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“ミスター空元気”を自ら襲名。FC東京U-18DF中野創介が発散するポジティブオーラ

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FC東京U-18のムードメーカー、DF中野創介(2番)の同点弾がチームを救う

[4.11 プレミアリーグEAST第2節 横浜FCユース 2-2 FC東京U-18 小机]

 チーム屈指のムードメーカーが決めた意外な一撃に、FC東京U-18(東京)の選手たちも一様に笑顔が弾ける。「とりあえず悔いのないように蹴りました。僕は思い切りが持ち味なので。“空元気”というか、自分がキツくても声だけ出しておこうかみたいな、僕はそういう選手です。ミスター空元気です!」。自称、“ミスター空元気”。だが、なかなかどうして、DF中野創介(3年)のポジティブな雰囲気は、このグループにとって絶対に必要だ。

 FC東京U-18は追い込まれていた。プレミアEAST第2節。前半は横浜FCユース(神奈川)に一方的に攻められ続けて2失点。「ベンチの椅子に座って、一番最初にチュウさん(中村忠監督)から『ビビってんじゃねえ』って言われました。でも、チームというかディフェンスラインがちょっと臆病になっていた所はあったので、言われて当然だと思います」と中野。ようやくハーフタイムでスイッチが入る。

 MF谷村峻(3年)のPKで1点差に迫り、迎えた最終盤の後半39分。右サイドを駆け上がった中野に、谷村からの丁寧なラストパスが届く。「谷村がうまい具合にタメを作ってくれて、フリーでパスをもらったので、もう『入れ!』って感じで打ちました。枠にという感じですね。別にあそこを狙った訳ではなかったです」。振り切った右足に確かな感覚を残して、ボールはゴールネットへ突き刺さる。チームに勝ち点1をもたらす大きな同点弾。最後の最後で、中野が試合の主役に躍り出た。

 この会場で、この相手には、負けられない理由があった。昨年の12月6日。プレミアリーグ関東最終節。勝てば優勝という一戦に敗れ、FC東京U-18はタイトルに手が届かなかった。

「トップチームに3年生が10人ぐらい呼ばれて、2年生中心みたいな感じで、ここでポコボコにやられたんです。僕はケガ明けで出ていなかったですけど、やっぱり『しょうがない』とは言いたくないというか、試合に出られない自分も悔しいし、やられているチームを見るのも悔しかったですね。だから、しっかりその借りを返そうということで、円陣の前に(安田)虎士朗がしっかり声を掛けてくれて、気合いを入れて臨みました」。

 ゴールという結果を残したものの、試合はドロー。本人の中では割り切れない想いもくすぶっている。「やっぱり前半が良くなかったので、今日でリベンジできたとは全然思ってないです。また後期もあるので、しっかり“2つの借り”を返そうと思っています」。次の対戦はホームで、“2つの借り”を返すための戦いに臨む。

 とにかくエネルギッシュな17歳。試合前の集合写真時にも、その持ち味は遺憾なく発揮される。「(撮影の時に)声を出す人は、その時の顔つきみたいなのを見て、忠さんが決めて言うんですけど、『オレを指してくれ』みたいな顔をいつもしているので、毎回ではないですけど、自分の時が多いです(笑)」。開幕戦でも指名を受け、大事なセリフを嚙んだことで、チームの緊張が解けたという。「大事な時に噛んじゃうんです。“空元気”で!」。とりあえず“空元気”。大事なことだ。

 今年は少しおとなしい代だと評されることもある中で、中野はそういう見方をやんわりと否定する。「もっとできると思います。練習の時は虎士朗もそうですし、(野澤)零温も(大迫)蒼人も実際にみんな声を出していますし、今年も凄く良い雰囲気だと思います」。その中心にいる男が発散する“陽のオーラ”がチームを救うタイミングは、この日のようにこれからも必ずやってくる。

 自称、“ミスター空元気”。中野創介はいつでも、どこでも、絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)
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