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VAR再導入へ審判員も急ピッチで調整中「非常にハードなスケジュール」制度理解求める意見も

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扇谷健司JFA審判副委員長

 J1リーグでは今季、コロナ禍を受けて中断されていたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)制度が再導入される。開幕を10日後に控えた16日、日本サッカー協会(JFA)が今季のレフェリングスタンダード(判定基準)説明会をオンラインで実施。シミュレーションの現状や国内での運用法について報道陣に説明した。

 ビデオ判定に携わる審判員を配置するVAR制度は当初、昨季のJ1リーグから初めてフルシーズンで導入される予定だった。ところが開幕節9試合で実際に運用された後、新型コロナウイルスの影響で公式戦が一斉に中断。再開後は過密スケジュールが組まれたため、審判員の人員不足が懸念され、VARの運用も一時中断することになった。

 すなわち、今季が本格的な「VAR元年」。さらにはコロナ禍の影響が依然として続いている中での船出となる。

 VARの担当審判員が実践トレーニングをスタートしたのは今月上旬。昨季のリーグ戦が12月下旬まで続いたことに加え、年初に政府から緊急事態宣言が発令されたことにより、スケジュールが後ろ倒しとなったためだ。開幕1週間前の今週末にも練習会は組まれており、いままさに急ピッチで調整が進められている状況と言える。

 そうした「非常にハードなスケジュール」(扇谷健司審判副委員長)に加えて、運用面でのコロナ対策も急務となっている。ピッチに立って判定を下す他の審判員に比べ、室内で映像を見守るVARは感染リスクも高いため、手指消毒だけでなく、マスク・フェイスシールドの着用や、こまめな換気、衝立の設置など、さまざまな配慮をしながら判定に携わっていく形となりそうだ。

 この日、オンラインでの説明会に出席した佐藤隆治主審は「選手も疲労困憊のピークにある中でトレーニングを積んでいるのと同様、レフェリーも住んでいる場所で限られた環境の中、コロナ対策をしながらトレーニングしている」と現状を説明。その上で「昨年はコロナの影響でVARのトレーニングや研修を積むことができず、今年スタートするということで緊張感を持ってやっている」と語った。

 加えて佐藤主審は、VARが「万能ではない」という見解を強調した。

「VARを使うとなんでも解決するという期待をどうしても持たれるかもしれないが、例えて言うなら明日からワクチンの接種が始まる。コロナが世界中に広がっている中、終息に向ける手立てとしてものすごく期待されている。ただご存知のように万能ではない、副反応が存在していて、一定数そういった反応が出るとされている。これはVARも同じだと思います」。

「より良いサッカーをしていく中で、これだけスピードが速くなってきた現代のサッカーに対応する中で、ハンドという非常に難しい競技規則の反則を的確に見極めていくためにはVARは効果のあるツールだと思っている。ただ、そこには“副反応”も存在する。その副反応とは、単にレフェリーによるVARの使い方だけでない。選手やチーム、サポーターをはじめサッカーに関わる方がVARをより理解していただくことで、副反応を減らせると思っています」。

 実際、VARの導入が続いている欧州各国リーグでは運用法や判定結果をめぐって、依然として多くの論争が続いている。佐藤主審はそうした現状も踏まえ、まずは目の前の判定に真摯に向き合っていく姿勢を見せつつ、VAR制度全体への理解を求めた。

「レフェリー側はプロトコルを守って、限りなく少ない介入で多くの効果が得られるようにというフィロソフィーを大事にしつつ、世界最先端を走っているプレミアリーグでも僕らの教材になるようなシーンがたくさん出ている状況なので、いろんな状況の中で自分たちが一つ一つ丁寧にやっていくこと。ツールを扱うのも人間。通常4人の審判団が(VARとAVARを加えて)6人でやるということで、人が増えれば、コミュニケーションをどうやってまとめていくかという難しさもある。そういう中でJFA、Jリーグ、審判員が一致団結して同じ方向を向いてやっている」。

「なので、ぜひメディアの方にはVARのことを理解していただくと同時に、多くの方に向けてそれを発信していただくこと、そして僕らが現場でパフォーマンスとして発揮していくことで、同じ方向に進んでいって、日本のサッカーが文化として根付いて、Jリーグが世界に誇れるJリーグになっていくことにつながると思う。われわれ審判員も緊張感を持ってやっていきます」。

■ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)

 ピッチ外でモニターを見ながら試合映像を追い、規則に従い主審に助言を行う審判のこと。①得点②PK判定③一発退場④人違いの4事象に対し、「はっきりとした明白な誤り」「重大な見逃し」があった時のみ介入することができる。助言を受けた主審はピッチ脇に設置されたモニターで当該場面を再確認するオンフィールド・レビュー、あるいは助言で事実確認をするVARオンリーレビューを行い、判定を修正することができる。

 昨季のJ1リーグ開幕節では以下の3事例で判定が覆った。

①2月21日 湘南対浦和(PKに関わる判定)
 後半25分、ドリブル突破をしかけたMF石原広教(湘南)をDF鈴木大輔(浦和)がゴールライン際で止めるも、鈴木はピッチ外に出そうなボールを、手でピッチ内に掻き入れるような形で処理。主審はファウルを取らずに試合を流したが、プレーが切れた際にVARの助言を聞き、オン・フィールド・レビューを経て、湘南にPKを与えた。

②2月22日 川崎F対鳥栖(得点に関わる判定)
 後半4分、MF家長昭博(川崎F)のシュートがDF宮大樹(鳥栖)にブロックされるも、このボールにFWレアンドロ・ダミアン(川崎F)が反応し、右足でゴールに押し込んだ。担当副審は当初、オフサイドフラッグを上げなかったが、ビデオ確認の末に家長のシュート時点でL・ダミアンがオフサイドポジションにいたことが分かり、VARオンリーレビューでゴールが取り消された。

③2月23日 横浜FM対G大阪(得点に関わる判定)
 前半34分、GK東口順昭(G大阪)のロングキックが左サイド裏に通り、MF倉田秋が突破。折り返しを受けたMF矢島慎也がゴールに流し込んだが、担当副審はオフサイドフラッグを上げた。ビデオを確認すると、G大阪の複数選手がオフサイドポジションにいたが、抜け出した倉田はオンサイド。VARオンリーレビューでゴールが認められた。

(取材・文 竹内達也)
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