた。

 Aチームでの公式戦は初出場だったが、プライドのせいで影を潜めていた本来持っている力を存分に発揮し、決して止むなく交代した選手だとは思わせることがない、献身的に戦う姿を示して見せた。さらに、2年になってからはミスを恐れてキッカーになることを嫌がるようになっていたが、試合終了間際に「任せてくれた信頼に応えたい」という気持ちで蹴ったFKは、決勝点に繋がった。

 今大会でキッカーを務めていたFW田中祉同(2年)は、「最初は自分が蹴ろうと思っていたけれど、彼の顔つきを見るとやってくれそうな気がしたので任せた。本当にやってくれたので有り難い」と鳥羽の活躍に感謝し、表彰式後に新チームとして初めてトロフィーを掲げる役目も、皆が喜んで鳥羽に託した。

「チームのために」という想いと行動は、ひいては自分のためにもなるという実感を掴んだ鳥羽。これまで取り違えていたプライドは、もう無い。これからは、新たに兵庫県王者の一員としてのプライドを持ち、「チームのために泥くさく戦っていく」ことを誓った。

(取材・文 前田カオリ)

TOP