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[関東]クロアチアでプレーする幼馴染みとの誓い。筑波大MF小林幹はキャプテンとして自分の殻を脱ぎ捨てる

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名門筑波大のキャプテンを任されたMF小林幹(4年)

[5.15 関東大学L1部第6節 筑波大1-3流通経済大 東金]

 伝統あるキャプテンを継承することの意味は、誰よりもよく理解している。その上でさらなる成長の糧にするため、自分の持てる全てのものを注ぎ込む覚悟もできている。「やっぱり凄く歴史のあるチームなので、キャプテンとしての責任はあるんですけど、そういう責任のある立場になることで、自分自身の成長にも繋がると思ってやっているので、やると決めた以上はこの1年間をやり抜きたいなというのはありますね」。今年で創部125年目を迎える名門筑波大の主将。小林幹(4年=FC東京U-18)は自分の殻を破るため、日々責任感と格闘している。

 天皇杯茨城県予選決勝で敗れたばかりの流通経済大相手に、リベンジを期して臨んだ一戦。2点のビハインドで迎えたハーフタイムを終えて、ピッチに出てきた筑波大の11人の中に、キャプテンマークを巻いていた10番の姿はない。「幹は真ん中の選手だと思っている中で、フォーメーション上の都合でサイドに置いたんですけど、なかなか守備でも攻撃でもハマらなかったので、前半で交代ということになりました」と小井土正亮監督。小林は45分間での交代を余儀なくされる。

「先週の天皇杯予選の決勝も含めて、流経さんには完敗だったかなという印象を持っていて、個人としても前半で交代になってしまって、なかなかボールにも関われませんでしたし、実力不足を感じる試合でした」。試合は1-3の完敗。2週続けて同じ相手に黒星を喫し、チームも厳しい現実を突き付けられた。

 率直に言って、小林のキャプテン就任は意外な感もあった。どちらかと言えば、自分の道を追求してきたタイプ。だが、プロサッカー選手というかねてからの目標を考えた時に、より成長を遂げるためには、この経験が必要だと覚悟を決めた。

「もちろん小さい頃からずっとプロを目指してやってきているので、そこへの強い想いはあるんですけど、その前にまずこの組織の中で自分がやるべきことをやらないと、そういうのも見えてこないと感じているので、自分のことよりはチームのことだったり、この組織のためにやれることをやっていくのが全てだと思いますし、そういうものの先にプロがあるはずなので、今できることをやっていきたいと考えています」。

 そのメンタリティは、やはり筑波の門を叩いてから、より身に付けてきたモノだという自覚もあるようだ。「自分はこれまでFC東京の下部組織で、みんながプロを目指すような選手たちの中でやってきたんですけど、ここではプロではない道に進む部員がほとんどですし、いろいろなサッカーへの関わり方をしている部員がいるので、考え方は変化はしていると思います」。組織の中で生かされる個と、個が結集することで生かされる組織。その双方の重要性を痛感したからこそ、キャプテンの大役を引き受けている。

 小林には意識せざるを得ない“幼馴染み”がいる。多摩平ジュニアSC、FC東京U-15むさし、FC東京U-18で一貫してチームメイト。現在はクロアチア1部リーグのイストラでプレーする原大智は、幼稚園に入園する前からボールを蹴ってきた間柄だという。

「彼とは本当に幼稚園に入る前の、1歳とか2歳ぐらいから一緒で、U-18を卒業するタイミングで初めて違う環境でサッカーをやることになったんですけど、『また一緒にプレーしたいね』と話してから、お互い別の道に進んできているので、あのレベルに自分も追い付いて、いつかまた彼と同じピッチに立って、一緒にプレーしたい気持ちは持っています」。そのために自分がこの1年で為すべきことも、はっきりと視界に捉え始めている。

 誰もが認める天才タイプの10番が、今まで以上にチームのリーダーとして指揮を振るい始めた時、筑波も、そして小林自身も、きっと1つ上のステージへと階段を上っているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
●第95回関東大学L特集

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