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[MOM3452]堀越MF古澤希竜(3年)_兄も背負った“堀越の10番”を受け継ぐアタッカーは勝利を担う存在へ

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堀越高の10番を背負うMF古澤希竜

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.9 インターハイ東京都予選一次トーナメント1回戦 堀越高 3-2(延長) 狛江高]

 2-2で迎えた延長後半アディショナルタイム。思うような力を出し切れない100分間を過ごしてきた10番の元に、ボールがこぼれてくる。「ここで負けたくないと思っていましたし、自分だけじゃなくてみんなそう思っていたと思うので、それがやっぱりこういう勝ちに繋げられたのかなと思います」。苦しんで、苦しんで、手にした勝利。堀越高の新10番。MF古澤希竜(3年=FC多摩出身)の劇的な決勝弾が、チームに歓喜をもたらした。

「あれだけの選手権のインパクトもありましたし、みんなそれを見ていますし、縦に行かれたらああなっちゃうというのもわかるので、もうマークもされますよね」。佐藤実監督の言葉を待つまでもなく、各チームの“古澤包囲網”は昨年までの比ではない。この日の対戦相手、狛江高ももちろん古澤の縦は最大限に警戒し、スペースを消してくる。

「自分は突破力だったり、ドリブルで仕掛けてチャンスを演出するとか、そのままドリブルから得点を奪うのが持ち味なんですけど、相手が結構ブロックを組んで引いてきたのもあって、前向きで仕掛ける場面が少なかったので、確かに自分の特徴が出づらいゲームなのかなと思いました」。時折仕掛けからクロスまで持ち込むも、狛江が敷く中央の守りも堅く、なかなか決定的なチャンスには至らない。

 後半40分に先制を許しながら、その3分後にPKで奇跡的な同点弾。延長に入っても押し込む流れの中で、後半2分に勝ち越されたものの、7分にCKから何とか追い付く。そして、最後のアディショナルタイムに突入した10+1分。左サイドからMF中村健太(1年)のCKが中央へ蹴り込まれる。

 こぼれに反応した古澤のシュートは、相手GKのファインセーブに阻まれたものの、諦めずにボールへ必死に食らい付く。「キーパーが弾いたのを、自分が体で押し込んだ感じです。あとは押し込むだけというか、突っ込むだけだったので、体ごと押し込みました」。執念で押し込んだボールがゴールネットへ到達すると、ベンチメンバーの元へ全力で走り寄る。その数十秒後にタイムアップのホイッスル。まさにエースの仕事。それまでのすべてを帳消しにするような劇的決勝ゴールが、チームを土壇場で次のラウンドへ押し上げた。

 新チームになって、昨年はどれだけ自分が自由にやらせてもらえていたかということを、改めて実感している。「やっぱり去年は先輩たちが凄く効いていて、キャプテンの日野(翔太)くんだったり、後ろだったら(井上)太聖くんとか、凄く安心感があって自由に攻めさせてくれたので、自分の長所も生きやすかったんですけど、今年は3年生がいなくなって、自分が点を獲らなくちゃいけないというふうに思っています」。

 もちろん自らがゴールを奪うための努力も、“あの日”から積み重ねてきた。「選手権で青森山田に負けて、自分自身とても悔しかったですし、『誰にも負けたくないな』と思って、そこから自分は本当にチームの誰よりもトレーニングをして、結果を出すために努力してきた自信はあるので、そういう面では特徴を生かせなくても、ああいう形でもいいから、チームを救えるように努力してきた結果が今日は実ったので良かったです」。華麗ではなくても、泥臭くても、結果を出すことの大事さをこの100分間から、また学ぶことができたようだ。

 “堀越の10番”にはこだわりがある。「自分の兄が堀越にいた時も10番だったので、自分が受け継ぐという気持ちもありますね」。3年前のチームで、やはり10番を背負っていた古澤柊磨を兄に持ち、その姿を見て堀越の門を叩こうと決意した。古澤家にとっても大事な“堀越の10番”。それを託されたからこそ、秘めたる想いは熱い。

「チームを勝たせる仕事をしないと、10番を背負っちゃいけないと思うし、チームを勝たせたいという想いを持ちつつ、これからもっと結果を残していきたいので、そういう気持ちで10番を付けています」。周囲から寄せられる期待も小さいはずがない。そして、それに応え続けることが、10番の、エースの役割であることも、十分に理解している。

次戦に向けて、また気持ちを引き締める。「今日は最後にゴールを決められたんですけど、あまり特徴が出なかったので、個人としてはもっと何がダメだったのかという課題をしっかり振り返って、次こそは自分の長所をしっかりと生かしながら、チームにまた貢献できたらいいなと思います」。

伝統ある堀越の10番。今年の継承者も、間違いなくチームの勝敗を握っている。

(取材・文 土屋雅史)
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