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【単独インタビュー】ベルギーで年間17ゴール…FW鈴木優磨が語った未来「次に行ってからが本当の戦い」

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ゲキサカの単独インタビューに応じたシントトロイデンFW鈴木優磨

 シントトロイデンのFW鈴木優磨は今季、鹿島アントラーズ時代も含めたこれまでのキャリアハイを大幅に上回る年間17ゴールを記録し、欧州の地で大きな飛躍の一年を過ごした。

 シーズンが終盤に近づくにつれて、現地ではステップアップの話題も活発化。移籍先候補として列挙された中には欧州カップ戦出場クラブの名も浮上しており、25歳の未来に大きな注目が集まっている。

 『ゲキサカ』では今回、そんな乗りに乗っているストライカーとの単独インタビューを実施。欧州で遂げた成長の秘訣から、強烈なパーソナリティーの根源、育成年代プレイヤーへのアドバイス、そして気になる来季の展望を聞いた。

—今季は34試合17得点ということでコンスタントにゴールを重ねました。率直にシーズン前に考えていた自分と、いまの自分を比べて、どのように捉えていますか。
「個人的に言えば、ゴールは悪くない数字だと思います。ただチームとしての順位はもう少し上にいられたというイメージです。だからチームにフォーカスを当てればあまり良くなかったし、自分にフォーカスを当てれば悪くはないかなという感想です」

—しかし、欧州では個人にフォーカスしないと生き残れない中で、個人の結果にかける思いもあったのではないでしょうか。
「そうですね。シントトロイデンからは冨安選手、遠藤選手、鎌田選手とここを良い活躍の場にして、次に行ってさらに活躍するという流れがあったので、なんとしてもこの流れを切らすわけにはいかなかったし、自分自身もそうやって繋ぎたいという思いがありました。まだ今後が決まったわけではないんですが、そういう意味でも悪くはなかったと思います」

—シーズンの後半戦にかけては、鈴木選手が結果を出すほどチームの結果に結びついていったように思います。手応えはありましたか。
「それが自分にとって一番いい形です。自分だけ点を取ってもチームが勝てなかったら悔しいし、自分のゴールでチームの勝ちに導くというのが一番いい形なので、後半になるにつれてそれがちょっとずつできるようになったと思います」


—何かターニングポイントがあったのですか。
「大きく変わったのは、冬に2人のベテラン選手がチームに新しく入ってきたことです。チームにも大きく影響したし、僕自身も大きな影響を受けました。ベルギーリーグは個人能力が高く、ステップアップしたいというギラギラした若手が多くいるリーグなので、チームを勝たせたいということと自分が点を取りたいというバランスがすごく難しいんです。シーズンの初めに組んでいたFWは中村敬斗、イ・スンウ、コリーディオと、自分よりも何歳も年下の選手で、彼らも良い選手なんですけど、チームのことを考えつつも自分のゴールがほしいという難しい状況に陥っていました。そこでムボヨ選手、ブルース選手というベテランの選手が入ってきたことで、僕を活かすようなプレーをしてくれましたし、僕もそこで点を決められていたので、信頼してパスを出してくれることが増えました。前線でしっかりとした絆ができて、チームとして良い方向にいったと思います」

—その際、鈴木選手自身のプレーに変化はありましたか。外から見ていると、ゴール前のストライカーとしての役割が増えているように感じました。
「前半戦に関しては前線でタメをつくれる選手が僕しかいなかったので、どちらかというと相手とガチャガチャやって周りを活かすというやり方だったんですが、後半戦に入ってからはムボヨ選手が身体を当てながらキープするのをすごくできる選手で、そこに対して10番タイプのブルース選手がボールを受けてくれるので、僕はゴール前に専念できました。自分の役割がはっきりして、本来あるべき自分を出せたことがプレースタイルの変化につながったと思います」

—そうしてチーム内の役割に合わせていく姿は鹿島時代からも印象的でしたが、エゴイスト寄りのイメージを持つ人もいるように感じています。チームのスタイルとの向き合い方はどのように考えていますか。
「鹿島の時はどちらかというと『便利屋』じゃないですけど、サイドに流れることも多くてチームのためにいい効果を生み出すようなFWだったと思うんですが、本当に自分がやりたいのはボックスで動く本当のストライカーの仕事です。それが常に自分のあるべき姿だと思っていたし、海外に行ってからは少しずつ自分のやりたいことをできて、それを周りもわかってきてくれて、本来のストライカーの仕事をまっとうできているなという楽しさがあります」

—周囲の目も変わりましたか。
「周囲の目かどうかは分からないですけど、チームメートからはすごく信頼されているなということを途中から感じていたし、向こうの選手は信頼していなかったらパスをくれないし、逆に信頼してくれていればとことんパスをくれるので、信頼されてからはやりやすかったし、認めてもらった感はありましたね」

—ここからは少し過去のことも聞かせてください。実は初めて鈴木選手を見たのは2013年、高校2年生の関東クラブユース選手権だったんですが、フェースガードを着けて試合をしていました。
「鼻折ってた時ですね(笑)」

—たしか連勝しないと全国大会に出られないという9位決定戦のプレーオフで、最後の川崎フロンターレU-18戦で……。
「(試合途中で)取ったんですよね、フェースガード(笑)」

—急にフェースガードをピッチ外に投げていたので、ものすごいインパクトでした。
「昔から勝負事で真剣なモードに入ると、もう冷静でいられないというか、感情を表に出すタイプだったので。あの当時といったら、もう誰よりも自分が最強だと思っていた時期だったので、いま思えば天狗だったなとも思いますね(笑)」

—しかし高校2年生であの振る舞いができるのは素直にすごいな、と。
「もう高2でもぶっ飛んでたので、周りの先輩も『アイツだからしょうがないな』って目で見てくれていましたし、あの頃はあの頃でさらに勢いがあって良かったですね(笑)」


—そんなパーソナリティを持ったのはいつからですか。
「もう昔からそうですね。誰にも負けたくなかったので、それが自然とこういうふうになっていったかなと思います」

—どんな子どもでしたか。
「やんちゃで、とにかくサッカーに対しては真面目だったと思います。ただ他のことに関しては正直おろそかにしてきた部分もあって、親にも迷惑をかけてきたので、小さい頃からなんとかサッカーで…という思いを持っていました」

—鹿島ユース時代の監督はキッカさんでしたよね。厳しかったですか。
「いや、逆ですね。まったく厳しくなくて、ブラジル人なので『サッカーをフィールドでやれていればいいよ』という優しい監督でした」

—監督から影響を与えられた部分はありますか。
「サッカーを楽しむものだということをキッカから教えてもらったし、ブラジル人なので『ダメだ』というところと『いいよ』ということの差がすごく激しくて、やっていて楽しかったですね」

—ストライカーはいろいろと縛られると頭打ちになる選手も多い印象があります。プレーの面ではいかがでしたか。
「ヨーロッパのストライカーってちょっと変わってるような選手が多いじゃないですか。そこは育ち方だったり、教えてくれる人によっても大きく変わると思うんです。ストライカーは多少エゴイストな部分がないと良くないと思うので、キッカからは『そのままでいいんだよ』というのを教えてもらったような気がします」

—プレースタイルは小さい頃から同じですか。
「もっとドリブラーでしたね。どの選手も小さい頃はドリブラーでボールを離したがらない選手だと思うんですけど、自分もそっちでした」

—どこから変わりましたか。
「高校に入ってからですかね。身体がデカくなるのが人より遅かったので、徐々にデカくなってからヘディングが得意になって、いまの感じにシフトしていきました」

—身体が大きくなるのが遅かった時は、日々どのようなことを考えながらプレーしていましたか。
「正直いつかデカくなるだろうなというのもありましたし、それまでは身体がデカい相手にどう負けないかを磨こうと思っていたので、デカくなってからは自然といけました」

—なかなか身体が大きくならなくて悩む選手もいると思います。
「親父がそこそこデカかったし、もしもデカくならなくても、そのまま行けば大丈夫な技術をつけていたつもりだったので不安はなかったです」

—そこからプロに上がるわけですが、中学・高校時代にプレーを見た人は「どんな選手になるんだろう」という期待を持っていたと思います。一方、同世代にはさらに期待されている選手もいました。当時をどのように感じていましたか。
「本当に俺なんて全然……な選手だったので、ただ鹿島で小さい頃から育ってきているという感覚で、俺よりもすごい選手はいっぱいいたし、それこそ井手口もそうだし、三好もそう。アイツらはずっとエリートで階段を上がってきたので、俺なんて鹿島でしか育ってない中で上がってきた選手だと思っていました。ただ、才能という部分では負けるかもしれないけど、サッカーに対する真面目さでは誰にも負けないというのはずっと思っていたので、そこが自分の強さかなというのは小さい頃から考えていました」

—エリートに対する反骨心を持ってプレーするというよりは、自分にフォーカスしていたんですね。
「人と比べても違う人なので、自分は自分という気持ちでいまもやっているし、それは過去も変わらないです」

—プロの同期には世代でも注目されていた久保田和音選手がいましたよね。一方、鈴木選手が認められたのは初ゴールを決めたデビュー戦(2015年9月12日の2ndステージ第10節G大阪戦)からだったように記憶しています。
「初めは本当に厳しかったですね。和音は最初から騒がれていたし、ユースから上がった大橋も開幕してすぐにベンチに入ったし。トニーニョ・セレーゾ監督の時は一回もベンチに入れなかったので悔しかったです。ただ、なぜか試合に出たら一発やれるというような自信だけは持っていました。ずっと『どこか一発チャンスくんないかな』と思っていたら、石井さん(同年7月に就任した石井正忠監督)が評価してくださったみたいで、使ってくれた試合で点を取れたので、石井さんに感謝したいです。サッカー選手にとってはターニングポイントになる大事な試合ってあると思うんですよ。いままでそういう試合で点を取れてきた自負があるので、この試合で点を取ったのは僕のサッカー人生でも大事だったなと思いますね」


—そういった自信はどのようにして育まれてきたと思いますか。
「僕は自分を自分ですごく分かっていると思います。自分にできないこともわかっているし、自分にできることもわかっているので、ある意味誰よりも自分を客観的に見られている自信があります。それって大事だと思っていて、強くも見せないし、弱くも見せない。自分の得意なところ、不得意なところを理解して、そこに対して取り組んでいくというのができるので、極端に言えば試合で調子が悪くても試合の途中にシフトできるんですよ。『俺は一発あるんだ』『ヘディングを持ってるんだ』って。そういう部分にシフトできるのが大事だと思っていて、そういう部分が自信に変わってきたんじゃないかなと思っています」

—以前、遠藤航選手もインタビューで「客観視が大事」と言っていました。やはり意識すべきポイントですか。
「自分も客観視をすごくしているつもりです。足りないところ、よくないところをよくわかっているところが自分の強みです、ちゃんとした選手こそできているんじゃないかと思いますね」

—そういったメンタリティーも含め、いま中学生・高校生で「自分はエリートじゃない」と思いながら頑張っている選手に対してアドバイスがあればいただきたいです。
「決して何かを強がる必要はないと思うし、いまの自分を受け入れて自分で進めばいいだけなので。才能がある選手だけが残る世界なら勝てないかもしれないけど、やっぱり追いかけているほうが絶対に強いので、自分のことをしっかりと考えて、そいつらよりも強いメンタルを持って、やってやるという強い気持ちさえあればやることは決まってくると思います。あとは本人の意志次第。強い意志さえあれば、最後まで諦めなければ、ちょっとずつでも上に行けるんだよというのを僕がもっと体現していけるようにしたいです」

—ここからは将来のことを話してください。現地では移籍が既定路線という報道も次々に出ています。さきほど「まだ決まっていない」という言葉もありましたが、来季はどのような環境でプレーしたいと考えていますか。
「報道で出ているほど高望みしようとは思っていなくて、実は本当に真逆です。自分を一番ほしがってくれて、出場機会が一番得られる環境に行きたいです。やっぱりサッカー選手というのは試合に出てナンボだと思っているので。出なかったら評価は下がるし、出続ければ何が起きるか分からない。なので自分が欲しがられるところに行けたらいいなと思いますし、高望みはしていないです。それが五大リーグであればいいですね。五大リーグでやりたいと僕は思っているので、そういうことは考えています」

—地道にやっていきたいという思いが強いということでしょうか。
「報道ではCLに出るクラブ、ELに出るクラブに行きたいと言われたりしているけど、俺はそんなこと思っていない。『最終的にああいうところでやれたらいいよね』ということは言いましたけど、いまたとえば僕がプレミアリーグに行ってスタメンを張れるかというと、俺はそうは思わない。ただ、そこに行くためには五大リーグで試合に出て、二桁得点というもう一つの段階を踏むことが必要だと思っています。だからそういったところでやるためには、まず出場機会をなるべく与えられるクラブに行くことですね。次のクラブの選び方によって、僕がもう一つ大きく行くことができるのか、もう一つ下がることになるのかが決まると思っていて、まだ決まったわけではないけどここが大事だなと思うし、ゆっくり決めていきたいと思います」

—欧州サッカー界の移籍ルートなども踏まえてすごく冷静に捉えているように感じます。
「サッカーが本当に大好きで、サッカー選手でも俺よりサッカーを見る人いるのかなと思うくらいに見ているので、そういうのは人に聞かなくてもある程度は分かっています。自分がやっていることなのでなおさらですが、そこは理解しているつもりです」

—たしかに試合を見ていれば、前例になる選手はたくさんいますね。
「ボンっと上に一発で行く人もいますけど、俺はどちらかというと地道に一つひとつの階段を上がっていって最終的にそこに行きたいというのがあるので。そうしたら、ちょっとずつでも上積みできることがあると思うんですよ。もちろん人にもよるとは思うんですが、俺は上積みをしていきたいタイプなので、そういう選手を追ったりしています」


—そんなふうにサッカーを見ているというのは新鮮です。
「でもサッカーを見るときの自分はファンのような気持ちというか、子どもの頃と見る目は全然変わらないですよ。とにかく楽しいものだと思って見ているので。自分の試合を振り返って見るときは『もっとこうしたほうがいい』というのはあるんですけど、海外のサッカーを見るときは『ここでこう動くんだ』『すごいな』とかファンのような目線で見ています」

—その世界に自分がいるというのはすごいことですね。
「まだですね。本当にその世界に入ったかというと、まだ入ってないと自分では思っているので、次に行ってからが本当の戦いだと思っています」

—次のステージではまずどのようなことが必要だと思いますか。
「いままではベルギーでしたけど、大きな目線でやらないといけないと思っているのはリーグの特性を知ることです。どういったリーグなのかに慣れないといけないし、どういった相手がいるかを知ることによって活躍できるかどうかが全然違うと思います。今年1年間ベルギーをちゃんと見るようになって、リーグを知るというのがすごく大事だなと思いました。それがゴールへの近道になるし、チームの勝利への近道になるので、そこがすごく大事だなと感じています」

—その先の目標は考えていますか。
「シーズン何点取るかとかはまったく作っていなくて、でも近い目標で言えば五大リーグで二桁得点取りたいというのがストライカーとしてのざっくりした目標です」

—サッカー人生を通じての目標は。
「やっぱりチャンピオンズリーグに立ちたいです。子どもの頃からチャンピオンズリーグを見て育っているので、あのアンセムをフィールドで聞きたいなというのがサッカー選手としての目標です」

—最後に『来季、ここを見てくれ』というサポーターへのメッセージをいただければと思います。
「常に点は取りたいし、そのためにチャレンジしようと思っているけど、実際に取れるかどうかは難しいこともあります。でもフィールドに入った時に負けたくない気持ち、ナメられたくないという気持ちは誰よりもあるのでそこを見てほしいです」


(インタビュー・文 竹内達也)
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