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[MOM3461]青森山田MF藤森颯太(3年)_3年越しのリベンジ達成。スピードスターは青森の子供たちのために走り続ける

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決勝ゴールを叩き込んだ青森山田高のMF藤森颯太(11番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.23 プレミアリーグEAST第7節 清水ユース 1-3 青森山田 J-STEP]

 3年越しのリベンジを静かに心の中へ秘め、この日のフィールドへ歩みを進めると、オレンジのユニフォームを目にした時、一気にスイッチが入る。「『今週は絶対ゴールを決めてやる』という気持ちは、それを口にすることはなかったですけど、自分の中に秘めていて、その結果としてこうやって巡ってきたチャンスを決めることができて、少し自信になりました」。不言実行。開幕7連勝を達成した青森山田高(青森)のスピードスター。MF藤森颯太(3年=青森山田中出身)の誓いは、決勝点という最高の結果で果たされた。

 2018年のJFA 第22回全日本U-15サッカー大会決勝。青森山田中は決勝で日本一を懸けて、清水エスパルスジュニアユースと対峙する。そこまで4試合で7得点と主役級の活躍を披露していた藤森だったが、そのゲームで今でも忘れ得ない悔しい経験を突き付けられる。

「その大会は決勝以外、自分が全試合で得点を決めていたんですけど、その試合だけゴールを決められず、PK戦でも自分が外して負けたという悔しい想いや、そのシーンは鮮明に覚えています」。14歳の心の中に、その日の記憶は強く刻まれた。

 5月23日。プレミアリーグEAST第7節。「今日は山中(青森山田中)の子がスタートに5人入っているので、あの時に負けた悔しさをまだみんな持っていますよね」と黒田剛監督が言及したように、3年前の決勝に出場していたDF三輪椋平(3年)、MF松木玖生(3年)、MF宇野禅斗(3年)、MF田澤夢積(3年)、そして藤森がピッチに立つ。対する清水ユースは、当時のメンバーの内の6人がスタメンに。お互いの記憶が交錯する中で、キックオフの瞬間はやってくる。

 後半に入り、清水ユースに追い付かれて1-1で迎えた10分。DF大戸太陽(3年)の右クロスがファーへ流れると、拾った田澤はすかさず左から中央へ折り返す。「日頃から夢積のクロスに自分がヘディングシュートという練習をしていましたし、ヘディングのボールが来なかった時の左足のボレーも、練習していた形でした」。その左足ボレーで撃ち抜いたボールは、ゴールネットへ突き刺さる。

「ふかさないということだけは頭の中にあって、あとはボールをしっかり見て、当てることを意識しました。『1本中の1本』と山田では言われているので、そこはこだわった1本でしたし、やっぱり失点して、同点に追い付かれた後の勝ち越しゴールだったので、それは感情が入る所もあって、凄く気持ち良かったですし、3年前のあの決勝で自分が決められなかったという想いが、こみ上げてきた部分はありました」。このゴールが決勝点。3-1で勝利した青森山田は開幕7連勝を達成。藤森が抱えてきたリベンジも、ようやく自身の中で1つの完結を見た。

 中学時代からの盟友であり、左サイドハーフの定位置を掴みつつある田澤の存在には、大いに刺激を受けているという。「左サイドの夢積がもうリーグで3点決めていて、結果にこだわってきているのが3点という数字になっているので、そこは自分も『見習わなきゃな』って思っていました。ライバル意識という感じではないというか、チーム内での競争はあって当然ですし、そうやって刺激をもらっているので、自分にとっても良い存在かなと思っています」。藤森もこれでリーグ戦では2得点。良い意味での“競争”がここでも生まれているようだ。

 青森県の出身というバックボーンに対する想いも、力強く口にする。「こうやって青森県内の選手が、青森山田で戦うということは、やっぱり青森でサッカーをしている子供たちに元気や勇気を与えると思いますし、自分の名前を県内や全国に響かせていけば、もっともっと『サッカーってこういう魅力があるんだな』って子供たちにも思ってもらえるはずなので、そういう意味では『自分がやってやろう』という意識は持っています」。

 あるいは誰よりも、青森山田というチームでプレーすることの意味を分かっている男。心身両面でさらなる進化を遂げつつある藤森の前進する力は、間違いなくこのグループをも前進させていくだけのエネルギーに満ちあふれている。

(取材・文 土屋雅史)
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