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JFAが「正しく恐れる」ヘディングガイドラインを策定! 幼児期〜中学生が対象

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ブリーフィングを行った反町康治技術委員長

 日本サッカー協会(JFA)は13日、幼児期から中学生を対象としたヘディング習得のためのガイドラインを発表した。同日、オンラインブリーフィングを行った反町康治技術委員長は「考え方としてまったく禁止をするのではなく、正しく恐れる、より適切な方法でヘディングの習得を目指す」と方針を示した。

 ガイドラインは幼児期、小学校1〜2年、3〜4年、5〜6年、中学生の5段階に分け、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)の基準を参考に策定。「子どもの安全を守るために、全ての指導者がこのガイドラインを理解し、指導することが大切である」としている。

 イングランド、スコットランドなどでは若年層のヘディングを規制する方向に舵を切っているが、「現時点でヘディングに関わるリスクについては、その科学的な根拠は十分ではない」とルール化はしていない。JFA医学委員で東京慈恵会医科大学脳神経外科の谷諭医師によると、脳震盪の続発と認知症などの障害との相関関係は立証されているが、ヘディングによって脳震盪につながるかは科学的に定かではないという。

 一方、若年期にヘディングの練習をまったくしないことで防御姿勢が身に付かず、ヘディングが解禁された段階で重大な怪我につながるという懸念もある。谷医師は「サッカーの脳震盪は衝突であったり、空中戦で落っこちたり、ヒジ鉄を食らって意識を失うという報告の方が多い。基本的なヘディングの技術を習得することや、フェアプレーをやっていくほうが適切な印象がある」と見解を述べた。

 ガイドラインは以下のとおり

▼幼児期
<現状>直接的にヘディングの技術を指導することはほとんどない。また、この年代のゲームの中でヘディングを意図的に行う状況は見られない。

<指針>額でボール触る経験、空中のボールを手で操作する(キャッチなど)ハンド・アイ・コーディネーションを高めることが大切である。風船や新聞ボールなどの軽量のボールを額に当ててみたり、額にボールを乗せてみたりといった課題は、子どもの興味を引くものであり、空間把握や距離感の向上のためにも欠かせない要素である。

<課題の例>
・風船を自分で投げ上げて落とさないようにキャッチ
・落ちてきた風船をからだのいろんなところに当ててみる
・風船を地面に落ちないように手や足などに連続して当ててみる(風船つきの要領)
・新聞ボールを上に投げてみる、できればキャッチ
・軽量ボールを額に乗せてみる、おうちの人などと額ではさんでみる

▼小学校1〜2年生
<現状>トレーニングでヘディングの技術を特別に指導されることはほとんどない。この年代のゲームの多くがスモールサイドゲーム(少人数で狭いエリアでのゲーム)であり、ゲームの中でヘディングを意図的に行う状況は見られない。

<指針>風船や新聞ボール、軽量ボールなどを使用して空間を移動するボールに身体を合わせる運動の経験を多くする。トレーニングというよりも遊び感覚での実施が望ましい。その中に徐々に額でボールに触れる機会を作る。

<課題の例>
・風船を使って、落とさないようにキャッチ、額に当てる
・軽量ボールを自分で上に投げてアンダーハンドでキャッチ、頭の上でキャッチ軽量ゴムボール+ボールネット額に当てる練習
・自分でゆらして額に当てる10回程度
・人にゆらしてもらう10回程度
・連続して当てる10回程度

▼小学校3〜4年生
<現状>トレーニングでヘディングの技術練習が徐々に導入されてくる。4 号球でのヘディングはこの年代では負荷が大きい。5人制などのスモールサイドゲームでは、ヘディングの機会はほとんどない。しかし、8人制のゲーム形式では、ゴールキーパーからのキックやクリアーボールの処理のためにヘディングをする機会が出てくる。

<指針>キャッチボールなどの空間のボールを主に手でプレーする運動経験を十分に行うことが大切。また、軽量ボールなどを使用して正しいヘディング技術の習得の導入をおこなう。「ボールをインパクトの瞬間まで見ること」「額でボールをインパクトする」といった基本的な技術を理解させる。ただし、4号球でのヘディングの反復はおこなわない。また、相手と競り合うためのコーディネーションを高める必要がある。2人で同時にジャンプしたり、空中のボールを手で取り合うといった運動を取り入れていく。5人制などのスモールサイドゲームを中心にすることを推奨する。

<課題の例>
・100円均一ショップ等で購入できるボールを使って、キャッチボール、フライボールをキャッチ
・軽量ボール(バレーボール等)+ボールネットでのヘディング練習
・自分でゆらして額に当てる10回程度
・高さ変えてジャンプヘディング10回程度軽量ボール
・額部分でキャッチ
・バウンドさせて額に当てる
・バウンドさせてヘディングしてみる

▼小学校5〜6年生
<現状>基本的には8人制のゲーム形式であり、ゲーム中に空中戦の状況が生まれる。ただし成人の試合に比べるとその数は少ない。ヘディングの技術レベルや運動能力に個人差があり、ヘディングの巧拙がはっきりし始める。

<指針>引き続き、空中にあるボールを手でプレーすることを中心に、二人で同時にジャンプしたり、空中のボールを手で取り合うといった運動をおこなう。徐々に4号球を使ったヘディングを導入するが、頭部への負荷(衝撃と頻度/量)を考慮して実施する。

<課題の例>
・テニスボールを使ってキャッチボール、フライボールをキャッチ4号球+ボールネット
・自分でゆらして額に当てる10回程度
・高さ変えてジャンプヘディング10回程度
・4号球を使って額でキャッチ
・バウンドさせて額に当てるバウンドさせてヘディング

▼中学生
<現状>使用球のほとんどが5号球に移行する。従って中学1年生での負荷に注意が必要である。筋力がついてくるので、ヘディングの強さも大きくなる。同時に競り合いでの強度も大きくなると考えられる。

<指針>軽量ボールや4号球を使って正しいヘディング技術習得ための反復を頭部への負荷を考慮して実施する。相手との正当な競り合いができるようなトレーニングも積極的に導入する。体幹の安定、首回りの強化といった基礎体力強化も導入する。

<課題の例>
・テニスボール キャッチボール、フライをジャンプしてキャッチ
・軽量ボールを自分で投げ上げて、ジャンプして最高到達点でキャッチ
・まずは4号球を使い、相手の投げたボールをジャンプして最高到達点でキャッチ→ヘディングでリフティング10回くらい
・首のアイソメトリック(ストレッチ) 前後左右
・コアトレーニング→フロントブリッジ、サイドブリッジ、バックブリッジ10秒くらい
・5号球を使い、相手が下から投げたボールをヘディング10回くらい
・4号球を使い、相手が下から投げたボールをジャンプヘディング10回くらい

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