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1年生チームの“サブ”から代表候補へ。活動自粛期間に「一皮も二皮も剥けて」変化した桐光学園MF山市秀翔

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新生・桐光学園高のチームリーダー、MF山市秀翔

[3.20 イギョラ杯予選リーグ 習志野高 1-1 桐光学園高]

 思うようにサッカーができなかった昨年。その間に自分を見つめ直し、大きく成長したMFが、新生・桐光学園高(神奈川)の主将を務める。

 MF山市秀翔(新3年=東急Sレイエス出身)は昨年、U-16日本代表候補合宿に初選出された左利きのプレーメーカー。1年生日本一に輝いた19年全国ルーキーリーグ交流大会で途中出場の方が多かった山市は昨年、新型コロナウイルスの活動再開後に猛アピールし、Aチームのスタメン、代表候補入りまで勝ち取った。

「自主トレになった時に『自分は成長できたかな』と思っていて、サッカーに一番向き合えたというか、サッカーに一番集中できた期間でした。一皮も二皮も剥けてチームに合流できて、自分の良さを最大限発揮できた」

 元々はテクニカルなレフティー。1年時の関東ルーキーリーグではボランチの位置から正確なパスを配球し続けて、アシスト王に輝いている。だが、ポジション争いは1年時のインターハイでレギュラーとして日本一に貢献し、優秀選手にも選出されているMF岩根裕哉(新3年)やハードワークと攻撃力も兼ね備えたMF阿部慈(新3年)らがライバル。山市は「上手いだけではダメ」だということを認識し、その課題に目を向けて取り組んだ。

「上手い選手はどこのチームにもいるので、上手いだけじゃなくて、一番走れる選手に。チームのために一番犠牲心を持って走れるとか、ボールを追いかけられる選手は少ないと思うので、それを伸ばせた一年でした」。“巧いボランチ”の印象だった山市は、ピッチの至るところに現われてボールを奪い、セカンドボールを回収し、声でチームを鼓舞し、左足キックで決定的な仕事もする選手へ変化。チームからの信頼を勝ち取り、名門校の中でも目立つ存在となった。そして、主将、中心選手として新シーズンを迎えている。

 今年3試合目となったイギョラカップ初戦は習志野高(千葉)と引き分け。今年の桐光学園はボールを動かすことを強みとしているが、ビルドアップでなかなか数的優位を作ることができず、後ろに重い戦いになってしまった。その中で2シャドーの一角を務めた山市は運動量を増やしてボールに絡み、シュート、ラストパスを狙っていたが、鈴木勝大監督の目には“良いことをしようとしている”ように映ったようだ。

 多くの関係者に評価されたのは、守備意識を高く持ち、献身的なプレーを続けたところ。本人は昨年同様ハードワークした上に得点力を加えたい考えだが、この日はやや試合を決めることを意識しすぎたのかもしれない。それだけに、指揮官はまずハードワークするところを要求。山市はチームから求められるものを最大限表現しながら、「上手いだけじゃない」を追求していく。

「高校を卒業してプロに行って活躍するというところを個人としては目標として、チームとしてはK1(神奈川県1部)リーグ全勝とインターハイ優勝、一番は第100回大会の選手権の優勝を目指している。(桐光学園が)選手権は全国の1位を取っていないので、そこを狙っていきたいです」

 U-16代表候補合宿で同世代のトッププレーヤーたちの熱量やポジショニング、フィジカルの強さについて学び、指摘された臀部強化を継続中。チームの結果を貪欲に求め、再び年代別代表に選ばれることや、プロのステージに立つことを目指していく。

(取材・文 吉田太郎)

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