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激闘続いた中国新人は高川学園が“連覇”。個、チームが大きく成長するきっかけに

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激闘の続いた中国高校新人大会は高川学園高が優勝

[3.15 中国高校新人大会決勝 高川学園高 1-1(PK4-3)瀬戸内高]

 高川学園が“中国連覇”! 第13回中国高校サッカー新人大会決勝が15日に行われ、高川学園高(山口)と瀬戸内高(広島)が激突。1-1で突入したPK戦を4-3で制した高川学園が、19年大会(20年大会は中止)に続き、2度目の優勝を飾った。

「2年前の先輩方が優勝旗を持って帰ってきていて、今年も持って帰るということをチームとして目標に掲げていたので嬉しいです」。優勝を決めた瞬間、ピッチの11人、サブ組の選手含めて歓喜を爆発させた高川学園。左SB奥野奨太主将(2年)は“連覇”の喜びを素直に口にしていた。

 特別なゲームができた訳ではない。課題も多く残るファイナルだった。それでも、気持ちと気持ちのぶつかり合いで負けなかった。立ち上がり4分、ロングパスで高川学園DFの前に出た瀬戸内の快足左SB伯野航太(2年)がそのまま右足でゴールを破る。

 畳み掛ける瀬戸内は、8分にも右クロスからFW梁俊虎主将(2年)が決定的な右足シュートを放つ。だが、高川学園は注目の187cmGK徳若碧都(2年)がファインセーブ。9分にもCKから瀬戸内CB平山歩夢(2年)にヘディングシュートを許したが、わずかに枠を外れ、連続失点を免れた。

 高川学園もボールを素早く動かしながら反撃。今大会、そのスキルの高さを印象づけたエースMF林晴己(2年)や奥野のクロスがゴール前に入る。そして24分、林が右サイドでFKを獲得。これをMF北健志郎(2年)が左足で蹴り込むと、ニアで合わせたFW中山桂吾(2年)の今大会4得点目で同点に追いついた。

 瀬戸内はボールコントロール、フィードに余裕のあるCB有吉勇人(2年)や今大会好パフォーマンスを続けたMF江川楓(1年)とキーマンのMF長谷川大貴(2年)、MF正法地大(2年)の中盤3人を軸にボールを前進させ、10番FW佐野竜眞(2年)や伯野のスピードを活かした攻撃やセットプレーから決定機。後半も伯野や長谷川が抜け出してシュートまで持ち込む。

 一方でこの日は意図とは異なるロングボールが増えた瀬戸内に対し、高川学園もスピード感の速い中で思うようなポジショニングや繋ぎができなかった。だが、「気持ちは高川の長所」(奥野)という高川学園は、好守を見せた右SB岡田大生(2年)や奥野、CB加藤寛人(2年)、CB田島黎門(2年)、MF桑原豪(2年)、“元気印”FW小澤颯太(2年)らのハードワークで相手を食い止めて流れを掴む。

 そして、良い形でサイドまでボールを動かすと、奥野の左アーリークロスから中山が決定的なヘッドを放ったほか、林がMF西澤和哉(2年)とのワンツーからシュートを打ち込んだ。また、後半10分には準決勝の立正大淞南高(島根)戦でハットトリックを達成した“切り札”FW梅田彪翔(1年)を送り出し、勝負を決めに行く。

 互いの鋭いプレス、守備強度が目立つ展開の中、瀬戸内はパスワークから交代出場MF越田陽輝(2年)が決定機を迎えたほか、佐野とのワンツーで右サイドを打開した梁が左足を振り抜く。特に、体力的に苦しい時間帯でも仕掛けを連発する佐野が怖い存在となっていた。

 一方の高川学園も北のアイディアあるパスや直接FKなどで相手ゴールを脅かす。また、林を前線へ上げてゴールをこじ開けに行ったが、瀬戸内GK大木泰季(2年)の好守にあうなど勝ち越し点を奪うことができない。瀬戸内も延長戦で越田の突破から佐野がゴールへ迫り、また佐野のクロスからDF岩崎幸大(1年)が決定的なヘッドを放つも、枠を外れてPK戦決着となった。

 そのPK戦は先攻・瀬戸内1人目のシュートが枠上へ。一方の高川学園は1人目の奥野から林、中山、北と4人が連続で成功する。そして、瀬戸内5人目のシュートが枠を外れた瞬間、高川学園の優勝が決まった。

 個性を発揮する選手が多かった一方、上位校の戦う力、走る力が光り、激闘の続いた中国新人大会は高川学園が制した。チームとしての強さに加え、林や北、徳若、中山ら個人の活躍も目立った高川学園だが、決勝は全国レベルの対戦相手によるプレッシングの回避の仕方や、ラストパスの精度、相手のロングボールへの対応など課題も出る試合に。江本孝監督は選手たちのメンタリティを評価した上で、「もっとサッカーをしたかった。帰って練習します」と語っていた。

 そして、「4試合プラス最後延長までできたのはかなり成長できるポイントかなと思うので、この勝ちに一喜一憂せずに淡々とやっていきたい」。この日は練習試合で連敗していたという瀬戸内を勝利への執念でわずかに上回ったが、目標達成のために進化を止めるつもりはない。

 奥野は今年の目標について、「新人戦、インターハイ、選手権、リーグ戦の4冠」と明かす。まずは県新人戦を制し、中国タイトルも獲得。昌平高(埼玉)にPK戦で敗れた全国でのリベンジのためにも課題を改善し、特長に磨きをかける。 

(取材・文 吉田太郎)

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