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[MOM3431]青森山田MF松木玖生(3年)_試合終盤に見せたシュートブロックの価値。注目されるだけの理由がこの男にはある

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青森山田高の10番、松木玖生は結果を出し続ける

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.25 プレミアリーグEAST第4節 横浜FMユース 1-4 青森山田 小机]

 前半だけで奪った2ゴールは言うまでもないが、この試合最大のビッグプレーは後半37分に見せた、相手の決定的なシュートに全身を投げ出して阻んだシーン。「もう気合で行くしかないと思って。凄く押し込まれていた時間帯もあったので、あのブロックができて、より一層チームが引き締まったなと思います。アレは相当嬉しかったですね」。苦しい試合終盤に、フルスプリントで戻ってきてのシュートブロック。青森山田高のキャプテン、MF松木玖生(3年=青森山田中出身)は声でも背中でもチームを牽引できる、稀有なリーダーだ。

 4連勝を狙う青森山田が挑んだ、横浜F・マリノスユースとのアウェイゲーム。開始6分で早くも10番が違いを生み出す。右SHの藤森颯太(3年)が丁寧に送ったボールから、巧みな反転でコントロールすると、「ニアが空いていたので、振り抜くことができました」と右スミのゴールネットへグサリ。イメージはUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝第2戦で、ドルトムント相手にマンチェスター・シティのFWフィル・フォーデンが叩き込んだ一撃。以前から憧れているイングランド代表の20歳を思い浮かべ、チームに先制点をもたらした。

 2点目はセットプレーから。左SB多久島良紀(2年)のロングスローを、CB三輪椋平(3年)がフリック。その軌道上に松木が飛び込む。「角度はなかったですけど、高さを出そうと思っていました。バックラインは凄くヘディングが強いですけど、自分もセットプレーからの得点に対しての想いは強いです」。チームのストロングから、きっちりフィニッシュ。プレミアでは初の1試合2得点を記録する。

 そして、冒頭でも触れた後半37分のシーン。右サイドから上げられたクロスが、ファーでフリーの選手へ届く。決定的なピンチに陥った刹那、体ごとシュートへ突っ込んで、ボールを弾き出したのは10番。「逆サイドを見た時にマークが足りていなかったので、ここは戻らないといけないと思いました。自分は(宇野)禅斗だけに頼らず、守備をすることも1つの特徴だと思っているので、あのシーンはチームにとって少しはプラスになったかなと」。松木の咆哮に、チームメイトも気合で応える。

 このプレーには黒田剛監督も「ワンプレーとか、10センチとか、最後の何秒といった所は、ウチが一番こだわっている所だから。そこで足が出るかどうか、戻れるか、5メートル寄せられるかというのが勝負の明暗を分ける所もあるし、そこは練習からかなり厳しく言っているので、ああやってキャプテンがやってくれるとまた盛り上がりますしね」と称賛を口に。決められていれば1点差になっていた場面での、重要なシュートブロック。勝負に懸ける執念をキャプテンが守備で体現した一連は、ある意味でこの90分間のハイライトと言っても良いぐらいのビッグプレーだった。

 これでチームは4連勝。今年の目標に『チームを優勝させること』を掲げている松木にとっても、最高のスタートを切ったことは間違いないはずだが、手放しで喜ばないのがこの男のスタンス。「開幕の浦和戦でうまく波に乗ることができたので、良いスタートが切れたかなと思いますけど、率直に上手く行き過ぎている部分はあるかなと。でも、それを過信とせずに、常に自分たちのチームの自信として、いろいろな部分を埋めていくことができれば、まだまだ未完成のチームも良くなっていくと思います」ときっぱり言い切るあたりに、目指す志の高さが窺える。

 自分が果たすべき役割は、自分が誰よりも一番よくわかっている。「キャプテンをやっていて、一番自分がやらなかったらチームもうまく行かないですし、そういった所は声もそうですけど、背中で見せていかないといけないなとは思います」。圧倒的な注目度に値する、圧倒的な自分への覚悟。求められた上で、出し続ける結果。2021年が“松木イヤー”の色彩を帯び始めている。

(取材・文 土屋雅史)
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