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走り出したら、そう簡単には止まらない。水戸ユースMF上野山叶夢はとにかく縦へ!

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水戸ホーリーホックユースの爽快系ドリブラー、MF上野山叶夢

[5.1 Jリーグユース選手権 グループB 第1節 水戸ユース 7-0 湘南U-18 ツインフィールド]

 とにかく縦へ、縦へ、と突き進んでいく姿には、爽快感すら覚える。「ボールを持ったら、基本的に縦しか自分は見ていないので、それはずっと変わらないと思います。スピードで行けなかったことがあまりないので、『行けそうだな』と思ったらガンガン行く感じです」。水戸ホーリーホックユースのスピードスター。MF上野山叶夢(2年=上州FC高崎出身)を一度走り出させてしまったら、そう簡単には止まらない。

 湘南ベルマーレU-18と対峙したJリーグユース選手権でも、開始2分でそのドリブルが猛威を振るう。「入りは自分で縦に行かないと、その試合は流れも悪くなっちゃうので、最初は一発行っておこうかなと」右サイドで縦に加速すると、マーカーをぶっちぎってクロス。MF荻沼航世(3年)の先制点をアシストする。

 16分にもやはり右サイドを切り裂き、2点目をお膳立てしてみせれば、34分にも躊躇のないドリブル突破からの右クロスで、再び荻沼のゴールを演出する。「クロスはそんなに良くなかったと思います。自分のスピードは生かせましたけど、どっちもクロスに力が入らなくて、航世さんが何とか決めてくれました」とは本人だが、前半だけで3ゴールに絡む活躍で、ゲームの趨勢を決めてしまう。

 後半には自分でも“意外”なアシストを披露。絶妙のタイミングでスルーパスを通し、FW内田優晟(2年)のハットトリック達成を導く。「あまりパスは得意じゃないんですけど、優晟が良い感じで準備していたので、そこに出せば行けるかなと思って出しました。自分でも狙った通りのパスだったので、気持ち良かったです」。チームは7-0で大勝。その中でも4点に絡んだ11番が、90分間の中でも一際輝いていたことは言うまでもない。

 ホーリーホックユースに入った経緯も、なかなか興味深い。「自分が練習参加に来た時はあまり調子が良くなくて、すぐに決定って感じじゃなかったんですけど、サンフレッチェ(広島ユース)の練習試合に呼んでもらった時に、その対戦相手がホーリーホックで、その時に自分の調子も良くて、スピードでかなり行けたら、結局ホーリーホックに決まりました。あまりそういう人はいないと思いますけど(笑)」。少し笑いながらポツポツと話す感じは、ピッチ上の勇壮な姿とギャップがあって、また面白い。

 2年生になって、実戦経験を積みつつある中で、少しずつ意識が変わってきているという。「1年の時はあまり試合には出られていなくて、今年は最初から出る機会が多くなった中で、それまでは自分の特徴を出すことがチームのためにも一番だと思っていたんですけど、それもやりつつ、結果も残していかないとずっとAチームでは試合に出られないので、結果にこだわるようになりました」。ゴールやアシストという目に見える“結果”への渇望。それがその先に見据える、目標や夢に繋がっていくことも、上野山は理解し始めている。

「今年に入って1回だけトップの練習試合に参加したんですけど、“圧”を感じてしまって、あまり自分を出せなかったんです。ゲーム中のプレースピートも全然違ったので、その日からトップのプレースピードを自分でも意識して、練習に取り組んだりはしています」。

「今年はまずIFA(茨城県)リーグで優勝して、そのチームを主力として引っ張っていけたらなと思います。今後はホーリーのトップチーム昇格を目指して、3年生になってもチームの主力で居続けることが今の目標です。自分はスピードでぶち抜いたりするのが気持ちいい感じなので、王道ですけどエムバペみたいな感じのスタイルを目指しています」。

 世界最高峰のスピードスターを自分に重ね合わせる上野山が、いったいどのステージまで走り抜けていけるのかは、おそらく本人にもまだわかっていない。それゆえに、期待してしまう。ホーリーホックのユニフォームを着て、Jリーグのピッチを縦横無尽に駆け回るその姿を。

(取材・文 土屋雅史)

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