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新生・国見、九州を制す。丸刈り廃止、スマホもOK、木藤監督の真意とは?

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OBで元Jリーガーでもある国見高木藤健太監督。長崎県島原市出身の指揮官は島原市開催の九州新人大会で初の九州タイトル獲得

「国見復活と言えるのは、全国に帰ってからですよ」

 伝統校を引き継ぎ、九州高校サッカー新人大会を制した国見高木藤健太監督はそう言ってニコリと笑った。

 2月20日から22日にかけて長崎県島原市で行われた第42回九州高校U-17サッカー大会(九州高校サッカー新人大会)は、国見の14年ぶりの優勝という形で幕を閉じた。その全盛期を知るOBであり、モンテディオ山形などで活躍した元Jリーガーでもある木藤監督は監督就任3年目(赴任4年目)にして、初めて県外公式大会のタイトルを獲得することとなった。

 強い国見が帰ってきたと思われる結果だが、ピッチ上で展開されたサッカースタイルにしても、あるいはチーム全体の雰囲気としても、木藤監督在籍当時の国見が帰ってきたという印象はあまりない。何せ、選手たちの髪が長いのだ。新チームから、伝統だった丸刈り頭のルールは廃止となった。

 背景にあるのは、木藤監督が赴任当初から覚えていたという違和感だ。全国大会から遠ざかっている状況にもかかわらず、「変なプライドだけがあった」という状態で、「悪い伝統だけが残っていた」と言い切る。形だけ昔の強かった時代を踏襲していると感じていた指揮官は、実は一年前にも丸刈り頭の廃止を選手たちに提案している。このときは他ならぬ選手たちから異論が出て流れたのだが、新チーム発足に当たって再提案。ルール変更に踏み切った。

 それに先立つ夏には、スマホ禁止のルールも廃止するなど、徐々に緩和する流れの中での決断である。異論もあったようだが、「ダメ・ダメ・ダメと言うのは簡単。でも、いまの子どもたちと昔の子どもたちでは育ってきた環境も違うし、これからの時代に向けて子どもたちをどう伸ばすかを考えないといけない」と決断した。

 別に野放図にしようということではない。「タフに鍛えるのは大切なことですし、高校サッカーが持つ教育的な面は大事にしたい」と思うからこその決断だ。「いまの時代で、スマホを使わずに卒業していったら、その後にどうなるか。高校にいる間は持たせないことで問題が起きないかもしれないが、卒業後から急に使い始めたらどうでしょう。持たせないことではなく、モラルやマナーを教えていくことが大事だと思います」と強調する。この「エラーをさせてあげないと、修正もできない」というのは、木藤監督の指導のベースにある考え方だ。

 ピッチ上にもそうした考え方を反映させてきた。トレーニングでは後方から繋いでいくサッカーを志向しつつ、「世界のサッカーを観ていても、スタイルを貫くだけではなく、相手に対応していくことも大事。選手たちが繋げないと思っているのに、指導者が『いいから繋げ』と言うのは違う」と、柔軟に戦うようになり、今大会もそうした成果は観られた。

 悪い伝統については否定的な一方で、ポジティブな意味での伝統は大切にしてもいる。神村学園高に後半終了間際の決勝点で競り勝った準決勝後、粘り強い体を張った守りについては「食らい付いていく国見らしさが出てきた」と破顔したように、伝統である個々のタフネスや勝利へ向かって団結して戦うスピリットの部分は継承していく考えだ。

 恩師であり、現在は県内のライバル校・長崎総合科学大附高を率いる小嶺忠敏監督への思いも、選手時代とは少し変わったと言う。

「指導者には情熱的な部分と理論的な部分の両方が必要で、小嶺先生はそのどちらも持っている方。言葉に力があって、カリスマ性があった。先生が『今日は負けないよ』と言えば負けない気がしてきたし、『大丈夫だ』と言えば、大丈夫な気がした」

 その偉大な恩師と競り合いながら、でも少し違った方法論で新しい時代を作ろうと挑む。木藤監督は「僕は何を言われても気にしないので」と言って笑いつつ、九州を制して出場権を得たサニックス杯(3月、福岡)について問われれば、「これで全国の強豪と対戦できるので、また子どもたちの目線を上げてあげられる」と目を輝かせる。どん欲な指導者に率いられた新時代の国見の挑戦が始まっている。

優勝を喜ぶ国見高イレブン

(取材・文 川端暁彦)

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