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森勇人に刺激を受けた司令塔はさらなる飛躍を誓う。水戸ユースMF田中吟侍の現在地

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水戸ホーリーホックユースの司令塔、MF田中吟侍

[5.1 Jリーグユース選手権 グループB 第1節 水戸ユース 7-0 湘南U-18 ツインフィールド]

 中盤アンカーの位置で、常に周囲を見渡しながらゲームをコントロールする6番の姿は、トップチームでプレーする平野佑一に通じるものがある。「自分が慌ててしまうとゲームが壊れてしまうので、落ち着いてやる所もそうですし、相手を剥がして味方を使う所もありますし、ロングボールのパス精度という所が特徴かなと思います」。冷静な自己分析もクレバーさの現れ。水戸ホーリーホックユースの司令塔。MF田中吟侍(2年=蹴球団藤岡キッカーズU-15出身)のゲームメイクする力、要注目。

 中学3年時にホーリーホックユースの試合を見に来た田中は、ある選手のプレーに目が釘付けになる。「その選手は回すだけではなくて自分のドリブルで入って行ったり、数的優位を見つけてパスを出したりというのが凄く上手かったんです」。藤枝伶央(現・仙台大)。中盤の底で躍動する6番の姿が、とにかく輝いて見えた。

「自分のやりたいアンカーというポジションがあったのはもちろんですけど、その選手のインパクトが大きかったですね。それを見てホーリーに入ったというのもあります」。群馬から単身で入寮し、水戸の地でプロサッカー選手を目指す決断を下す。

 Jリーグユース選手権の湘南ベルマーレU-18戦でも、大量得点を記録したチームの中で、ボールを引き出しながら、丁寧にポジショニングを取り、丁寧に配球していく。「前半はちょっと慌てた展開だったんですけど、後半は自分の所からゲームをコントロールできたと思います」。だが、果敢に狙い続けたシュートは不発。実はある理由からゴールを挙げたかったと明かす。

「入らなかったですけど、今日はゲームの中でのシュートを意識して、打てたのは良かったかなと思います。でも、1点獲りたかったですね。昨日誕生日だったので、決めたかったです(笑)」。17歳になって初めて迎えた試合でのゴールは奪えなかったが、きっとその積極性を持ち続ける限り、これからも得点のチャンスは何度でもやってくるだろう。

 今年に入って、トップチームの練習試合にも参加。「自分の特徴はあまり出せなかったですね。ボールを受けて触ることはできたので、練習参加できて良かったとは思いますけど、課題は守備の所です。自分が交替する前の選手は守備の出足の迫力が凄くて、自分が出た時にはそこから崩れてしまったので、守備の所は差が凄かったかなと思います」。

 特に印象に残ったのは、献身的な守備を見せ付けられた森勇人だという。「後ろのマークを見ながら、前に出ていくスピードが速くて、迫力が凄かったですね。それに自分がトップチームに参加して、最初に話し掛けてくれたのが森勇人選手で、コミュニケーション能力も高かったです」。人間性の部分も含めて、追い掛けるべき背中が定まったのも、大きな収穫となった。

 『吟侍=ぎんじ』という名前も特徴的。「珍しいですよね。あまりいない名前で、1回言ったら覚えてもらえますし、実際にトップに2回目に行った時も皆さんが覚えてくれていたので、いい名前だと思っています」。その名前をより多くの人に知ってもらうために、ここから目指していく場所もはっきりしている。

「今年の目標はまずIFA(茨城県)リーグに優勝して、プリンスリーグに上がることと、クラブユース(選手権)でまた全国大会に出たいなと思います。これからの自分としてはまず2種登録を目指して、3年生になったらトップ昇格を勝ち獲りたいと思います」。

 クラブの未来を明るく照らし得る田中のより成長した姿を、ケーズデンキスタジアム水戸で見られる日が来ることが、今から楽しみだ。

(取材・文 土屋雅史)

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