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現状維持はすなわち停滞。青森山田MF松木玖生が追求する「もっと」の価値と意味

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青森山田高を率いるキャプテン、MF松木玖生

[5.23 プレミアリーグEAST第7節 清水ユース 1-3 青森山田 J-STEP]

 7試合で7ゴール。ハイペースで得点を量産しているにもかかわらず、そんな現状に安住するような素振りは微塵も感じられない。「今日も“チバカン”(千葉寛汰)が決めているので、今は同点ですけど、もっと流れの中で決めたいですね。自分はミドルシュートもありますし、ミドルシュートが防がれたら、中に飛び込むこともできるので、もっと前線で要求して、もっと貪欲に練習からやっていきたいと思います」。常に『もっと』を追求する18歳。青森山田高の10番。MF松木玖生(3年)の辞書に、“満足”という2文字はおそらく存在していない。

 後半22分。2-1とリードしている状況で、PKのチャンスが訪れる。キッカーは松木。青森山田中3年時に臨んだ、JFA 第22回全日本U-15サッカー大会決勝のPK戦でも対峙した、清水エスパルスユースのGK福井レオナルド明(3年)と、3年ぶりに11メートルを挟んで対峙する。

「チップもあるって所で、キーパーも結構惑わされるんじゃないかなと思っています」。第5節の大宮アルディージャU18戦では、いわゆる“パネンカ”と呼ばれるチップキックでPK成功。第6節の流通経済大柏高戦では、GKの逆を突いて力強くPK成功。いくつもの残像を相手に与えながら、この日もきっちりとボールをゴールネットへ流し込み、貴重な追加点をゲット。自身は清水ユースのFW千葉寛汰(3年)と並ぶリーグの得点ランクトップに立ち、チームも開幕7連勝と、プレミアEAST新記録を達成する。

 とはいえ、試合後の視線は既に次へと向かっていた。「監督から資料を戴いた時に、サンフレッチェ広島が8連勝ということを知ったので、自分たちはまだまだなにも成し遂げていないですし、7連勝は嬉しいですけど、これが青森山田のベースかなと思っています」。プレミアリーグ全体で見ると、開幕からの連勝記録は2011年にサンフレッチェ広島ユースが打ち立てた8連勝。その記録更新すらも通過点と捉えている様子が、言葉の端々に滲む。

 GKも含めた全員が昨年から入れ替わったディフェンスラインも、7試合でわずかに2失点と盤石のパフォーマンス。「ものすごく評価できると思っています。今日も相手に千葉寛汰という絶対的なストライカーがいる中で、ミーティングもたくさんして、千葉に点数こそ決められましたけど、うまくセンターバック2人が抑えてくれたかなと」。守備への確かな手応えは、試合を追うごとに増している。

 ドイスボランチを組むパートナーのMF宇野禅斗(3年)との連携は、阿吽の呼吸の域。2人とも圧倒的な運動量で攻守に関わり続けているが、それすらもこの男の中では特別なことではない。「これがベースですね。これ以上のことをやっていかないと、禅斗も自分もプロを目指している中でやっていけないと思うので、この運動量が自分たちのベースです」。

 インターハイ。プレミアリーグ。そして、高校選手権。“三冠”を真剣に狙う青森山田のキャプテンとして、プレミア制覇を達成した2年前を引き合いに出しつつ、さらに気を引き締めている。「良いシーズンの出だしかなとは思いますけど、まだ5月過ぎで、ここから試合は相当ありますし、自分も1年生で試合に出ていたヒデさん(武田英寿)たちの代は、後期に勝てない時期があったので、その流れと比較する部分もありながら、自分が経験している以上、そういうことをさせないようにしつつ、インターハイに良い雰囲気で乗り込めるかなとは考えています」。

 少しずつカウントダウンの始まっている、青森山田で過ごしてきた6年間の集大成。彼らがどんな偉業を達成しても納得せざるを得ない存在感を、この常勝軍団の10番はフィールドの上で纏い続けている。

(取材・文 土屋雅史)
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