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[プレミアリーグEAST]勝負強さを見せた清水ユースが開幕3連勝!だが、流経大柏は負けてなお強し。

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MF金子星太(左端7番)の決勝ゴールで清水エスパルスユースが開幕3連勝

[4.18 プレミアリーグEAST第3節 流通経済大柏高 1-2 清水ユース 流経柏G]

 勝利を収めたはずの岩下潤監督が試合後、開口一番語った言葉が印象的だ。「試合に勝てたことは嬉しいですけど、ここまでやらせてもらえなかったというのはある意味ショックというか、今日は非常に課題も多かったですし、これを選手と一緒に日常のトレーニングに生かしていきたいなというのは凄く感じましたね」。18日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第3節の流通経済大柏高(千葉)と清水エスパルスユース(静岡)が対峙した一戦は、2-1で清水ユースが開幕3連勝を飾っている。

 ファーストシュートは開始36秒。右からMF都築駿太(2年)が上げたクロスに、FW川畑優翔(3年)が合わせたヘディングは、清水ユースのGK福井レオナルド明(3年)がキャッチするも、1分2秒にもMF高足龍(3年)の左クロスから、MF小林恭太(3年)に決定機。ここも福井が飛び出して防いだが、いきなり流経大柏がフルスロットルで立ち上がる。

 12分。右SB大川佳風(2年)のクロスから、キャプテンマークを巻くFW渋谷諒太(3年)のシュートは福井が果敢にキャッチ。13分。左SB橋本清太郎(3年)が川畑とのワンツーからフィニッシュに持ち込むも、福井が正面でセーブ。19分。大川のスローインを渋谷がヒールで残し、川畑が枠へ収めたシュートも福井がファインセーブ。

 21分。ペナルティエリア内で小林が残し、橋本のシュートは間合いを詰めた福井が両手で阻止。「確かに攻められましたけど、それ以上に止めようという気持ちが強かったので、あまりストレスではなかったです」という福井の好セーブ連発で何とか清水ユースが凌ぐものの、ホームチームが攻守に圧力を掛け続ける。

 しかし、劣勢のアウェイチームへ訪れたのは絶好の得点機。左サイドで仕掛けたMF金子星太(3年)がエリア内でマーカーともつれると、主審はPKを指示する。キッカーはFW千葉寛汰(3年)。左を狙ったキックは、流経大柏のGKデューフエマニエル凛太朗(2年)が完璧に読み切ってストップしたが、デューフの両足がラインを越えていたというジャッジで蹴り直しに。「正直ちょっと動揺しましたけど、ラッキーな形でもう一度蹴らせてもらえたので、そこは自信を持って蹴りました」と千葉は再び左を狙い、今度はきっちり成功。35分。清水ユースがエースのPKで先制する。

 やや不運な失点を喫しながら、流経大柏もメンタルは折れず。前半終了間際の45+2分。ボランチのMF松本洋汰(3年)が左へ展開した流れから、橋本が粘ってクロスを上げ切ると、飛び込んだ松本の左足ボレーは完璧なインパクトから、ゴールネットを鮮やかに貫く。10番が意地のゴラッソ。流経大柏がきっちり追い付いて、最初の45分間は終了した。

 ハーフタイムを挟んでも、大きな流れは変わらない。19分。川畑が右サイドを運びながらヒールで繋ぎ、渋谷の絶妙クロスに高足が頭から飛び込むも、ここも福井が正面でビッグセーブ。1分後の20分。都築が左へ展開し、川畑が優しく流し入れたボールに、走り込んだ渋谷がヘディングでゴールネットを揺らすも、ここはオフサイドの判定でノーゴール。押し込む流経大柏。耐える清水ユース。

 オレンジの閃光は24分。福井のフィードを受けた千葉は、マーカーを背負いながらも巧みな反転で前を向くと、そのままスルーパス。飛び出した金子が躊躇なく右足を振り切ったシュートは、ゴール中央へ豪快に突き刺さる。「彼は瞬間的な抜け出しを持っていますし、非常に落ち着いていて、決定機を結構決めるんですよ」と指揮官も認めるナンバー7が大仕事。後半もワンチャンスをモノにした清水ユースが、再び一歩前に出る。

「こういう試合はあまり経験したことがないですね」と渋谷も話したように、ペースを握り続けていた中で、2度目のビハインドを負った流経大柏。28分にはMF堀川大夢(2年)とMF石川裕雅(3年)、35分にはFW大田原蓮(3年)を相次いで投入し、セットプレーも含めて相手ゴール前に迫るも、最後の一手を繰り出せない。

 40分。大田原の右CKに、CB田口空我(3年)が当てたヘディングは枠の上へ。44分。石川の右ロングスローから、CB萩原聖也(2年)のシュートは、当たり損ねて福井がキャッチ。最終盤の45+1分は左CKのチャンス。渋谷が丁寧に蹴ったボールへ、ファーから飛び込んだ松本は態勢を崩して、シュートを打ち切れず。「守備でも『防いでいた』というより『助かった』という所が目立ったので、今日の試合は非常に勉強になったというか、今後に繋げたいなという気がします」とは岩下監督。2回のチャンスを決め切った清水ユースが、粘り強く勝ち点3を引き寄せた。

 ゲームをほぼ支配しながら、いくつかのアンラッキーも重なって、今季初黒星を喫した流経大柏だが、榎本雅大監督は自身を引き合いに出しつつ、選手たちにこう言及している。「一番感情的になっているのが監督で、選手は冷静じゃないですか。こういうことが凄いなと思うんですよ。普通の高校生では気持ちが切れちゃうような所でも、立ち向かっていましたから」。

 キャプテンの渋谷も、チームメイトについてこう口にする。「試合が終わってすぐに『もう切り替えるしかない』と全員で話していたので、自分もキャプテンで『何を話そうか』と思っていたんですけど、全員の考えていることが本当に一緒だなと思いました」。自他ともに認める“マジメ”な代だという、今年の流経大柏。その成熟しているメンタルを考慮しても、負けてなお強し。清水ユースの素晴らしい勝負強さも含めて、サッカーの持つ様々な側面が凝縮された90分間だった。

(取材・文 土屋雅史)
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