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ミスした仲間の分まで…法政のPKストッパー中川真が大仕事!!「絶対俺が止めるから」 PK戦の“苦い思い出”も払拭!

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GK中川真(2年=徳島市立高)が2本のPKストップ

[4.18 東京都サッカートーナメント準決勝 武蔵野1-1(PK6-7)法政 味フィ西]

 1-1から突入したPK戦。緊迫した展開に静まり返る競技場にGK中川真(2年=徳島市立高)の声が響き渡った。「絶対俺が止めるから」。自らを奮い立たせるように何度も仲間に声をかけた中川は、見事に2本をストップ。法政大を決勝の舞台へと導いた。

 勝ち上がりを確定させる大仕事を演じたあと、ヒーローは目を赤らめるGK近藤壱成(3年=磐田U-18)の肩を抱き、声をかけた。「俺が勝たせたから気にしなくていいよ」。GK中川真(2年=徳島市立高)の言葉に近藤の目からは涙が溢れ出た。

 法政大は1点リードの後半34分、MF鈴木裕也に許したシュートを弾こうとした近藤が痛恨ミス。弾き切れなかったボールがゴールラインを割り、同点のゴールとなってしまった。

 流れが悪い。そう感じた法政大の長山一也監督は、PK戦に突入する直前、思い切った行動に出る。PKストッパーとして中川の起用を決断したのだ。今大会の学生系予選の国士舘大戦のPK戦では近藤のままだったように、普段あまり取らない作戦だが、練習から動きが良かったことから、思い切って中川に運命を託すことにした。

 するとPK戦で中川は、6人目と8人目を見事にストップ。ベンチワークを含めた全員での会心の勝利となった。そして2段落目に触れたエピソード。中川は「まずは勝ったら絶対に壱成くんのところに行こうと思っていた。いつもチームを救っていて、代わったら次は俺の番だと思った。今日は失点に絡んでしまったけど、俺が勝たせたから気にしなくていいよと声をかけました」と笑顔で振り返った。

 だがしかし、実は中川、PK戦には“苦い思い出”を持っていた。徳島市立高時代は正GKとして君臨し、高校3年時のインターハイ、高校選手権ともにベスト8に導いた。しかし全国で経験した7試合中、4試合が0-0からのPK戦勝ちだったが、いずれの試合もPK戦直前に控えGKと交代。高校時代は“PKストッパー失格”の烙印を押された選手だった。

 自分でも「高校のときはPKが苦手でした」と素直に認める。ただしその悔しさが大学に入ってからの原動力になったという。意識したのはタイミング。PKの際は常に相手から目線を外さないことを心掛けることで、徐々に克服していき、今では名手の揃う法大GK陣の中でも屈指の信頼を得るPKストッパーに成長した。

 ただ自らの思い、仲間の思い…様々な感情を背負ってPK戦に臨んでいた中川。巡ってきたチャンスをしっかりとものにした背番号12だが、「みんなが応援してくれる中で絶対に止めないとなという思いがあった。応援のおかげで止められたのかなと思います」と、どこまでも謙虚だった。

(取材・文 児玉幸洋)
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