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[関東大会予選]『心で勝負』の武骨なスタイルは健在。実践学園が4試合連続無失点で関東大会へ!:東京

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実践学園高の決勝弾をマークした村田拓己が、ベンチへ一目散に駆け寄る

[5.3 関東高校大会東京都予選準決勝 実践学園高 1-0 成立学園高]

『心で勝負』の伝統は今年も健在――。3日、2021年度関東高校サッカー大会東京都予選準決勝が行われ、実践学園高成立学園高が激突。前半に挙げた1点がそのまま決勝ゴールとなり、1-0で実践学園が勝利。東京代表として関東大会へと進出することになった。

 東海大高輪台高と駿台学園高をどちらも1-0で下し、3試合無失点と守備の堅さが際立つ実践学園と、都内屈指の強豪として知られる駒澤大高と関東一高に対し、ともに3得点ずつを奪って撃破してきた成立学園の対戦は、立ち上がりから構図が明確になる。

 成立学園はMF関根伶央(3年)とMF陣田成琉(2年)のドイスボランチがボールを動かしつつ、右サイドはSB田中佑典(3年)とSH大崎日向(3年)が、左サイドはキャプテンのSB山崎夏樹(3年)とSH坂尾一汰(3年)が、それぞれ縦の連携を生かして、相手陣内に侵入していく。

 一方の実践学園は、「ディフェンスラインが統一感を持ちつつ、チーム全体が走って、全体でカウンターに行くぞという意識が良かったかなと思います」と話すキャプテンのDF土方飛人(3年)とDF秋元朝陽(3年)のセンターバックコンビが中央を固め、最前線のFW清水大輔(3年)も体を張って収めながら、スピードのある両ウイング、右のMF丁大修(3年)と左のFW笹原勘太郎(3年)を生かす狙いを、明確に打ち出す。

 前半16分には実践学園のシンプルなアタック。時間を作った清水が相手ディフェンスラインの裏へ落とし、走った丁のシュートはゴール左へ外れたものの、狙った形でフィニッシュまで。23分には成立学園も、右サイドでの崩しからCKを獲得すると、FW萩原大世(3年)のキックにCB丸山寿潤(3年)が強烈なヘッド。DFに当たったこぼれを山崎が詰めたシュートは枠外も、双方がチャンスを作り合う。

 25分は実践学園。MF和田葵生(3年)の右FKから、ニアで清水が枠へ収めたヘディングは、成立学園のGK西大輔(3年)がビッグセーブ。34分は成立学園。左から萩原が蹴ったFKに、FW吉長由翔(3年)が合わせたヘディングは枠を越えたが、やや攻勢は成立学園。

 そんな状況の中で、スコアが動いたのは35分。「自分たちはカウンターを武器にしてやっているので、その1本というのをしっかり走り切ることを心に決めてやっています」と語ったMF村田拓己(3年)は丁からパスを受けると、清水とのワンツーを経てドリブル開始。「1回縦に抜いていって、その後に左に行ったらコースが見えました」と左足で蹴り込んだボールは、右スミのゴールネットへ転がり込む。スピードに乗ったドリブルが武器と自ら口にする7番の貴重な先制弾。40分に成立学園の萩原に訪れた決定機も、GK齊藤陸(3年)のファインセーブで凌いだ実践学園が、1点のアドバンテージを持って前半を折り返す。

 ハーフタイムを挟んでも、攻める成立学園、守る実践学園という基本構図は変わらず。4分の成立学園は、中央左寄りの位置で得たFKを和田が直接狙うも、軌道は枠の左へ。ただ、流れの中からは良い形を作り切れず、ジリジリと時間が経過していく。

 逆に「1点リードという難しい状況で、もう1点を獲りたい気持ちはあったんですけど、どうしても運動量が上がらなかったので、少し下がるという統一意識はできていました」と土方も話した実践学園はカウンターに活路。27分には後半から投入されたDF雨宮竜也(3年)がドリブルで運び、笹原が打ち切ったシュートは成立学園のCB佐藤由空(2年)が何とかタックルで回避したものの、常に懐へ忍ばせる鋭利な武器。

 何とか1点の欲しい成立学園も、終盤の36分には大崎の仕掛けから、吉長がシュートチャンスを迎えたが、ここは土方が気合のブロックでチームメイトに魂を注入。アディショナルタイムの40+2分には左サイドで取ったCKを、MF斎木大和(3年)が丁寧に蹴り入れるも、オフェンスファウルの判定で万事休す。「正直に言えばホッとしたというのが大きくて、ここまで無失点で来れていたので、今日もゼロで終われたのは素晴らしかったと思います」と土方も笑顔を見せた実践学園が、4戦連続となる完封勝利を達成。関東大会への出場権を手にする結果となった。

 決勝弾をマークした村田は「実践の守備は堅くて、みんなで守るという意識が凄く強いと思うので、ここまでも無失点という結果にも現れていますし、サボっている人がいたら後ろから喝を入れてくれて、誰もサボれない状況で守備ができるので、そのおかげで厳しい守備ができていると思います」ときっぱり。チーム全体に良い守備から良い攻撃という狙いが統一されていることが、迷いのない戦い方に繋がっている。

 加えて、この日の登録メンバー23人が全員3年生で占められた今年のチームは、1年時から同じ顔ぶれで連携を磨いてきた世代。「ここ最近でというよりは、だんだんレベルが上がってきたという感じですね。去年もこのメンバーで戦っていましたし、自分たちの個性や持ち味はこの2年間で分かってきたので、そこはやりやすいと思います」と土方。集大成の最終学年を戦う上で、このアドバンテージは見逃せない。

 関東大会出場権は獲得したものの、優勝への想いはチーム全員が共有している。「タイトルを獲るということは自分たちも目標にしていますし、東京都で1位を獲れる機会はそう多くないので、みんな勝つ気で臨んでいます」と村田。かねてから掲げ続けている『心で勝負』を今年も貫く実践学園は、決勝でも当然のように勝利を狙い、東京制覇を成し遂げる。

(取材・文 土屋雅史)

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