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「僕の中で若干危惧がある」吉田麻也がメディアを通じて選手に伝えたかった日韓戦の意味

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オンラインで取材に応じたDF吉田麻也

 互いに海外組を含めた国際親善試合としては10年ぶりに行われる25日の韓国戦(日産ス)を翌日に控え、日本代表DF吉田麻也(サンプドリア)は日韓戦の重要性を説いた。

 オンラインで報道陣の取材に応じたキャプテンは「日本代表で戦う以上、最も大切な試合だと思う。もちろん、どの試合も代表戦は大事だけど、韓国と戦うのはそれだけ大切で、絶対に勝たないといけない試合だと思っている」と力説した。

 11年8月に札幌で行われた韓国戦はMF香川真司の2ゴールなどで3-0で快勝した。しかし、当時のメンバーで今回も代表に招集されているのは吉田とGK西川周作のみ。その後は東アジア杯(現E-1選手権)と4回対戦しているが、いずれも国内組の編成だった。

 フルメンバーのA代表としては10年ぶりの日韓戦。吉田は「長い間、韓国戦をやってこなかったし、僕はおそらく上の世代から日韓戦の重要性を伝えられてきたギリギリの世代。10年空いてしまったがゆえに、そこの部分を(下の世代に)伝えられていないのは僕の中で若干危惧がある」と率直に明かす。

 “ドーハの悲劇”が起きた93年のW杯アジア最終予選でも、97年のフランスW杯アジア最終予選でも韓国とはしのぎを削ってきたが、その後はW杯予選で対戦していない。「今の時代にはそぐわないかもしれないけど、足が折れてもとか、体が壊れてもぶつかっていかないといけないとか、そういう表現をよくしていた」。先輩たちからの言葉を振り返る吉田は「今の世代というか、下の世代にそういう表現で伝えるのが合っているかは分からない。でも確実に一つ意識してほしいのはキャリアの中で一番大事な試合になるんだよと。そこは意識してもらいたい」と力を込めた。

 吉田自身が忘れられないのはオーバーエイジで出場した12年のロンドン五輪。メダルを懸けた3位決定戦で実現した日韓戦だ。0-2で敗れ、44年ぶりの銅メダル獲得を逃した試合後、キャプテンとして大会を戦った吉田は「韓国に負けるのは、(準決勝で敗れた)メキシコに負けるより数倍悔しい」と話していた。この日の取材対応でも「個人的なことを言うと、五輪で負けたときは本当に悔しくて、二度と韓国に負けたくないと思った」と改めて当時を回想。「練習からいかにこの試合が日本代表にとって大切かを伝えていかないといけない」と強調した。

 取材対応でこれだけ日韓戦の重要性について熱弁したのには理由がある。本来であれば、ピッチ内外で若い世代に直接伝えるところだが、コロナ禍の隔離措置により海外組と国内組は宿舎内でもフロアが分かれ、食事会場も向き合わないように席が設定されるなど接触がほとんどない。「チーム内でのルールが厳しく制限されているので、ピッチ外で国内組の選手と接することがない。ピッチの中でしか話せない」と、練習ではランニングの先頭を走り、積極的にチームメイトとコミュニケーションを取っていたが、それにも限界はある。

 だからこそ、メディアを通じてチームメイトに伝えたかった。「このメディア対応を含めて、メッセージになるんじゃないかなと思う。選手は記事も見ていると思うし、今回はそういうのも含めて駆使していかないといけない」。果たしてキャプテンの願いはチームメイトに届くのか。その答えは明日のピッチで分かるはずだ。

(取材・文 西山紘平)

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