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[蹴活生ガイド2021(関西)]“上手い系じゃない”同志社大DF敷田唯。より強くなった勝ちへの執着心で、全国大会とプロ入りへ

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全国大会とプロ入りを目指す同志社大DF敷田唯

 昨年、2年ぶりの1部リーグに挑んだ同志社大だが、志向するポゼッションスタイルが思うように機能せず、9位でシーズンを終えた。迎えた今年は、例年よりも多い3チームが降格することもあり、「しっかり守ってから、攻めるのが今年の戦い方。ブロックを組んで、チャレンジ&カバーを徹底してやっていこうと意識している」(望月慎之監督)と守備重視のスタイルで手堅く勝点を積み上げていく方向へと舵を切った。

 守備の徹底ぶりについて、小川雄生コーチは「今シーズンに入ってから、攻撃の練習はしていない。徹底して、アプローチやカバーリングといった中学生で習うような基本戦術を学んで、『それじゃ甘い』と1個1個確認しながら、11対11に繋げてきた」と明かす。

 新たなスタイルによって、輝きを放ちそうなのが主将を務めるDF敷田唯(4年=星稜高)だ。武器は対人の強さで、FWにボールが入った瞬間にタイミングよく前に出て仕事をさせない。身長は178cmと特別な高さはないものの、競り合いにも強く、ゴール前で身体も張れる関西屈指のDFだ。

 しかし、昨年までは攻撃を重視するスタイルの影響を受け、空いたスペースに釣り出されるなど対応に苦しむ場面も少なくなかった。相手の攻撃を待ち構える今年のスタイルは、彼にとっては好都合で、敷田は「僕は前に強いのが特徴。後ろを固めて狙える所で狙う準備はいつでもできている」と口にする。

 スタッフにとっても今年の戦いは、敷田がいることを前提したスタイルであり、小川コーチはこう話す。「色んな守り方があり、クロスを上げさせないのか、上げさせて守るのかによって対応が変わってくる。僕らはクロスを上げられても彼らなら勝てると踏んでいる。相手にパワープレーで来られた方が楽なくらい」。

 最終学年にかける想いの強さもプラスに働きそうだ。高校時代は強豪・星稜で2年生からスタメンの座を掴み、最終学年ではキャプテンを務めた。2年生の時こそ選手権への出場を鵬学園高に譲ったが、全国大会への出場は当たり前。常に勝利が義務付けられたようなチームだった。しかし、同志社大が置かれた立場は違う。1部と2部を行ったり来たりしており、敷田自身も入学2年目は2部リーグを経験している。「入学した時は同志社も1部だったので、トップレベルを味わえると思っていたら、めちゃくちゃ負けてしまった。落胆する気持ちもあったけど受け入れて、その年ごとに高みを目指してきた」。

 敷田にとって2度目の1部リーグとなった昨年も黒星が先行する苦しい一年となったが、プラスもある。「勝ちへの執着心がより強くなった。試合ごとのミーティングを繰り返しながら勝ちへの執着心を持ち続け、今は勝ちたいという一心でプレーしています」。最終ラインから丁寧にボールを繋ぐ昨年までのスタイルによって、高校時代よりもボール扱いと判断が向上したのも大学に入ってからの成長だ。

「僕のプレーは上手い系じゃない。潰しとか、身体を張るところ。戦う姿勢や熱量が僕の価値だと思っているし、誰にも負けないと自信を持って言える。その価値をプロで試してみたい」。言葉通り、卒業後は、プロ入りが目標だ。「まだ声はかかっていないので不安もあるけど、なれると常に思っている。その気持ちを試合にぶつけるだけ」と熱い気持ちで1部残留と全国大会出場と、プロ入りを引き寄せる。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。

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