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[関東]掲げるのは”圧倒的”な存在。筑波大DF角田涼太朗が抱える飽くなき進化への欲求

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“圧倒的”を目指す筑波大のDF角田涼太朗(4年)

[5.15 関東大学L1部第6節 筑波大1-3流通経済大 東金]

 謙虚な口調で強気な言葉を繰り出すあたりは、高校時代のままで何とも頼もしいが、携えている自信の大きさは、かつてのそれと比較にならない。「大学サッカーのレベルでは、もう自分は何をしても負けちゃいけないと思ってやっているので、まだ全てが完璧という訳ではないですけど、“圧倒的”という所は意識しながらプレーしています」。筑波大の最終ラインを預かるセンターバック。角田涼太朗(4年=前橋育英高)はずっと掲げてきた“圧倒的”をさらに加速させるべく、日々研鑽を積んでいる。

 試合終了と同時に、小さく息を吐き出す。1週間前に天皇杯茨城県予選決勝で敗れた、流通経済大とのリターンマッチ。その時と同じ3失点を喫しての黒星に、ディフェンスリーダーとしての悔しさを隠せない。

「早い時間帯に失点してしまって、それが自分たちの首を絞めたのが、今日の敗因かなと思います。チャンスを作れなかった訳ではないですし、自分たちがボールを握った展開もあった中で、相手はそういう展開の中で決め切って、自分たちは相手よりも決められなかったと。そういうサッカーの本質で差が出たのが、今日の試合だったと思います」。

 とはいえ、個人の出来を見ると、攻守にさすがのパフォーマンスを披露。「チームが負けてしまったので、『個人として良かったか』と言われればどうかとは思うんですけど、実際にサイドチェンジもできましたし、対人の部分もほとんど負けてはいないので」と言いつつも、「ただ、失点の場面で、自分がゴール前にいながらやられてしまったのは課題ですし、チームを勝ちに導けていないという点では、まだまだだなと思います」と続けた言葉に、今年の自分が果たすべき役割への自覚も透けて見える。

 そう考えるようになったのは、やはり中心選手としての立ち位置を、より自分でも意識し始めてからだという。「今から振り返っても1,2年生の頃は凄く自由にやっていたなと感じるんですけど、自分ももう4年生になって、チームのことを考えないといけない立場になりましたし、特に今年はチームの勝ち負けが全てだと思っているので、いくら自分が良いプレーをしてもチームが負けては意味がないですし、逆に自分のパフォーマンスが良くなくても、粘り強くやってチームが勝てれば、というのはありますね」。

 チームを率いる小井土正亮監督も、そんな角田の変化を静かに見守っている。「角田自身は意識高くやってくれている分、チームが勝てないことが歯がゆいみたいで、逆にそれが空回りしていたり、うまく噛み合ってない部分もあるかなと。ただ、人への強さは大学生レベルでは負けないぞという所で、良くやってくれていますね」。

 ここ最近で次々とJクラブへの内定を決めている、前橋育英時代のチームメイトたちには、やはり小さくない想いを向けている。「素直に嬉しいですし、こうやって大学で分かれはしましたけど、みんなとJリーグの舞台で戦えるのは凄く良いことですし、これからの楽しみでもあるので、ライバルというよりはシンプルに喜んでいる感じですね。この間の金沢対水戸は普通に見ましたよ(笑)」。今度はより高いレベルのステージでの再会を、心待ちにしているのは間違いない。

 個人とチームの目標をそれぞれ尋ねると、強い想いが一気に零れ出す。「今は個人の目標がチームの目標なので、まずはチームに勝利をという所が大事で、もちろん守備では相手に何もやらせないというのは毎試合目標にやっていますし、攻撃面で言えば自分が起点になって点が獲れればいいとか、セットプレーでも積極的にゴールを狙っていくとか、全部をやろうとしている感じになってしまうんですけど、そういう所を目指していかないと次はないかなと思っているので、言い過ぎとかではなく、『このレベルでは1個上にいるんだぞ』ということを、毎試合見せ付けていきたいと思います」。謙虚な口調で、強気な言葉。これは角田の大きな魅力でもある。

 常に掲げるのは、どのステージにいたとしても“圧倒的”な存在。角田の飽くなき進化への欲求は、とどまるところを知らない。

(取材・文 土屋雅史)
●第95回関東大学L特集

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