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[MOM3451]市立前橋MF中村圭太(3年)_走り続ける努力の男。チームのダイナモが殊勲の決勝弾!

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市立前橋高のダイナモ、MF中村圭太はピッチを走り続ける

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.8 関東高校大会群馬県予選3回戦 市立前橋高 1-0 高崎経済大附高]

 貴重な決勝ゴールを挙げた殊勲のミッドフィルダーについて問われると、思わず森田真吾監督も笑みがこぼれる。「彼はチームでも一番小柄で、『よく試合に出られているな』と思う人もいるかもしれないですけど、ずっとチームのために走り回ってくれますし、大事な試合でよく点を獲ってくれるので、素晴らしいですよね」。市立前橋高のダイナモ。MF中村圭太(3年=前橋一中出身)の大仕事が、同校に史上初となる県ベスト8進出をもたらした。

 とにかく走る。気持ちいいぐらいに、とにかく走る。「自分はボールタッチとかが全然できないので、とにかく走って前からプレスを掛けて、運動量でカバーしようと思っています。アレは自分的には普通です」。自分の特徴を理解しているからこそ、とにかく走る。

 その上に、ゴールまで奪ってみせる。強豪の高崎経済大附と激突した一戦の前半12分。キャプテンのDF田村楓(3年)が左からCKを蹴り込むと、ゴール前は大混戦に。両チームの選手が殺到する密集から、中村によって蹴り出されたボールはゴールネットへ吸い込まれる。「味方の選手が1人スライディングでこぼしてくれて、そこを詰めるだけだったので、本当にラッキーだったと思います。気持ちで押し込むだけでした」。これで2試合連続得点。この男、走れるだけではない。

 以降も、最終盤の後半39分に交代するまで、攻守に幅広く顔を出し続ける。「チームとしては前からガンガンプレスを掛けてやるのが目標なので、それを意識していましたし、練習でも結構走りが多いので、それを信じてやっていました」。ベンチから祈るようにピッチを見つめていたが、タイムアップのホイッスルが鳴ると、チームメイトと一緒に笑顔が弾けた。

 2年生まではほとんど公式戦にも出られず、新チームが発足した昨年10月の時点でも、ようやく少しずつ試合に絡んでいくぐらいだったという。ただ、その中で自身の意識が変化していることには気付いていた。「1、2年生の時はもちろん積極的にはやっていたんですけど、どこか自分の中で引っ掛かっている部分があったんです。だけど、自分の代になった時に『もっと前向きになってやろう』という気持ちが出てきました」。その変化が確実に自分を成長させていることも、もう中村は十分理解している。

 持ち味の走力は1年時から際立っていたが、厳しいトレーニングを重ねてきたチームメイトも走れるようになってきたことで、もっとその特徴で他を圧倒する必要性を感じている。「毎週火曜日はフィジカルトレーニングなので、そこでは手を抜かないことをしっかり意識していますし、それを続けてフィジカルをもっと鍛えていきたいと思います」。努力を重ねることで掴んできた自信が、今の彼を支えていることに疑いの余地はない。

 市立前橋の歴史を塗り替えたが、ここまで来たら当然さらなる欲も出てくる。「最初はベスト8が目標だったんですけど、ベスト8を超えたからには、1個1個勝って優勝に近付けるように頑張りたいです。個人としては点に絡めるように頑張ります!」

 ひとたびピッチに入れば、その小さな背中は大きく輝く。中村が走り続ける限り、市立前橋の躍動感が途絶えることはない。

(取材・文 土屋雅史)

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