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「ありがとう」の言葉で踏み出した新たな一歩。青森山田MF安斎は高校選抜で「一生懸命やっている姿を」

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MF安斎颯馬(青森山田高3年)は日本高校選抜を勝たせるプレーを誓う。(写真協力=高校サッカー年鑑)

 涙で終わった選手権決勝。だが、MF安斎颯馬(青森山田高3年、早稲田大進学予定)は、「ありがとう」の言葉に後押しされて新たな一歩を踏み出している。

 第99回全国高校サッカー選手権の優秀選手から構成された日本高校サッカー選抜が、「NEXT GENERATION MATCH」(2月20日、埼玉)で川崎フロンターレU-18と対戦する。1月の日本高校選抜選考合宿に参加した安斎は、右SB内田陽介(3年、明治大進学予定)ら青森山田高のチームメートとともに先頭に立ってトレーニングメニューに臨んでいた。

 他校の選手たちも、青森山田の選手たちの意識の高さや姿勢の差について口にしていたが、その中で安斎は、日本高校選抜の中心選手と言えるようなプレーとリーダーシップ。「個人としても青森山田を背負っている。自分たちが引っ張っていく立場だと思っているので意識しています」。実戦でも攻守に渡ってハードワーク。FWの位置から自陣PA近くまで戻って守備をし、攻撃に移るとまた最前線まで飛び出してゴールを奪い取っていた。

 安斎は矢板中央高との選手権準決勝でハットトリックを達成。山梨学院高との決勝でも後半に勝ち越しゴールを決め、計5ゴールで単独得点王に輝いた。だが、決勝のPK戦で青森山田2人目のキッカーを務めた安斎は、FC東京U-15深川時代のチームメートである山梨学院GK熊倉匠(3年、立正大進学予定)にシュートを止められてしまう。チームは2年連続で準優勝。安斎の涙は表彰式が終わっても止まらず、後輩のMF松木玖生(2年)に支えられる形でロッカールームへと戻っていった。

 PKを失敗した後は何も考えられなかったという。チームメート、怪我からの復帰を支えてくれたスタッフ、家族、そして青森で応援してくれる人々……彼らに選手権優勝を届けることに全力を注いできた。だが、自身のPK失敗によって、遠のいた日本一。心の中は、「申し訳ない気持ち」だけになっていた。

 それでも、応援してくれた人たちの感謝の言葉が安斎に前を向かせてくれたのだという。「次の日に青森に帰った時にみんなに『おめでとう』だったり、『ありがとう』という言葉を掛けてもらって、本当に多くの方々に支えられているんだなと実感して、それと同時に自分も悔しいというよりも、『多くの応援をありがとう』という気持ちに切り替えることができたかなと思います」。準優勝で再確認した課題をしっかりと受け止めた上で、安斎は新たな一歩を踏み出した。

 日本高校選抜では何より、一生懸命プレーする姿を応援してくれている人たちに見せる構えだ。「自分自身、青森山田としての最後の試合がああいう形で終わってしまったので、青森山田の選手としては残念な形で終わってしまったんですけれども、高校選抜に選んでもらって、『安斎颯馬』としてはまだ試合をすることができるので、そういった面では一生懸命やっている姿をまた多くの人にまた見せられたら良いなと思っています」と誓った。
 
 日本高校選抜では、選手権決勝で実現できなかった「チームを勝たせる」ことにこだわっていく。「山梨学院との決勝が終わってから、自分がチームを勝たせられなかった責任感というのは一層強くなりました。今後は攻撃だけでなく、守備でも自分が勝たせる存在になっていかないといけないとより一層強く思ったので、高校選抜の中でも自分がもちろんゴールでチームを勝たせることもそうですし、ゴールだけじゃなくて前からボールを奪うことができれば楽なので、そういう奪うところだったり、ピンチだったら自陣まで戻ってチームを引っ張っていくということは常に意識しながらやっています」。川崎F U-18戦の後には「第35回デンソーカップチャレンジサッカー熊谷大会」で大学生と対戦。そこでも、一生懸命に走り回り、攻守両面でチームを勝たせるようなプレーをする。

 選手権決勝で親友対決が注目された熊倉も、日本高校選抜ではチームメート。「(紅白戦では)お互いがゴールを奪う・守る関係でやりたいなという話をしていたんですよ。ただ、一緒のチームであるほど心強い存在なので、味方でも本当にありがたいですし、敵だったら燃えますし、お互いが刺激しあえる関係だと思っています」。ともにリーダーとして選抜チームを引っ張っていく。

 大学での日本一、そして4年後のプロ入りへ向けて選手権得点王は新たなスタートを切った。「4年間プロを目指してもう一度頑張っていく」「大学入ってからもう一度チームとして日本一を獲りたい」という安斎が、日本高校選抜の活動を通して成長を続け、その目標に近づく。

(取材協力=ニューバランス、高校サッカー年鑑)
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